episode5
結局、何も考えがまとまらないまま大学を後にし
今朝はシャワーも浴びずに家を飛び出してきてしまったから、いい加減サッパリしたかったのもあって重い足取りで帰宅した
「なんか疲れたなぁ、」
溜め息混じりの愚痴とポストに入っていた折込チラシを数枚片手にドアを開けると、男物のスニーカーが目に入る
瞬時に状況を理解し、慌ただしく部屋へ駆け込む
「雪!!!!!」
乱暴にリビングの扉を開け怒鳴りながら部屋に入ると、ソファで寛ぎながらアイスを食べている弟の姿が飛び込んできた
「姉貴、おかえり」
「おかえりじゃないわよ!
アンタ、なんでまだわたしの家にいるの!?」
「女関係で面倒くさいことになって追い出されたから行くとこないんだわ。
泊めてって、昨日連絡したじゃん」
「はぁ!?ふざけないでよ!早く出てって!!」
「そんなに怒んないでよ。 ……皺増えるよ?」
「んなっ!」
苛立ちを抑えられない私とは裏腹に、のんびりとマイペースなこの男は食べかけのアイスを私の口に放り込んできた
「むぐっ……!んんん!!!」
「次の泊まる先見つかるまでお世話になりまーす。」
アイスを食べながらも抗議を続けるが、雪は気だるそうに欠伸をしながら横を通り過ぎていき、脱衣所へと向かって行った
完全にペースに乱されてしまったが、まずわかったことは雪は昨夜わたしの家に来たようだった
急いでバッグの中にあった携帯を取り出して確認してみると、確かに昨夜通知はきていた
その時間帯はBARでマスターに愚痴を漏らしながらワインをしこたま飲んでベロベロになっている状態でもあったので、気づかなかったのも無理ない話だった
なんて運の悪い…
その後はお察しのとおり、泥酔状態で帰宅した後
弟と関係を持ってしまったということになる
話は繋がったがやっぱり今は一刻も早く弟を遠ざけたかった
しかし、当の本人はしばらく居座る気でいるらしい
一体どういう神経をしているのかと頭を抱え始めると
昨日のお酒が残っているせいもあり、頭がまたズキズキと痛み始め、ソファに倒れ込むように横になる
「なんなのよぉ〜」
昨日から忙しく変わる感情に嫌気がさし、少しの間目を瞑って頭を落ち着かせていると
「姉貴〜、新しいタオルどこ?」
シャワーから上がったのかサッパリとした様子の問題児が隣でこちらを覗き込んでいた
「ちょっと!上ぐらい着てよ!!」
「なんで?昨日さんざん見たじゃん」
生々しい発言に急に顔が赤くなっていくのが自分でもわかった
今は、そういうことを考えたくなかったのに
この男は構わずにズカズカと私の中に踏み込んでくる
私の意外な反応が新鮮だったのか、クスリと笑みを浮かべて詰め寄ってくると
「なに、恥ずかしくなったの?
意外と可愛いとこあるね」
その余裕そうな表情に加え、気づけば横になっている私に覆い被さるようにして、力強く腕を押さえつけられていた
「雪!やめて!」
「覚えてないなら、思い出させようか?」
強引に触れたヒヤリとしたその柔らかい唇は
昨日感じたあの感覚と全く同じものだった