第四話「交差」
第四話です!
そろそろ終わりに近いです~
「は、お前は何を言っているんだ?」
ルナのために死ね? さっぱり意味が分からない。
そもそもどうして、お前が……ルナの何を知っているんだ。
「わたしは、禁忌を犯した。だから長くはない。けれどね、後四日間、君たちを足止めすることはできるよ」
感情の無い瞳に、光が入る。
それは力強く、見ているこちらが圧倒されてしまいそうだった。
しかもしれっと俺たちの余命まで把握してやがる……
俺の心情を知ってか知らずか、話を進めて行く。
「人間の頃の記憶を取り戻し、わたしは後悔……まではいかなかったけれど」
ルナちゃんはきっと後悔する……と彼女は言い切った。
なんでこいつがそんなことを言えるのか、俺には分からない。
だけれど、こいつにしか分からないこともまたあるのだろう。
それでも、それでもだ。
「俺は、ルナに命を救われた」
絶賛余命一週間だがな。
だけれど。
「俺は彼女の助けになりたい」
もし記憶を取り戻したことで後悔するんだとしたら、俺が支えてやればいいことだ。
まだ寿命は残ってる。
「なるほどな、これが俺の今したいことなのかもな」
「そっか──そっかぁ~」
ヒナがくるりと背を向け、大きく伸びをした。
ぼっこぼこにされたのに、何故だか嫌いになれないと思っていたのだが──
「お前って、どことなくルナに似てるな」
「へっ! そ、そうかな?」
急に挙動不審になり、跳ねをパタパタさせながら右往左往するヒナ。
と思ったら突然立ち止まり、俺の方へと向き直る。
「うっほん」
「ゴリラかよ」
んなっ! と言って固まる彼女。
こんなのに俺は負けたのか……と思いつつ、それは口に出さない。
どうせ聞こえているんだろうけど。
「……明日」
「え、なんて?」
「明日! 夜0時! メグル君とヒナちゃんが初めて出会った場所……そこで待ってるわ」
「最終決戦──ってやつか?」
敵対を込めた声と挑戦的な笑みを浮かべ、彼女に問う。
スーッと息を吸い、同じ態度で返して来た。
「そうだよっ、君たちの希望を、わたしが──わたしたちが握りつぶしてあげるからね♪」
だから、逃げちゃだめだよ? と言うと、ヒナは公園の外へと歩いて姿を消した。
しばらくして、俺も公園を後にした。
「ただいま……ってタキじゃないか」
家に帰り靴を脱ぐと、足元に茶色い毛が映り込んだ。
我が家の飼い猫である。
んにゃ~と鳴きながら、足にすり寄って来る。
こいつは元捨て猫で、祖母が滝のような雨が降っている日に連れて帰って来たことから、タキと名付けられた。
ルナがやって来てから姿を見なかったので、警戒して姿を隠していたのだろう。
出したということは……ルナは家にいないのか?
タキを抱き上げ、俺はリビングへと向かう。
「──すぅ……」
ルナは眠っていた。
ソファで気持ちよさそうに寝息をたてながら。
なるほどな、だからタキが出て来たのか。
「タキ、こいつは警戒しなくても大丈夫だぞ。面白い奴だからな」
俺の言ってる言葉が伝わっているのかは知らないが、ルナの紹介をしておくことにした。
彼女が寝ていても余裕があったので、隣に座ってみた。
タキはルナに興味津々で、鼻をスンスンさせながら髪の毛の臭いを嗅いでいる。
背中をモフモフ撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めた。
ふと、視線をルナの髪の毛にやる。
ふわふわしてそうな髪に目が釘付けになる。
どんな手触りなんだろう……すごく気になる。
少しだけなら、許されるだろう。
そう思った俺は、手をゆっくりとタキの背中からルナの頭に移動させた。
……ぽふっと擬音がなりそうなふわふわだった。
控えめに言って最高である。
「……何してるの?」
「わっ! お、起きてたのか……」
「キミが私の隣に座ったところからね~」
「それは……勝手に触ってすみませんでした」
タキを抱えたまま、ルナに向かって軽く頭を下げ、謝罪する。
ルナからは素直でよろしいと言われた。
「それで、ヒナとは何を話して来たの?」
何も言っていないのに、思考すらしていないのに、彼女と会っていたことを見抜かれ、目が飛び出るのではと思う程びっくりした。
「なんで会ったって分かったんだ?」
変に探りを入れられたわけではないし、鎌をかけるにしてもする理由が無い。
一体どうして分かったのか、気になって聞いてみれば、その答えは少し予想外の物だった。
「……女の勘」
……は? 勘??
都市伝説てきなものだと思っていたが、まさか実在したのか……!
驚きと尊敬の混じる眼差しを彼女に向けると、なんかプルプルしていた。
まさか、今度は起こっているのか──!
「あははは、メグルって本当に面白いよね。勘っていうのは嘘だよ」
「……嘘なのかよ」
ちょっとショックを受けた。
ではなんで分かったんだ?
今度は聞く前に答えが返って来た。
「ヒナの臭いがしたから──かな」
自身の鼻を指でつんつんとするルナ。
目がギラリと光って見え、少しゾッとした。
タキも毛を逆立て、俺の腕の中で丸まってしまった。
「そ、それで? 彼女と一体何を話して来たの」
次の瞬間には少し焦ったような、急ぐ様子で確認して来るルナ。
俺が彼女と会話することで、何か困ることでもあるのだろうか?
その考えは一度置き、天野ヒナとの会話を、その時の状況や感じたことを話した。
俺の家族のこと。
俺の異能について。
ヒナがルナに何を願うか、それによって俺にしたお願い。
明日で、全てが決まる。
ルナが記憶を無事に取り戻し、俺の寿命が戻るか。
記憶を取り戻すのに失敗し、二人とも死ぬか。
「俺たちにはあまり関係ないが、少なくとも、天野ヒナはどちらに関係せず……死ぬ」
自分の眼で見たのだから、確実だ。
俺には人の最期が分かる不思議な能力があった。
それは物心ついた時からで、最初は何となく分かるくらいの物だった。
霊感とかではない。幽霊の類は見た事が無いから。
第六感……みたいなものが常人より優れているのだと思っている。
幼い頃は、誰にでもある物だと思っていたが、そうではないと気付いてから、周りに気味が悪いと距離を置かれるようになって、言わなくなった。
両親も異能に関しては知っていたので、俺を相手しなくなった。
怖かったのだろう……
──そうして居場所を失い。唯一の支えだった祖母も死んだ。
「おばあさんの死期も……見えたの?」
おずおずと聞いてきたルナに、もちろん、と端的に答える。
辛かったさ。大好きな人の……普通なら分からないはずの最期を視認してしまうのは。
こうして俺を見てくれる人は居なくなった。
──と思ったんだけどな。
俺が口にすると、ルナが「え……」と小さく声にした。
「ルナがいてくれる。死のうとして、命を助けられた」
なんやかんやで一緒にいる羽目になったが、一人でいるより何倍も楽しかった。
お前に出会えてまだ数日しか経ってないけれどな。と笑って言って見せれば、つられてルナも笑ってくれた。
「あいつにはルナのために死んでくれ、なんて馬鹿げたこと言われたがな、俺はお前を人間として過ごせるように手助けしたい。だから、一緒に行こうぜ」
拳をルナに向けて出せば、ふふっと微笑んでコツンと拳を当ててくれた。
俺の答えは決まった。
「そっか──明日なんだね。明日で、全て決まる」
なら、私も覚悟を決めないとね。とルナは真剣な面持ちで口にする。
胸に手を当て、少し考えているようだ。
俺は邪魔をしてはいけないと思い、静かにしている。
数分して、タキが俺の膝元から降りてルナの膝に乗った。
「……応援してくれるの? ふふ、ありがとう」
考えがまとまったのか、ルナは顔を上げた。
巡、と俺の名前を呼ぶ。
なんだ? と答えてあげれば、その先に紡がれるのは、彼女の決意だ。
「私は、人間の頃の記憶を取り戻したい」
人間の頃の記憶を取り戻す……それは禁忌。やってはいけない事。
それでも、彼女は取り戻すために戦った。
「何十年とかけて、あと少しというところで……ヒナに奪われた」
ぐっと唇を噛み、深呼吸を一回挟む。
彼女の身体が少し震えていた。
俺は見守る。彼女が何を言うのか。
「──だから、私は取り返す。自分の力と記憶を……ヒナを倒して、奪い返すの!」
「よし、ならやることは決まったな」
俺たちは明日の決戦に向け、ゆっくり休むことにした。
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