【プロット】俺以外の転生者がもういる異世界転生(どどめ色のお味)
chapter1 めがみさま鬼畜の極み
「いろいろと気になるけど1つだけいいか?」
「どうぞ」
「なんでこの世界に『メートル』があるんだよ」
「そこに気づくとは流石転生者様」
「ええ、お気づきでしょうがこの『メートル』はですね」
「あなた以外の転生者が広めたものです」
「……え?」
「ええ、あなた以外にもう一人転生者がいます」
「んで、そいつが広めたんだよね?」
「はい、この世界を救った勇者様ですので」
「尚更俺がいるのおかしくない?」
「おかしくないです」
「どゆこと?」
「貴方は脇役です
勇者に倒されるための存在になるのです」
「は?」
「貴方も御存じでしょう、異世界転生のお話の現状」
「現状」
「異世界に転生して、魔王倒してハッピーエンド
ヒロインと結ばれて幸せな生活をサ〇エさんのように永遠と続けるありきたりな結末」
「ちょっと古くないか、それ」
「ここも似たような感じになりました」
「ああ、そうご愁傷さまに」
「なので貴方なのです」
「貴方という邪魔者を一つまみ入れて面白くするのです」
「スパイスか何かか俺は」
「意外と口がお上手で」
ちょっと馬鹿にしてないかこの女神。
「聞こえてますよ、はいマイナス10,000ポイント」
すると俺のステータスから何かが引かれる音が流れる。
見る見るうちに何が何だか分からないステータスがゼロとなった。
「気になったんだけどさ」
「ひとつ」
「何が」
「貴方が聞きたかったのは『ひとつ』なのでしょう、それ以上はNGです」
指を口に当てて、黙れのしぐさ。
微妙にかわいらしいのがムカつく。
「できるだけ私の世界をかき回して面白くしてください
そのたびに今しがたゼロにしたポイントを贈呈します」
「ポイントがたまりますと、次の転生に使えます」
それはいいことを聞いたかもしれない。
いい感じに稼いだら自殺して次に備えようそうしよう。
「でも勇者に倒されたら0ポイントになります」
「……え?」
「はい、では良い第二の人生を!」
Chapter2 けんじゃさまの生きがい
「ステータスオープン」
伝統のこれ、もうやられちゃったよ。
ちょっと俺がやってみたかったのに……
「ん、何じゃらほい」
「何が?」
「何だこの文字読めんよ」
見せてもらった。
うわぁ……
スキル:『魔王』
効果:この世界を滅ぼす(<0x02>9%¢ÊóÂ*;±c<0x15><0x9e>Ú;l)
最近流行りのフレーバーテキストの極み。
つか文字化けで隠してるけどそれ
16進数のASCIIに変換してMD5ハッシュのbase64でデコードしたら
* *
* + うそです
n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
Y Y *
じゃねーかよクソが!
「どうしたんじゃい?」
「あ、いやその、なんて書いてるか本当に?」
「うむ、まったくわからん」
反応から察するにメートル法は広まっているのに漢字は広まっていない。
もしかすると転生者とやらは日本人じゃないかも。
でももし転生者が日本人ならこれで一発お陀仏。
「他なんかあります?」
「役に立たないものまみれだな」
「役に立たない」
「まあ強いて上げるとすれば・・・」
スキル:イリュージョンスター
効果:カラフルな流星嵐を見せる幻覚魔法
スキル:即席トーク
効果:大体の言語が翻訳して伝わる
スキル:女神の加護(全知的生命体共通スキル)
効果:貴方の生命はこのHPMPで全て管理されます
スキル:Dモーション
効果:貴方のモーションを時折コミカルにします。
【その他多数 呼吸ができて偉い系のスキルの羅列が続いた】
……本当に必要最小限度だな畜生が。
生活保護かよ。
「おじいさん、お代は」
「ん、ああ結構じゃよ結構」
「本当にか」
「本当じゃよ、これは老人の楽しみじゃ」
「楽しみ?」
「こんな哀れなスキル構成でこの若者はどう生きるんじゃろうなと妄想するのじゃ」
「えぇ……」
「ちなみにお前さんは、わしが見た中で過去最悪じゃ」
「過去最悪」
「……まぁ、強く生きるのじゃ」
肩をたたいて慰めてくれる。
余計なお世話じゃい、つか悪趣味だなおじいさん。
「じゃあの」
満面の笑みで、金もとらずに嬉しそう。
すごく、みじめな気分を味わった。
Chapter3 さいしょの村に入れない
「うっわ」
めたくそ可愛い。
正直この娘といい感じになれたらとは思う。
でもここは俺以外の転生者がいる世界。
(勇者のハーレムの一人のだろうな
チョッカイ出したらその時点で人生終了じゃん、やば)
0ポイントで退場はちとマズい。
断腸の思いでそそくさと逃げる準備をする。
「あの!」
「え?」
「助けていただいて、ありがとうございます」
「あ、まあ無事で良かったじゃん」
「それで、貴方の名前は」
……それだけは流石に勘弁願いたい。
こんなクソみたいな前世の因果を繰り返すわけにはいかない。
「いや、ただの通りすがりの者ですのでおかまいなく」
「……へ?」
多分勇者ヒロインAちゃんは困惑した顔で辺りを見渡す。
俺の姿が突然消えたことに驚いたのであろう。
これぞ俺の究極奥義、絶・1日かくれんぼ!
忍び足から流れるように物陰にイン、そして息をひそめる。
これを使用すると誰にも見つからない。
本当に、本当に見つからないし誰も探してくれない。
かくれんぼするたびに行方不明扱いにされて
電信柱にヘッタクソな俺の似顔絵がびっしり貼られたときは流石に恥ずかしかった。
「……なんだったんだろう」
Aちゃんはまるで忘れたかのように家路につく。
わかってはいたけどちょっとショックだった。
「やり過ごせたわ、じゃあちょっくら村を拝みに行くとするか」
後悔した。
土産屋・土産屋・土産屋のオンパレード。
剣に杖になんかちょっとカッチョいい額縁の絵とかいっぱい。
ここはさいしょの村。
言うまでもなく、勇者が生まれた町。
「死ぬわ」
逃げた。
ちょっと木の根で躓いて、無様に逃げた。
0ポイントォォォォォオオオオオ!
「はぁ……はぁ……もしかして安全地帯無い系ですか?」
「そうだよ」
Chapter 4 とうきょうさ行くべ
慌てて口を抑えて物陰に隠れる。
随分近くで声がしたと思ったら見るからに魔物が1体2体。
「で、どうだった?」
「油断してらぁ、なにせ派手にやられたフリしたでさぁ」
「オマケに更に弱っちい奴いて助かったわ」
「つまりは、もう帰ったと」
「バッチリ」
魔物たちに付いていく。
密談は段々と物騒に。
「■■は今日から2週間家に籠ったまま」
「無防備というわけだ」
「しゃあ!荒らし放題じゃねーか!」
「落ち着け、まだ始まってはいない……夜を待て」
「これでさいしょの村も俺たちのムフフ」
「おい待てよ、アイツを頂くのは俺だ」
「いいや俺だ、ソースに漬けて踊り食いぃぃい」
まあ、魔物だしそりゃ略奪するでしょ普通。
ちょっと一人テンションがおかしいやついるけど、いや全員おかしいだろ。
「勇者もいない、娘たちもいない、これは千載一遇」
「ここで勇者の故郷を火の海にし、我ら魔王軍の威を知らしめる時!」
「ォォォォォオオオオオ!」
でもこの時ばかりは女神に感謝したい。
彼女から渡されたICレコーダーで魔物たちの作戦もばっちり記録。
しかもICレコーダーは異世界人でも使えるらしい。
風情ボロボロじゃん、何が異世界じゃユニバかよここは。
で、急いで戻る。
「はぁ……はぁ……キッツふざけんな!」
アジトから村までざっと、えっとまあ距離すごい。
少なくとも日没まで間に合うのか微妙。
でも、とりあえずやれるべきことは。
もう本も読めない仄かな宵の光の中。
多分Aちゃんの家の窓にめがけて布で包んだ石(ICレコーダー付き)をフルスイング。
「きゃあ!?」
ストライク!バッターアウト!俺重罪!
でももうこの村にいないから大丈夫。
あとはとりあえず流れで殲滅してくれ。
「ヘイ、そこの行商人!」
「え?え?え??」
「これで足りる!?」
全財産をぶちまける。
3677円、全部日本の硬貨でお支払い。
当然、その価値がそのまま通じる訳はないが……
「うむ……足りるどころか世界の果てまでいけるぞい」
「じゃあこの国で一番でっかい街!」
「よっしゃ乗った、出発!」
後で聞いた話だが、当然の如くAちゃんが魔物の陰謀に気づき
アジトごと全ての魔物を灰にしたらしい。
やっぱ勇者関係者って凄いな、つか怖。
Chapter5 この世界でもやっぱり片隅
「着いたぞ」
「わぁ……」
感動より尻が痛い。
滲む城壁の威容はまるで夢を見ているみたいだぁ。
「お前さん大丈夫か?」
「ちょっと大丈夫じゃ……ないですねえ」
「それはご愁傷様」
行商人と別れた後は、流れのままスラム街へ。
ってか身元不明人の俺じゃこっちの方が良いじゃろう。
そして必要なのは2つ。
職と住居と・・・・・まあ気候的に都心部で野宿でも大丈夫そう。
職は案外早く見つかった。
「うわあ、本当にあるんだギルド」
文字は、流石に読めない。
でも貼られているお仕事は読める。
「その前に登録っと」
ギルドの中は酒屋のようなレイアウト。
カウンター奥に座るのは、これまたイラスト映えしそうな女の子。
「ん~お客様~?」
「いや、この仕事やりたくて登録を」
貼られていたうちの一枚を差し出す。
恐らく誰もやりたがらず、貼られっぱなしの清掃依頼の1枚。
「別にいいけど~これ、相当キツイと思うよ~」
鼻をつまんで3K仕事だとアピール。
だが、幸いなことに俺は臭いのには耐性がある。
「まあ、仕事後に水で洗えたら引き受けるわ」
「ん、ちょっと待っててね~」
受け付け嬢が電話で確認をとる。
どうやら条件は受け入れてくれたらしい。
「じゃあ登録だけど~……」
「お名前から聞こっか」
「……」
「どしたの、言わないならつうほう~」
「……分かったよ、サキだよサキ」
その言葉の度に前世を思い出す。
女みたいな名前にオッサンみたいな顔と体形。
親にまで憐れまれて改名を勧められるも手遅れ。
今は、と思えば全身すべすべでちょっと気持ち悪い。
え、いつの間に脱毛サロンを?
「ふ~ん、渋った割にはふつうじゃん」
「普通でも嫌なもんは嫌なんだよ、んで場所は」
「突き当りまでまっすぐ、これホント」
ホントにあった。
俺の鼻が曲がる程の臭気地獄。
そこに現れたのはスーツの似合う中年男性。
「じゃあ宜しくね」
よろしくじゃねーよ何をしたらこんなことになるんだよ。
水の都がここだけ台無しじゃねーか。
とりあえず一日かけて水洗い。
手順通りに一欠片すら許さず清掃完了。
それでも臭いはぬぐい切れない。
「終わりました」
「はい、ご苦労さん」
思いっきり水を掛けられる。
滴る水が更に顔への不快感をプラス。
「何だね、ご要望通り『水洗い』だ」
「……っすね」
「さあ帰った帰った、キミ臭いからね」
「……っすね」
お賃金袋が水でグズグズなんだけど、アイツ正気かよ?
まあ訴えはしないけど今度会ったら秒で殴るわ。
「お、奇遇じゃん……くっさ」
「正直だね」
「ホントに洗ったの?カラスの行水?」
何でそれだけ伝わってんだよクリティカルだな。
もしかして勇者様、俺よりちゃらんぽらんか?
「盥一杯に水浴びだよ、あのオッサンの粋な計らいじゃん」
「え……?」
「『水洗い』には違い無いだろ、クソムカつくけど」
「……ホントにそれでいいの?」
「底辺の仕事つったらこんなものだろ
やれと言われたらやれ、それ以外の異論は挟むな」
「水洗いについては文字通り水に流してやるけどさ、コレ」
「カネにこんなことしやがる事に関しては文句ぐらい言わせてくれ」
ちょっと黙る。
何か微妙に考え込んでる。
いや、そんな話じゃないだろ、何か喋ってくれ。
「ん、わかった」
え、ちょ怖……そっちはあのオッサン。
凄い音がしたんだが、あ何かボロ雑巾が出てきた。
「ど、どうぞこちらへ」
通された先はシャワールーム、やっぱあるんかい。
洗いながら受付嬢が話してくる。
「素直に通せば家が汚れなかったのにね~」
「いい気味だよ、泥だらけのまんまリビングでゴロゴロしてやりたいぜ」
「それやったらサキもシメる」
すんませんでした。
「ウチは信用大事、嘘つく人はお客様でも滅多刺し」
「えぇ……怖」
「だからこんな仕事を通した誰かをわたしは許さない」
「つまり……どういうこと?」
「サキ、言ったよね
やれと言われたらやる、異論は挟むなって」
「……嫌な予感がするんだが」
Chapter 6~7 白いゴキブリ共をあぶりだせ編
ちょっとネタ思いつかないので省略
Chapter 8 王都終了のお知らせ
「そういや明日勇者凱旋パレードあるんだよね」
平和な朝が一瞬にして崩れた。
そういやこの街も勇者にゆかりのある街だよね、王都だし。
終わったわ。
「コーヒーこぼれてる」
「すまんすまん、んで勇者凱旋って」
「王都に来るたびにやってる」
「それ凱旋って言うのか?」
「何かしら倒してるから間違っては無いかも~」
「何かしら」
曰くドラゴンとかドラゴンとか悪魔伯爵とかドラゴンとか。
いや倒しすぎだろ、チートやん。
「はぁ……ナオトもあんな性格じゃなきゃ」
「今ナオトと言ったか? まさかそれって」
「知らなかったの~? 勇者のお名前」
もっと終わったわ、日本人やんけ。
尚更スキル見られたらデッドエンド。
ギルド(慈善活動)でポイントがちょっと溜まったけど
これじゃあ到底ファーストクラスには届かない。
せいぜい飛行機の下からロープで吊るされるクラスで太平洋横断。
嫌すぎるわ。
潮時だね。
「どしたの~」
「ほら、俺って結構稼いだじゃん」
「うん~」
「それに俺放浪者だし」
「だね~」
「そろそろ旅に出ようかなって」
「ふ~ん」
「放浪者もだけど、寧ろスラム民っぽいよね~」
「ぐ……!確かにスラム民だけど……!」
「行く当てあるの?」
めっちゃ痛いところ突くやんけ。
とりあえず勇者から離れたい、以上だ。
「行商人を頼るよ」
「そっか~」
「世話になったな」
「だね~お達者で~」
別れは案外あっさり、でもその方がいい。
彼女も見目麗しい以上は、やっぱ勇者関係者、いや強さが。
とりあえず深い関係になる前に退散退散。
……でも何か微妙に疑わしい目をしていたような。
「ヘェェイ!そこの行商人!」
「……」
「あ、えっと……これで行けるところまで」
「……」
「あ、そこは二つ返事なんだ、助かるわ」
ごとごとと揺られる馬車の中で大歓声。
今頃王都では勇者を祝う盛大なパレード、兼俺の死亡フラグ。
どんどんと離れていけ。
「そういやこれはどこまで行くんだ?」
「……」
「あ、そこも駄目か……うおっ!?」
馬車が横転する。
布越しから異形の影が揺れる。
「お、人間じゃん美味そう」
「俺って食べ物なんです?」
「うん、味は保証するよ」
「それより命を保証してほしいな、なんつて」
「やだ、おいしいから」
話が通じそうで全然通じてくれない。
あ、そうだ。
「なあ、流れ星は知ってるか」
「知ってる、三回お願い」
「そうさ……あ、あんなところに流れ星!」
「うわすげ」
役に立ったイリュージョンスター。
「因みに流れ星は一粒が象サイズの金平糖だ!!!!!」
「おで、金平糖、大好き!」
幻影の流星に向かって走り出す魔物。
上手く逃げ切った。
「大丈夫かお前?」
御者の人は苦しそう。
ステータス上では麻痺が付いている。
うわ、俺もじゃん。
でも効いてない。
「もしかしてこれって【息できて偉いね系スキル】の加護か?」
俺にかけられた沢山の【息できてえらいね系スキル】たち。
それは俺の普通の生命活動を強制的に成立させるパッシしししししししs
「い゛ぎ゛が゛ぐ゛る゛じ゛い゛い゛い゛い゛い゛!?」
やっぱフレーバーテキストじゃねえかクソッタレが!
※後で判明したことだが
この現象はDモーション(偶にコミカルになるよ)によるものでした
魔物はいないけど絶体絶命。
海の中でひっそり静かに溺れて死ぬ子供のような気分。
やば、西部劇確定じゃん。
どうしよ?
なんか新手が来たけど……
【暗転】
Chapter9以降・未定