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第4話 冒険者ギルドに入った

 その後、俺は王女様たちの馬車に町まで乗せてもらえることになった。ダメ元で頼んだところ、王子様も王様も快く同乗を許してくれたからだ。これもドッキリの能力によるものなのだろうか。


 あと王様からお金をもらった。報酬とのことだが、なるほど、ドッキリの仕掛け人という設定になったから給料をもらえたということか。


 馬車の中で、王女様はとにかく無表情だった。ショックはまだ収まらないらしい。


 俺が現れた瞬間にこんな意味不明なことになったから、俺にそういう能力があるんじゃないかと疑いそうなものだが、俺には一瞥もくれない。これも能力によるものなのだろうか。


 この能力にはわからないことが多すぎる。説明書が付属していたら楽なんだが、体で覚えるタイプのやつらしい。


 仕方ないので馬車に揺られる時間に考え、いくつか推測を立てた。


 まず、なぜおじさん騎士には発動しなかったのに、王女様には発動したのかについて。これはドッキリの性質を考えれば簡単に説明できる。ドッキリとは人的にハプニングを仕掛けターゲットを驚かせるいたずらで、相手のリアクションを楽しむのが醍醐味だ。

 おそらく俺の能力「ドッキリ」は言い換えれば「相手のハプニングをなかったことにする」能力だ。だから対象にハプニングが起きていなければ発動しないのだろう。おじさん騎士とは違い、王女様には刺客が襲いかかってくるというハプニングがあった。だから発動したのだ。


 このドッキリの長所というか、厄介なところはその影響範囲にある。

 王女様に仕掛けた際、騎士たちの襲撃どころかそれ以前の王子の企みのみならず、王位継承戦のきっかけとなった王の死亡すら無かったことにしてしまった。


 やばすぎる。プラカード掲げただけでここまで影響が出るなんて正直俺の手に余るんだけど、どうしたらいいんだよ。


「おもしろかったですか?」


 そんなことを考えていると対面に座る王女様が訊いてきた。


「仕掛け人のあなたには、私が騙されている姿はさぞ滑稽に映ったことでしょうね。私はあなたのことを本気で心配していたというのに」


 どうやら俺に言っているらしい。

 恨みがこもっている。


「私の心情を教えてあげましょうか? ——最悪ですよ。死なないために知恵を絞って逃げ、騎士に捕まった時には死すら覚悟しました。その姿を笑われて、怒るなという方が無理な話じゃないですか?」


 前の世界の番組だったら、ドッキリをかけられても出演者はなんとなく許していた。だけど王女様は訓練された出演者などではなく、ドッキリの概念すら知らない異世界人だ。これが当然の反応といえる。


「裏切られた気分ですよ」


 王女様は俺を親の仇のように睨みつける。最初に会った時の慈愛に満ちた眼差しは消えていた。王女様が俺に怒るのはしかたないことだ。


 馬車が止まり、御者の人から街に着いたと伝えられたので降りる。


「さようなら、もう二度とあなたの顔は見たくありません」


 去り際に王女様が吐き捨てたそんな言葉よりも、深く胸に刺さったのは去り際に中指を立てられたことだった。しかも両手。そこまでキレてたんだ……。


 俺をおろした馬車は走り去って行った。


「助けたのに、なんでそこまで言われなきゃいけないんだよ」


 俺がドッキリを仕掛けなかったら、王女様は今頃死んでいただろう。感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いなんてない。


「――いや」


 無理もないか。そもそも今起きたことが俺の能力によるものだと知らないわけだし。

 王女様がどんな苦労をしてここまで逃亡して来たのかは知らないけど、俺が王女様の立場だったらキレてただろう。


 例えるなら親から「中学受験で合格しないと中学生にはなれないわよ」と言われたので中学生になるために必死こいて勉強したら、「実は中学生になるのにテストなんか必要ありませんでした!!」とか言われるようなものか。


 俺がどんな思いで勉強したと思ってんだよっつー話になるわけで、そう考えるとキレるのも仕方がないか。


「もっと人から感謝される能力がよかったな」


 こんなテクニカルな能力じゃなくて、もっとわかりやすいパワー系の能力がほしかった。ため息を吐きながら俺は町の入口に向かう。


 壁にぐるりと囲まれていて入口は数箇所しかない。そこを門番が守っている。さっきの王様たちの口添えもあってあっさり通してくれた。なんでそんなに俺に協力的なんだろうか。まあ、いいけど。


「さて、どうするか……まずは定番のあそこに行ってみますか」


 俺は町の中で目当ての建物を探し歩いた。中央にある広場に着いた時、その建物を見つけた。


「やっぱり異世界といったら冒険者ギルドだよな〜」


 俺は重い扉を開いて中に入る。中には装飾品の類いのない無骨な内装になっており、そこにある者たちもその内装に似つかわしく、いかつい装備に身を包んでいる。いかにもな感じの内装だった。これこれ。


 俺は受付らしきところに歩を進め、受付の人に話しかけた。


「すみません、あの、冒険者に」


 なりたいんですけど、と言いかけたところで冒険者ギルドの扉がバァンと勢いよく開かれた。


「誰か治癒魔法使える奴いないか!?」


 中に入ってきたのはいかにも冒険者という感じの、顔に十字傷があるワイルドなイケメン。どうやってついたんだそのかっこいい傷。羨ましい。


 そんな男だが、背中にローブ姿の人を抱えていた。怪我をしているのかぐったりとしている。


 厄介ごとの気配がする。

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