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03-05:悪化させるのはボクの十八番

試験的になろうっぽくサブタイトル?を生やしてみた

今後つけたままにするか消すのかは、気まぐれな私の気持ち次第…


 最近、某テレビ番組の押し売りが隣家を叩いている浅ましい光景を見た今日この頃。

 ボクたちは今、日課の空想退治に出かけています。

 日中に門通って来るとか、TPOがなってませんねやりなおしです! 学生の気持ちも考えてください!

 ……うん、またお昼前なんだ。課題が増えるよ……


 ま、今回の敵は大変珍しい種類の空想なのですが。


 門発生にギリギリ間に合わなったボクたちは、現場から数十メートル程離れた位置でそれを見ていた。

 出方を伺っている、といった感じだ。

 なにせボクたち異能部にとって、今回の相手は初見だからである。


『なんだその空想は……! 情報にない新種? いや違うヒトガタの動く石、ということは……! まさか伝承にあった、あのゴーレム!?』

「あ、知名度そんな感じなんだ……」

「いやゴーレム見たことあるでしょ先輩」

『……すまん。だがそのタイプは見たことないぞ』

『かかか、過去百年の記録にゴーレムとの戦闘記録は書かれてないですぅ……』

「あーね? ガチの生物ゴーレムは非認知ってこと?」


 そう、現れたのは無数の生きた石人形───魔力を糧に稼働する魔法生物、ゴーレムくんの集団である。

 全体的に角張った石の身体、能面の角張った球頭。

 何処からどう見ても非生物にしか見えないが、今回やって来たゴーレムたちはちゃんと生き物である。

 人工的なモノなら操り主の魔力の線が見える筈だ。

 だが見えない。ということは、アレらは自然由来で発生した天然物のゴーレム、と言うことだ……多分。

 なんか違和感あるけど、多分考えすぎだろう。


「ゴーレムなんて初めて見た……」

「そりゃ、かーくんは見るもの全部はじめてでしょ」

「それは言っちゃいけないお約束だろ」


 まー確かに珍しい。それも百体とか、異常かな?


 昨今のゴーレムで見られるのは八割方異能で精密に造られた人口物ばかりだ。それもあんな岩っぽい見た目とかではなく、ちゃんと球体関節のある人形っぽいのが手作りゴーレムの主流である。

 対して今回出てきたのは岩。まんま岩である。

 廻先輩が伝承の〜とかこんがらがった事を言うほど混乱してしまったのも無理はない。人形系統の異能者との接触や戦闘はあっただろうけど、流石に天然物は見たことがなかったか。

 多世先輩の発言が真実ならそらも仕方なし。


 緩慢な動きで前進するゴーレムたちを見てみるが、どう見ても獲物を探す動きではない。命令通りに前に向かって歩いている、ようにしか見えない、が……

 黙れかの指揮下で操られているようには見えないんだよなぁ……


「ゲートの数は四つ、でもって閉じる気配は無し……これ、ゴーレムの追加投入も視野に入れた方がいいんじゃないの?」

「フラグ立てるのやめてくれないか?」

「結婚フラグだけで充分かなぁ」


 ズルズルと《洞哭門(アビスゲート)》から這い出てくる石塊兵団を眺めながらの発言は、同僚たちを思っての言葉であるのに、こんな無碍な扱いするなんて……

 酷いわ……こっそり魔造したのを混ぜちゃうぞ。


「珍しくて見たくなる気もわかるが、被害が出る前に終わらせるぞ。いつまでもここを、高速道路を塞いでいるわけにはいかない」

「おーす。パイセン、指示お願いしゃす!!」

「あぁ、いくぞ───総員突撃!!」


 威勢のいい合図と共に、部員たちが駆け出す。

 そう、場所はアルカナを横断する巨大な高速道路。海で隔たれた皇国の各地方都市を繋げる役割も担っており、その隣にはリニアモーターカーが魔都から古都まで走っている。つまり、皇国の生命線である。

 ハッキリ言ってゴーレムたちはクソ邪魔だ。

 コイツらのせいで渋滞遅延がやばやばで、イラつく住民たちの苦情がわんさか届いている。黙ってろ。


 ま、そんなわけで。めちゃくちゃ掃討します。


「かーくん、私と行こ?」

「おう。精霊たち、お前らも行こうぜ」

『〜♪』

『〜♪』

「その子たちの名前、いつ決めるの?」

「あ〜、真宵が命名には魔力大量に持ってかれっから心身共に健康な時、つまり仕事がない休日且つ真宵と日葵の両方が同伴している時にやれって言っててさ」

「あー、なるほどね?」

「住んでる屋根の下に死体ができたらイヤだし……」

「こっわ。平然と言われてより怖いわ」


 困ったように頬をかく一絆くんは、そろそろ精霊に名前をつけるつもりらしい。一応決めてはいるみたいだが、ボクが待ったをかけている。

 理由は彼への忠告通り。後は魔力補填の準備かな。

 下手に全部吸われてミイラになられても困るからね時間をかけるのは当たり前なのだよ。


 と、いう会話を走りながらやってるボクらは最強。


「ほーら、後輩たちに獲物獲られる前にゴーレムたちぶっ殺そ?」

「壊そう、じゃないんだな」

「人工と違って天然物は生きてるからね」

「あっ、そうなんだ」


 いや日葵、お前知らんかったんかい。知っとこうぜ勇者として。


「ん。一番手───【死之狩鎌(デスサイズ)】」


 そう談笑している隙に、ゴーレムの元へと真っ先に辿り着いた弥勒先輩が異能を発動、魔力を集めて巨大な大鎌を顕現させる。

 片手で振るわれた刃は前進する石塊の胴を切り裂き破壊する。

 ……あれ、強度高めで造って斬ったな?

 あんな綺麗な断面図でスッパリバッサリ斬れるもんじゃないんだけどなぁ。硬いはずなんだけどなぁ。

 というか再生能力は無いみたいね。やっぱり普通のゴーレムなんか。つまらん。斬られてもくっつけよ。


 おっ、他のヤツらもどんどん突撃してってるな。


「<雷閃>───ふむ、成程。ただの斬撃より異能を乗せた斬撃の方が効果あり、か」

「そーゆーことならッ、<風刃斬(エアスラッシュ)>!! ……おっ!」

「やはりか。丁嵐くん、そのまま行けるか?」

「大丈夫ッス! こっちは任せてくださいッス!」


 二番手として突っ込んだのは玲華部長と丁嵐くん。ボクと日葵を除いて一番二番に速い彼らは、愚鈍に前進し続けるゴーレムに攻撃を加える。

 普通の刀の一撃よりも雷を纏わせた斬撃の方が効果アリだと気付いた部長は、そのまま速度を緩めず敵の行動を切り裂いて制限していく。

 丁嵐くんも部長に習って風の刃で応戦。

 蹴りによって繰り出されるそれは、まるでどこかの強盗犯の一人を想起させる。が、飛ぶ刃の威力と性質が全然違う。

 流石異能部に選ばれるだけあるといったところか。

 ……さっきまで蹴り一つでゴーレムの身体に凹みを入れてたなんてことは忘れよう。よく折れないな……


「貫通はどうかしら……<滴雨(アクアショット)>! ……あら、意外といけるじゃない」

「しずちゃん先輩! 柘榴石していいのです!?」

「いや貴女、高速道路壊す気? 爆破はダメだって皆に言われたでしょう!」


 そしてこっちは叱責中。凝縮した液体の弾で人形の心臓部を綺麗に撃ち抜いた雫ちゃんは、膝を折って動きを止めるゴーレムを見て感嘆とした声を上げる。

 初見で知識無しでコアを貫通破壊したか……流石。

 対して我らが新たな癒し、くるみちゃんはなんでか爆発に目覚めたのか、妖しく煌めく柘榴石を両手に目をキラキラさせている。

 ダメって言ったでしょ。言うこと聞いて。マジで。


 あとその呼び方なに。詳しく聞かせて???


「うがー!! やっぱ見た目通り燃えねぇな! 頑張れば砕けっけどよォ!!」

「いや、砕けてる時点で充分だよ、ほんと……」


 で、こっちには火恋ちゃんと姫叶くん。

 殴打が基本武器の火恋ちゃんも、例には漏れず硬いゴーレムに対して有利を取っていた。どうして歳若い人間の筈なのに岩を砕けるんですか?

 キミたちまだ熟練の戦士とかじゃないでしょうに。

 あと燃えないからってイライラせんといて……

 姫叶くんはゴーレムの足元に小石を投げて巨大化、からの転倒っているコンボを決めて動きを阻害させている。

 やっぱ、ドミノ倒しが得意なだけあるね。


「んー、やっぱり小細工は効かなそうでござるなぁ。久しぶりに分銅鎖でも使うでござるか」

『────!』

「うん、首が取れた時が一番爽快感あるでござる」


 そしてその頃、鶫ちゃんは腰下げ巾着からするりと取り出した鎖がついた分銅を振るい、ゴーレムたちの頭を一つ一つ丁寧に外していた。

 怖い。なんで平然と首狩りができるんですか?

 やっぱり忍になるには心を捨てなきゃいけない感じなの?


 ……さて、そんな風に一通り見てみて、ふと疑問に思ったことが一つ。


「なんかさぁ……攻撃表示、出てなくない?」


 なんかゴーレムたち、無防備に攻撃されるだけで、こちらに対して反撃とか迎撃とかしてこないんですけど。

 これじゃあ一方的な殺戮なんですけど。

 ちょっとぐらい攻撃してもらわないと楽しめないんですけど。


「あ、やっぱりそうだよね? 全然攻撃してこないよねこの子たち。なんで?」

「いや俺の方見て言われてもわからんけど……」

「……なんだろ、この違和感」


 光の武器で戦っていた日葵と一絆くんもどこかしら疑問には思っていたようだ。

 只管愚直に前進するゴーレムには疑問しかない。

 異能部の総攻撃を真正面から受けてるのに、彼らはなんも抵抗してこない……何故だ?


 他の面々もだんだん同じ事を思ったのか、訝しげに頭を傾けている。


「ん〜……そうだ、聴くか」

「えっ?」

「聴く……?」


 胸ポケットから黒いスマホを取り出すボクに更なる疑問を浮かべる一絆たちの前で、戦いの場だと言うのに堂々と端末を弄る。

 目的は唯一無二の親友を求めて。アイツの連絡先を交換しといて良かった。


 えーっと、滅多に電話しないから下の方にあんな。


『うぃ……だれぇ?』

「───ドミィ、寝惚けてるな。取り敢えずおまえ今どこにいる」

『んぁい? ……闇ちゃん? え、何。研究室だけど……なに、なんかあったの?』

「ボクの視界ジャックして解析。大至急」

『ぅわぁ、でたでた。闇ちゃんの無茶ぶりシリーズ。まぁやるけどさぁ……ん〜、ちょっと待ってて?』

「五秒ね、五秒。五秒待ってやる」

 

 寝起きだった悦を電話で叩き起して、ボクの疑問を解消させる手伝いを命じる。どうせ暇で寝てるんだから、昔みたいにボクのサポートしてればいいの。

 通話は繋げたまま戦況を眺める。うーん、まだかなまだかな〜。


「ドミィって誰だ?」

「悦ちゃん。前世の名前がドミナって言うらしくて、その時の愛称で呼んだんだよ……ね?」

「うん」

「……ふーん」

「今世より前世の名前呼んだ方が早く起きんだよ」

「なんか……前世持ちってのも大変だな……」

「いつかキミもそうなるかもね?」

「記憶の持ち越しはちょっとイヤだな。心機一転して人生やり直してぇ」

「わかる〜」


 訝しげな様子の一絆くんに二人で軽く説明を入れて時間を待つ。ドミィの魔法ならボクの視界と接続するのなんて朝飯前なんだから、早く繋げ欲しい。

 ……おっ? 来たな。右目に生じた違和感から、瞳がドミィと繋がった確信を得る。


『でけたよ〜……おっおっおっ? ゴーレムじゃん』

「問題なのは攻撃表示のなさ。なにか悪さしてないか魔眼で解析して」

『んん、りょーかい。二秒待ってて』


 キュインと右目から音が鳴り、瞳の奥にいる魔女がボクの視界に写る全てに解析をかける。


『───ん、でけたよ』

「ご苦労」

「はっや……」

「ホントに二秒……高難度魔法をたった二秒で……」

「すげぇんだな……」


 感嘆とした声を上げる二人を他所に、解析の結果を聴く。


『────…だね』

「……あ〜、道理で。ボクじゃ見えなかったわけだ。んでもってあっちも認識できてない、と……」

『どうするー?』

「ん〜……どうしようかな」

 

 周りの有象無象には聴こえないよう、小さな小さな声で疑問の正体を告げた悦の言葉に、成程と納得するボク。

 あーほんと、多種多様にも程があると思う。

 わかりやすく言おう。一絆くん案件だ。あまりにも同化していたわからなかったが……彼の手札、もとい仲間を増やす為にも生かすべきか否か……

 ……うん、取り敢えず回収してから決めよう。


 ってなわけで、このままだと普通に勝ってなんにも成長に繋がらないので、土の中に引きこもってる元凶ちゃんとゴーレムたちを意味もなく暴走させるぞ☆

 倫理? そんなん宝物庫に吸われたわ。


 どーせ? 日葵も物足りないなぁ〜とか考えてんのは見なくてもわかるので、やっちゃってもいいでしょ。

 一絆くんの後ろに周り視線を切って、一つ溜息。


 他の面々には気付かれないよう、慎重に───…


「───(まじな)え、【悪性因子(キッスキッズ)】」


 ふぅ、と静かに息を吹く。吐息と混じって外界へと飛ぶのは、闇色に輝く魔王の粒子。あらゆる方法で、様々な過程を持って肉体に取り込まれ、時間をかけずに対象を終わらせる(・・・・・)月の呪い。

 精神汚染による狂化、つまり暴走を引き起こす。

 これも転生特典……の範疇で良いのかな、これ。

 どちらかと言うと種族特性とかそんな感じになるんだけど…… ま、特典の一つでいいか。とりまやべーい力を隠し持ってるって思ってくれればいい。

 ……【否定虚法(ネガ・オーダー)】といい持ちすぎだって?

 まだあと二つあるよ。安心して、前言った顔と脳に関するヤツだから。


 加えて今回は無言による【否定虚法(ネガ・オーダー)】を同時運用、皆の認識をちょっとズラしてボクの行動に気付けないようにしている。あと【悪性因子(キッスキッズ)】が見えないように細工もした。

 これで完全犯罪! 流石邪神の転生特典! クソが。


 虚空を揺蕩う闇色の粒子は自然に吹いた風に乗り、何も知らない一絆くんの横を通り過、ぎ………


「……ん? なんだ…あれ………」


 うっそだろキミ。なんで見えてんのなんでなんで?


 は???


「どったのかーくん」

「あ、あれってなんのこと? お化け?」

「えっ? いや、あの紫の……………………は?」

「ホントにどうし……あ〜やっば」

「うわーお」


 白々しく聞いたり話に乗ったり驚いたりして適当に誤魔化す。振り向かれて「おまえやった?」とか聞かれてたら終わってた。改変すれば平気だけど……

 ……なんで効いてないんだ? 無詠唱だったから?

 いやでも……うーん。


 ま、今はゴーレムだゴーレム。なんで皆で絶句したのかと言うと、今まで緩慢な動きしかしてこなかったゴーレムが大振りな攻撃を仕掛けてきたからだ。

 狂ったように、近付く者に殴り掛かるゴーレム達。

 その原因はもちろんボク。

 体表面に付着した因子が内部にまで溶け込み侵食、からのゴーレムたちの主にまで干渉して狂わせた……というのが暴走までのプロセスである。

 概念的にも繋がってる時点で干渉対象、アウトだ。


 ───ま、死にかけ“精霊”にはもっと瀕死になってもらうとして。


「突然何が……!? くっ、お前たち、被害が出る前に破壊するんだ!」

「了解!」

「ッス!」


 混乱の中、咄嗟の判断でゴーレムの破壊を選択した部長の判断力は大変素晴らしい。ここで様子見を選ぶと高速道路崩壊によるバッシングの嵐に遭います。

 現実にはセーブもリセットもないけど、時に慎重に時には大胆に、動きを変えるのは非常に大切だ。

 自分の心情だって、時には曲げるべきなのだから。


 ……なんか哲学的な話になってんな。やめやめ。 


 にしても、最初はただの天然物ゴーレムだと思ってたけど……精霊印の天然物だったとは。前言撤回だ。ドミィに見てもらわなければ無限ゴーレム生成地獄が無意味に続いていた。

 どちらにとっても地獄の、ね。


『───!』

「ぐおっ……やっぱ見た目通り重てェ……! 殴っても殴ってもキリがねェ……!」

「動きの変化……うーん、わからんでござる」

「爆発!? 爆発させたほーがいいのです!?」

「それはやめよう?」


 怒鳴ったり叫んだり窘めたり、今年の一年生も例に漏れず賑やかでなによりだ。そう場違いな事を考えながら、今後の展開を広げていく。

 暴走しているといっても、殴ってくるだけの単調な攻撃しかしてこないゴーレムだ。皇国でも首位にいる王来山異能部が敗北する可能性は万が一にもありえない。

 怪我のリスクは拭えないが……まぁ、平気だろう。

 戦闘の傍らでゴーレム暴走の原因を突き止めようと思考を回し続ける部長たちは本当に素晴らしい同時並行能力をお持ちだと思う。

 考えたところで答えが見つからなかったとしても、だ。


 ……日葵、こっち見んな。ジト目やめろ。やめて?


「あーっもう、数多すぎッス! よく見りゃあの穴から湧いて出て来てんじゃないッスか!」

「わっ、ホントだ。向こうに何かいるのかな……」

「多分そうでしょ。誰か行けば?」

「向こう側がどんなモノなのか、その一切が不明だ。下手すれば死人が出るぞ……」


 開けっぱの《洞哭門(アビスゲート)》から絶え間なく送られてくるゴーレムたちの増援に、新人も年長者も全員が困った様子で戦っている。

 その門に関してはボク無実なんで許して欲しい。

 凶暴化の原因はボクだけど。多分そのせいで無限に湧き出て来てるけど。ボクのせいじゃないよね……?

 そこ、余計なやらかしって言うな。

 これも異能部強化っていう大義名分の為にも必要な工程なんだ。皆には諦めて頑張って欲しい。


 あ、門への突入はして欲しいな。奥にいるから。


『考え事中悪いが、玲華、緊急任務だ』

「っ、なに?」

『特務局に報告を入れたところ、至急ゴーレム暴走の原因を解明せよ……とのことだ』

「……成程、逃げ道は潰されたわけか」


 と、思っていたら。なんと特務局が丁度よくうちに御命令してくれた。やったぜ。

 まぁ多分もっと上、円卓会の命令なんだろうけど。

 渋々上の命令を受け入れた部長は、誰を向こう側に突入させるか思考を回し始める。


 ……うん、ここで情報一つ落としておくか。


「───ぶちょー」

「なんだ、悪いが今急いで」

「多分精霊案件。領域外の魔女に遠隔解析させてそう言われたんだけど……ぶちょー、どうする?」

「なにっ───…そうか、わかった」


 良かった、改変せずとも情報を受け入れてくれた。これでクソザコだけど精霊に対して一定の強みを持つ一絆くんを送り込めるぞ!

 多分護衛で部長と日葵も連れてかれて……


「───よし、琴晴くん! 洞月くん! 望橋くん!」

「はーい!?」

「……ぇ、はい?」

「なんすか!?」

「これより望橋くんを筆頭に、私たち三人で彼を守りながら門の向こう側に突入する! 悪いが文句は受け入れない! すぐに突入できるよう準備してくれ!」

「うっす! ……ぇ、アレ入れんの!?」

「了解です! 大丈夫、絶対に死なせはしないから!」

「やっぱ危ねーところなんだな!?」


 そういうことになった。でもちょっと待とうぜ?


「なんでボクも? は、嘘でしょ? このまま悠々自適に眺めとくつもりだったんだけど???」

『情報提供者だからじゃないの』

「余計な事ってするもんじゃないね」

『今更かーい。あ、オルくんそこにジェンガされてるフラスコ取って〜』

『……何故(やつかれ)はここにいるんだ……?』

「……? ツッコムのやめとこ」


 なんでターバン蠍死徒くんがいるんですかねぇ……

 異能結社で幹部やってる人連れてかないでほしいんですけど……


 あ、ボクが言えることじゃなかったね。あはは。


「道を頼む!」

「ん───もう、できてる」

「……仕事早っ」

「以心伝心ってやつ?」


 準備といっても心構え程度で、部長を先頭に奥へと突き進む。有象無象は弥勒先輩が一気に切り裂き、残りは他の部員たちが片付けて道を作ってくれた。

 雫ちゃんと姫叶くんは突入部隊に選んで貰えなくて不貞腐れてるかなと思ったけど、そんな事なかった。普通にがんばえーって言ってきやがった。

 アレは死地に行かなくて良かったの顔だった。

 後で必ず送ってやるからな戦場のど真ん中に……!


 と、もう《洞哭門(アビスゲート)》の目の前に来た。突入だ。


 ───久しぶりの、愛しき我が異世界(エーテル)へ。


「行くぞ!!!」


 そうしてボクたちは、虚空に空いた異世界の穴へと飛び込んでいった───…


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