短編 67 恥ずかしがりやの女の子となんやかんやする話
タイトルが長い! でもこれで書けるようになったのも事実! R15だコンニャロー!
開き直ってようやく書けたんですよね。
いやー。百本ノックって怖いわー。
俺は硬派な人間だ。自他ともに認める硬派の中の硬派。歯ブラシだって『かため』を選ぶような硬派な男だ。とんこつラーメンは柔らかめが好きだが、それはまぁいい。
そんな俺に春が来た。
女の子に告白……されたのか、よくわからないが、とにかく硬派な俺に彼女が出来たのだ。
電車で痴漢されてる女の子を助けたら、なんかそうなった。俺にも訳が分からないが。
毎朝の電車は彼女との時間になった。彼女はいつも同じ場所にいる。俺が乗るときには既に彼女が乗っている。
そして俺が側に来ると服の端をその小さな手で掴むのだ。とても嬉しそうな顔をするから俺も止められん。子供の笑顔は国の宝だ。
そう……彼女は小学生女児。痴漢した野郎はロリコンとして社会的に殺された。車内にいる全員で袋叩きにした。
俺は硬派な人間だ。硬派な人間はロリコンだからといって迫害などしない。何故なら硬派だからだ。でも痴漢は許さない。硬派だからだ。
今日も彼女は俺の服を掴んでにこにこしていらっしゃる。彼女に向ける周りのお姉さま方の視線はとても温かくて優しいものだ。俺には『分かってるわよね?』という鋭い視線になるが。
朝の電車は硬派な俺に試練を与えて来る。朝のラッシュアワーなので人が多い。小学生女児である彼女はすぐに大人の波に埋もれてしまう。
だから仕方無い事だと思っている。
小学生女児を壁ドン。これが彼女を守るための最も確実な安全策なのだ。
女児親衛隊であるお姉さまが俺の尻にスタンガンを当ててくる。これも安全策だ。大人のお姉さま方に耳元で『分かってるわよねぇ?』と囁かれると股間の硬派なジュニアが『うぴゃー!』と縮こまる。だが大丈夫。俺は硬派な人間だ。
壁ドンされてる女児は毎度真っ赤な顔になるが硬派な俺には問題ない。俺は硬派な人間だ。壁ドンしつつ頬に掛かる髪を耳に流す事ぐらいしかやらん。身長差により俺の腹ぐらいまでしか女児の身長はない。彼女はいつも恥ずかしそうに俺を見上げて来る。
俺を見上げる女児の顔は……ちょっと女児とは思えない『女』の顔に変化するが、女の子の成長は早いと聞く。多分そういうことなのだろう。自分、硬派ですから。
背後に控えるお姉さまが『……今度私にもやって』と羨ましそうに囁いてくるが、そういうのは自前の恋人にやってもらってほしい。自分、硬派ですから。
壁ドン中も彼女は俺の服を離さない。壁ドンにより俺と彼女は密着しているのだが流石に抱きついて来るようなことはない。彼女も硬派なのだろう。後ろのお姉さまが毎度当ててくるのがちょっと困る。いや、スタンガンな、スタンガン。尻に固いスタンガン。背中にもなんか柔いのが二つ当たっているが、きっと中華まんじゅうでも押し付けているのだろう。自分、硬派ですから。
女児は……まぁ女児なので。
胸を当ててくる動作はちょくちょく見受けられるのだが……自分、硬派ですから。
後ろのお姉さまが鼻息荒くなっちゃうから。
自分、硬派ですから。硬派なんです。
硬派なんだけど朝の電車の時間を一本変えた方が良いかなーと思う今日この頃。
女児は基本的に無口で何も言わない。硬派な女の子だ。硬派すぎて提案すら不可能だ。後ろのお姉さまは柔らかい。つまり軟派だ。その柔らかさが女性ということなのだゲフーン!
……自分は硬派な人間である。
色恋肉欲に溺れることなどない。
それが硬派な人間なのだ。
たとえ小学生女児とはいえ壁ドンする仲。自分はそろそろ彼女にプロポーズをしようかと思っている。相手はまだ小学生。勿論婚約ということになる。
そして今は幼いこの女児も、結婚適齢期になり立派な淑女となれば、俺の価値を簡単に見抜けるようになるだろう。つまり俺は捨てられる定めにあるということだ。
それでもよい。この幼くも健気な淑女の踏み台となれればそれで。
別れる前提の婚約。だがそれで良い。自分は硬派な人間だから。
女の子は恋をして綺麗になる。母ちゃんはそう言っていた。確かに女児は最初に助けた時とは別人と思うほどに綺麗になった。今は美少女というか『女』の顔になっている。そして背後のお姉さまも、なんか綺麗になっていた。この人は最初から『女』だった。
じ、自分は硬派でありますから? 誘惑になんて負けないのでありますよ。
「お兄様……お慕いしております」
……自分。硬派辞めます。
今日も朝のラッシュアワーは殺人的な混み具合。痴漢も喜ぶ日本の闇だ。これを放置している政府はきっと痴漢行為を容認しているのだろう。
つまり国家のお墨付き。
自分……チャラ男になったっす。
朝から女の子と『ウェーイ』するのが日課のチャラ田チャラ男でございます。
今日も彼女と満員電車で『ウェーイ』しまくるぜぃ。
俺の彼女は中学生になった。
すごい美人になったので今は変装して電車に乗っている。いわゆる男装の麗人だ。本当に硬派な彼女だと思う。
そして朝の車内でいつの間にか結成されていた女児親衛隊は、いつの間にか解散されて新たに『尊し連合』なるものが作られていた。
チャラ男となった俺は頭をド金髪に染め上げた。でもド金髪にしようとして失敗。ド白髪になってしまった。やりすぎはよくないね。あと慣れてないと酷い事になるね。
白髪の大学生。今日も教授の視線が痛いことだろう。ま、それは置いといて。
朝の満員電車でド白髪の男がイケメンな男の子を抱き締めていちゃついている。
そんな噂が噂を呼んで『尊し連合』は作られた。今や連合の会員数は一万越えだ。朝の車両は、ある意味『尊し連合専用車両』とも言えるだろう。
朝の車両には鼻息荒いお姉さま達しか乗ってこない。痴漢ですら逃げ出す恐怖の車内だ。普通に警察官とか紛れてるから当然なんだけど。
かつてはロリコンとして噂になっていた自分。
今はベクトルが大きく変わった。それでもロリコンよりはマシ……と思えるようになったのは自分がチャラ男になったからだろう。
……人生って不思議だなぁ。
チャラ男になった自分には特権として車内でのエロが解禁された。これはお姉さま達が許可を出したのだ。
「ふー、ふー……坊や。固くて素敵なお尻ね」
「ダウトー!」
痴女が捕まった。エロが許されたのは自分であってお姉さまではない。ではないのだけれど毎日逮捕者は出る。
当然なのだが、お姉さま達に許可をされたのは公序良俗を守ったエロのみである。痴漢はやっぱりアウトでダウトなんだよ。痴漢というか痴女行為は普通にアウトでダウト。
「くっ! 口に出さなければセーフだったのに! でもどうしても言いたかったんだもん!」
と、犯人は供述しております。被害者は俺。
満員電車の車内には同意するような空気が漂う。この電車も随分変わったなぁと思う。前はほのぼのした空気だったのに今は基本的にピンクだ。むしろ血生臭い。
そんな車内の喧騒の中。中学生となり、男装している俺の彼女が足を軽く踏んできた。相変わらず服の裾を掴んでいる彼女。大きくなっても彼女の芯は変わらない。可愛い女の子だ。
無言で見上げてきて責めてくるのも変わらない。可愛いメンチだ。これが一番堪えるので、すぐに謝ってしまう。自分、チャラ男っすから。
彼女の頭を優しく撫でる。謝罪と愛を込めて。
これがこの車内で許されたエロ行為である。エロい。とにかくエロい。
「……私も撫でてほしいなぁ」
背後のお姉さまがそんな囁きを……俺の背中に二つのまんじゅうを当てながら囁いている。
これはダウトにならない。何故ダウトにならないのか世界七不思議のひとつに数えてもいいと思う。
でもエロい行為なんです。頭を撫でるという行為は。俺の愛する彼女はいつも腰砕けになるので『頭なでなで』は最終兵器扱いなんです。
「あ、ダウンした。では交代ー」
「座席空けてー」
……人って不思議だな。満員電車の車内というのに人はこんなにも連携することが出来たんだね。モーセの海割りのように人が割れた。そしてそこをくたりとしたままの彼女が通されて座席に移された。なんかぐにょぐにょしているが……いつもの事である。
そして俺の腕の中にはどこから現れたのか、お姉さまの一人がするりと入っていた。毎度の事ながら思うが、この人達は、なんなんだろう。
「では……お兄様……お慕いしております」
ぐっふ!
明らかに歳上! それに俺の黒歴史を抉ってきやがる!
でもここで目を逸らしたり、お姉さまの頭を撫でてあげないと股間の軟派なジュニアが『めきょ!』っと潰されるのだ。
本当にこのお姉さま達はなんなんだろう。
とりあえず頭を優しく撫でてみた。
「……はふぅ……」
……この人も可愛いなぁ。目がとろけてる。でも自分には彼女がいるんすよね。浮気っすか? いやー残念!
自分、チャラ男っす。だから平気なんすよ。
朝から女の子を蕩かすドスケベ男。チャラ田チャラ男でございます。へっへっへ。
……硬派な時よりも毎日が楽しいのは……何でなんかなぁ。
友達も増えたし。
……何でなんかなぁ。
あと俺の尻を撫でてるのは誰だ!
静かにセクハラすんな!
それは痴漢だぞ! いや、痴女だぞ!
……痴女だな。うん。
……うーん。
これで良いのかなぁ。チャラ男とはいえ。
そんなことを考えつつ今日も電車は走っていく。
自分ちょっと前まで硬派だったんすよねー。
はははー。
……はぁ。
今回の感想。
もっと切なくて胸キュンする物語だったんです。当初の予定では。変態色が強くなりすぎてR15になりました。
ちくしょー!