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第一章 鋼だけが永遠に続く

水戸市の裏路地にある、救いようのない古本屋の二階にそのバーはひっそりと存在していた。無数にある似たようなバーの一つだ。建物自体が半ば死体のような状態にもかかわらず、なぜかこの店は生き延びていた。


修理には店の価値以上の金がかかる。だから店主は手っ取り早い応急処置で済ませていた。三脚で傾いたパイプを支え、ダクトテープで残りをミイラのようにつつみこんだ。


その三脚の一つがテレビの画面を斜めに遮り、テニスの試合がチラチラと映る画面の隅を隠していた。チャンネルを指定したのは、中年のサラリーマン風の男だった。


彼の髪は黒く染められていたが、根元には灰色の地毛が透けていた。サイズの合わない茶色のスーツがだらりと体から下がり、赤と白のネクタイは緩み、襟は開け放たれていた。数分ごとに、彼はハンドタオルで汗ばんだ顔と首を乱暴に拭った。


彼はせき 一馬かずま。一気にビールを飲み干すと、グラスをカウンターに叩きつけて次の注文を促した。バーテンダーは尋ねるまでもなく、すでにぬるいビールの入ったグラスを用意していた。


関は小さなノートを目の前に広げ、ぎっしりと名前と数字を書き込んでいた。その日の試合、セットごとの記録、エースの数、ミス、ウィナーを細かく追っていた。彼は賭け事で生きていた。まるで人が酸素を必要とするように。


今夜、彼の金はラファエル・ナダルがミハイル・ユージニーを倒すことに賭けられていた。ナダルはタイブレークで第一セットを落としたが、関は動じなかった。彼は逆転を信じていた。


そこに、明らかに日本人ではない男が入ってきた。数日間髭を剃っていない様子で、睡眠もそれ以上取っていないように見えた。


リバー・ジョナサン・シェパード、アメリカ人。アメリカ人の基準でも背が高く、かつて体を鍛え上げた機械のような体格の男だった。三十代半ばに見えたが、目だけは別だった。


彼の目はあまりに澄んでいた。まるで海から引き揚げられたガラスのように、百年の潮に磨かれたような輝きを放ち、風化とは無縁だった。


リバーは影のような装いだった。広い縁のフェルト帽と長い黒のオーバーコートを身にまとっていた。


リバーは関から一席空けてスツールに腰かけ、礼儀正しい距離を保ちつつ、テレビの光を共有できる近さだった。帽子をカウンターに置き、バーテンダーに飲み物を注文した。


「ラファが負けてる? らしいね」とリバーが言った。「あの男はクレーコートなら無敵だ。でもハードコートじゃ急に素人みたいになる。」


関は横目で見た。アメリカ人の訛りで流暢な日本語を話すことに驚いたが、それ以上にラファを悪く言われたことに腹を立てた。関は身を乗り出し、リバーを会話の輪に引き込んだ。


「いいか、ラファは闘士だ。最高の選手だ。この試合は絶対に取る」と関は言い、強調するために手のひらをカウンターに叩きつけた。「彼は確実だ。誰よりも長く戦える。」


リバーは薄く微笑んだ。まるで全てを乗り越えてきた男の笑みだった。「たとえラファがこの試合に勝っても、フェデラーには勝てないよ。」


関の眉が上がった。「あのスイス人が勝ちまくったのは、弱い時代に恵まれたからだ。フェデラーはミハイルがラファを倒してくれることを祈ってるだけだ。」


「ナダルはハードコートのグランドスラムで準々決勝を越えたことがない。クレーの申し子だと認めなよ。」


「去年のドバイの大会で誰が勝ったか思い出してみな。そう、ラファエル・ナダルだ。しかもフェデラーを倒してだ。君は見た目ばかり気にしてるな。」


「去年のドバイの大会で誰が勝ったか思い出してみな。そう、ラファエル・ナダルだ。しかもフェデラーを倒してだ。君は見た目ばかり気にしてるな。」


「十回もグランドスラムを獲った選手をどう呼ぼうが」とリバーが言った。「ラファの強さがクレーに依存してるなんて、認めないのは希望的観測だよ。」


試合は続き、関はラリーごとに緊張を高めた。ノートに書き込み、ペンを歯で叩き、額を拭った。リバーは静かに座り、飲み物にはほとんど手をつけなかった。


第二セットも3-6で落ち、試合終了。ラファが負けた。


関は画面を睨みつけた。まるでラファに裏切られたかのように。下唇を噛み、一気に飲み物を飲み干した。


「くそくらえ」と彼は呟いた。「あの金、全部パーだ。」


バーテンダーが二つの四角いグラスをカウンターに置き、薄暗い光の下で琥珀色の液体が輝いた。リバーは二本の指で一つのグラスを関に滑らせ、カードを配るようにした。


「残念賞だ」とリバーが言った。声にはマグノリアの木のように古い響きがあった。


二人は静かにグラスを合わせて飲み干した。


関は顔をしかめ、焼けるような感覚に目を閉じ、胸を大きく上下させた。目を開けると、驚いた。


彼のグラスがまた満杯だった。


眉をひそめ、軽くよろめきながらリバーを見た。アメリカ人は空のグラスをカウンターに置き、軽い笑みを浮かべていた。


「飲めよ」とリバーが言った。


「君、ペース速いな」と関が呟き、グラスを手に取った。声はすでにゆるみ、角が丸くなっていた。「どこ出身だ?」


「アメリカ。詳しく言うとフロリダだ。更に詳しく話せるけど、君はそんなことに興味なさそうだな。君は?」


「日本。」


「絞ってくれて助かった。アジアとか言い出したらどうしようかと思ったよ。」


「この十年、水戸に住んでる。その前は埼玉だった。」


「その前は?」


「君に何の関係がある?」


「関係ないよ。純粋に楽しい話をしてるだけ。埼玉? 東京から遠くないよな。観光にいい場所か?」


「まあ、悪くない。」


関はバーテンダーに合図し、肩を落とし、夜を終える準備をしていた。まだ十時にもなっていなかった。


リバーが手を上げ、手のひらを見せてバーテンダーを止めた。カウンターの端からボロボロのトランプの束をつかんだ。端は丸まり、ティッシュのように柔らかく、もう一回シャッフルしたら崩れそうな状態だった。リバーはトランプを両手で器用に操り、指を鳴らした。カードが一枚、薄暗い光の中でキラリと輝き、空中でつかんだ。時間が一瞬飛んだかのように素早かった。


「やるか?」とリバーが聞いた。


関はニヤリとした。「給料を一、二回溶かしたことはあるな。」


「君、規律があるな。ほとんどの奴は一ラウンドで負けたら諦めるぜ。」


「リスクを取らなきゃ何も得られない。簡単な話だ。金をかけて遊ばせてる奴が多すぎる」と関は言った。人差し指をリバーの胸に突きつけ、強くはないがしっかりとした力で。「君はまだ若い…」


「見た目より歳食ってるよ」とリバーが口を挟んだ。


「…だから俺の言うことを聞いとけ。」関はリバーの言葉を無視して続けた。「自分に賭けろ。しょっちゅう賭けろ。安全策じゃどこにも行けない。リスクは美しい。俺を生きてるって感じさせてくれる唯一のものだ。」


「賢い言葉だな」とリバーが言った。「失礼だが、名前まだ聞いてなかったな。」


「関 一馬。」


「関 一馬って感じじゃないな。」


関は財布を取り出し、リバーに写真を見せた。関と日本の婚礼衣装を着た女性の写真だった。女性は花嫁というより孫娘に見えた。


「俺の妻だ。十八歳。フィリピン出身。」


「結婚式と卒業式を同じ日にして節約したのか?」とリバーが聞いた。リバーの手はコートのポケットに伸び、使い古された何か折り畳まれたものに触れ、目が一瞬暗くなった。「誰にでもこんなオープンなのか?」


「過去を自分で話すか、他人に勝手に書かれるかだ。十年前、二十年前に何したかなんて話を作られたくない。分かるだろ? 正直に生きてりゃ誰も何も言えねえよ。」


リバーはカードをシャッフルした。「ブラックジャック。負けた方が次の一杯をおごる。簡単だ。」


「いいぜ。」


リバーがカードを配った。関は自分のカードを覗いた。4と8。悪くないが、微妙だ。


「ヒット」と関が言った。


リバーが10を渡した。22。バースト。


関はうめいた。「くそっ。」


リバーが指を上げ、バーテンダーが新しいショットを二つ置いた。乾杯し、関は一気に飲み干し、焼ける感覚に顔をしかめた。目を開けると、リバーはすでに空のグラスをカウンターに置いていた。もう一方の手はカウンターの下に消えていた。


「カード隠してんのか?」と関がリバーの下がった腕を指して聞いた。


リバーは手を上げ、何も持っていないことを見せた。「汚い手は使わねえよ。特に報酬が安い時はな。ウイスキーの一杯のために殴られるなんて割に合わねえ。」


「念のためだ。」


新しいラウンド。関は20を引き、リバーは届かなかった。関は笑い、バーテンダーが次のショットを置いた。


酒は今や火花ではなくハンマーのように効いてきた。関は目をしばたたかせ、焦点を合わせようとしたが、凍りついた――彼のグラスがまた満杯だった。リバーの手がその近くにあり、酔っ払いのバーにしてはあまりにスムーズな手つきだった。


「なんだこれ?」と関が聞いた。


「君に注文したショットだ。遅れてるぞ」とリバーは煙のように軽く言った。「気にすんな。まだ俺に勝てる日本人には会ったことねえよ。」


関は疑念を呼び起こそうとしたが、アルコールの霧がその考えを飲み込む前に消えた。日本の誇りを守る必要を感じた。日本人がアメリカ人より酒に強いことを証明したかった。関は肩をすくめ、ウイスキーを一気に飲み干した。


「もうすぐ六十だ」と関が言った。「でも三十代のどんな男より酒は強い。まだ活力はあるぜ。」


「そりゃ良かった。奥さんも安心だろ。」


「なんで水戸に来るか知ってるか?」


リバーは肩をすくめた。「美味い飯、いい人たち――俺ならそう思うな。」


「ここに愛人がいるんだ。俺の半分の歳の男たちはスクリーンの後ろに隠れて、ピクセルの夢や偽物の女を追いかけてる。俺はそんなメイクビリーブはしない。本物を金で買う。君もその価値が分かる男に見える。明日、連れてってやるよ。息をする夢を選べよ。」


「俺は昔ながらのやり方が好きだ。」


「なんだ? ディナー、映画、祈りか? 俺のやり方なら説教を飛ばして罪に直行だ。」


「面白いな。一分前にはリスクを説いてたのに。本物の女が絡むとその話はすぐ死ぬんだな。」


「リスクはギャンブラー向けだ。バカ向けじゃねえ。確実なものが目の前にあれば、謎を求めるのはアホだけだ。さあ、カードを配れよ。」


ゲームはリズムに乗り、カードとショットが続き、リバーは勝つより負けることが多かった。空のグラスの山が関の前に整然と積み上がった。リバーの側はきれいなままだった。


分が過ぎ、時間が流れ、バーにはテレビの音だけが残った。


リバーはバーテンダーに小さく頷いた。「お会計。」


バーテンダーは関のぐったりした姿とリバーの落ち着いた手元を見比べた。リバーが財布に手を伸ばした。


「彼の分も払うよ」とリバーは言った。言葉はわざとらしく少しもつれた。「俺のせいでこうなったんだから。」


責任感、優しさ――人はそれをいろんな名前で呼ぶ。リバーは別の名前で知っていた。支配だ。


バーテンダーは眉を上げたが、反論しなかった。


関の頭は前に傾き、緩んだネクタイに顎が触れそうだった。リバーは関の腕を引き、椅子から引きずり下ろした。関のノートも忘れずに持った。サラリーマンの足は引きずられ、靴がタイルをこする音は壊れたマリオネットのようだった。


路地に出ると、夜の空気が関の顔を叩いた。彼は少し動き、言葉をつぶやいた。リバーは聞き取れなかった。


「……肉は弱い……鋼だけが永遠だ。完璧だ。永遠に。」


リバーは一瞬立ち止まり、目を細めた。しかし関はすでに意識を失い、汗とウイスキーの匂いだけを残してリバーに重くもたれかかっていた。


影に身を隠した女が見ていた。光の届かない場所に潜んで。


リバーは関を支え直し、顎を締め、駅の明かりに向かって歩き始めた。夜が明けた。


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