8/11
8ヶ月
赤ちゃん籠、持ち運びの出来るベビークーファンを手渡される。誰に手渡されたかは判らない。
そんなことより、やっと、子どもが手元に来てくれたことが嬉しくて、やっと抱き締めることが出来ると、嬉々として、そのベビークーファンを受け取る。
早く、早くと、急く気持ちのまま、ベビークーファンを覗き込むと、中身は空だった。
誰も居ない。空のベビークーファン。
私は衝撃で目が覚めた。驚き過ぎて、声も出ない。震える両手を自分のお腹に持っていく。温かい。
9ヶ月目に死産したことのある友人が、
「ある日、突然、お腹が冷たくなったんだ。」
そう言っていたのを思い出す。
(まだ、暖かい。)
ずいぶんと膨らんだ自分のお腹に当てた手は暖かさを感じとれている。
まだ、暗い時間。夜明けには遠く、寝直した方がいい時間帯。でも、とてもではないが、寝直す事は出来そうにない。
お腹の子が生きて産まれて来るのか不安になるが、
(お腹は温かい。お腹の子は生きているはず!)
そう、自分に言い聞かせ、それ以上は考えないようにして、布団に横になり、目を閉じる。