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異世界獣医師の聖獣カルテ!  作者: ぽぽろん


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第16話:保守派の企み

騎士たちが去った後、サラはレオンハルトと共に、彼らが持ってきた大量の「お礼」を整理しながら、聖院の医局へと戻っていました。


しかし、廊下の向こうから歩いてくる集団を見て、レオンハルトの瞳がスッと鋭く細まりました。


「……面倒な連中が来たな」


そこにいたのは、聖獣医聖院の中でも、古い家柄と伝統を重んじる「保守派」の術師たち。


その先頭に立つのは、かつてカイルの師でもあった高位聖獣医のゼクス。


彼はカイルたちが厩舎掃除に落とされたことを、自分の面子を潰されたと根に持っていた。


ゼクスは鼻で笑いながら、サラの胸元で輝くレオンハルトの紋章を忌々しげに一瞥する。


「……ふん。騎士団の次は王子の紋章か。魔力を持たぬ小娘が、権威を笠に着て随分と大きな顔をしているようだな」


「ゼクス殿、言葉が過ぎるぞ」


レオンハルトが冷徹な声を浴びせますが、ゼクスは怯まずに一枚の公文書を突きつけた。


「殿下、これはボリス侍医長も承認された『正式な任務』です。

サラ殿、貴殿がそれほどまでに優秀な『聖獣医』だと言うのなら、この方を診ていただきたい。

――我が王国の守護獣、『千年の白銀鳥はくぎんちょうアルビオン』を」


その名を聞いた瞬間、レオンハルトの表情が凍りつきました。


「アルビオンだと……!? あの鳥はここ数十年、誰の診察も受け付けず、王宮の最上階で眠り続けているはずだ。それを、サラに診ろと言うのか」


「左様。最近、アルビオン様の羽が抜け落ち、鳴き声すら失われている。

我ら高位術師が総出で治癒魔法をかけたが、全く反応がない。

……まさか、虫を抜くだけが能ではないのでしょう? 」


ゼクスの背後にいる術師たちが、クスクスと意地の悪い笑い声を上げた。


彼らにとって、アルビオンの診察は「不可能な任務ミッション」であり、失敗したサラを「実力不足」として追放するための罠なのだろう。


しかし、サラは公文書をひったくるように受け取ると、ゼクスを真っ直ぐに見返した。


「羽が抜けて、声が出ない……。それ、魔法の枯渇じゃなくて、ただの『重度の栄養失調とストレス』じゃないかしら」


「な……っ!? 守護獣様に向かって、栄養失調だと!? 無礼な!」


「魔法で無理やり活力を与えようとするから、余計に負担がかかっているのよ。

……いいわ、引き受けるわ。

ただし、私が診察している間は、あなたたちは指一本触れないで。

私の『道具』と『知識』が、あなたたちの魔法より正しいって、証明してあげる」



ゼクスたちが「後で恥をかいても知らんぞ!」と吐き捨てて去っていくと、レオンハルトは深くため息をつき、サラの肩を抱きました。


「……無茶をする。アルビオンは初代国王と共にこの国を作ったと言われる、気高い鳥だ。もし機嫌を損ねれば、診察どころか命を落としかねない」


「大丈夫よ、レオン。動物が鳴かなくなるのには、必ず理由があるわ。それに……」


サラは、胸元の紋章を指先でなぞりました。


「私には、世界最高の職人が作った聴診器と、世界最強の騎士の守護があるもの。負ける気がしないわ」


「……。……君という人は、本当に」


レオンハルトは降参したように笑うと、彼女の手を強く握り締める。


「わかった。王宮の最上階まで、私が君をエスコートしよう。伝説の鳥が、君にどう答えるか、私もこの目で見届けたい」




ゼクスたちが捨て台詞を残して去った後、サラは「さて、資料室でアルビオンの文献を……」と足を踏み出そうとしたが、その体はふらりと揺れた。


「おっと……」


レオンハルトが咄嗟に支える。


「サラ、君の目はもう半分閉じている。騎士団の馬三十頭の手術を終えたばかりなんだぞ。

アルビオンの任務は『受理』したが、決行は三日後だ」


「でも、早く診てあげないと……」


「命令だ。今の君が行っても、鳥に心配されるのがオチだ。……いいから、今日はもう休め」


レオンハルトは有無を言わさぬ手つきでサラを抱き上げ、彼女を自分の息のかかった安全な客室へと運びんだ。



それから三日間、サラはレオンハルトとボリスによって「強制休息」を命じられた。


一日目: 泥のように眠り続けた。

レオンハルトは仕事の合間に何度も部屋を訪れ、寝顔を確認しては、掛け布団を直したり、窓から差し込む光を魔法で遮ったりしていたそうです(後にボリスから聞いて、サラは顔から火が出るほど赤くなりました)。


二日目: 騎士団から届いた「最高級の滋養強壮スープ」を飲み、庭園を散歩。


三日目: ようやく頭が冴え渡ったサラは、バルカスが磨き上げた聴診器を点検し、アルビオンの「羽の抜け方」の症例を前世の知識と照らし合わせはじめた。

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