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01-03:空想狩りにいこーよ!

スマホで執筆していますので、個人的にはスマホでの閲覧を推奨致します。

見やすいかな〜って思います。


2023/07/08訂正:

 勇者スキルの名称が設定資料と違っていたので修正いたしました。

 設定編集で気付くのに遅れた…許せ、日葵…


 新日本アルカナ皇国の首都───魔都アルカナは、21の区に仕切り分けされた絶海の孤島である。

 魔法震災の影響で四方を海に囲まれ、旧都市や街の名残は廃墟の形となって水面から顔を覗かせている。

 三百年以上経っても諸々の廃墟が残っているのは、空想たちが現れる《門》から放出される“魔素”という不思議粒子が関係しているのだとか。

 まぁ、詳しいことは専門家にでも聞いて欲しい。


「真宵ちゃん真宵ちゃん。任務場所isどこ」

「6区の自然公園」

「……遠い! わかってたけど遠いよ!」


 学外に向けて発進する、学院支給のバスの車内。

 日葵ちゃんの悲痛な叫びに耳を傾けながら、ボクは音楽プレイヤーを耳に嵌め、あらゆる雑音を遮断。

 別に会話したくないとかではない。

 考え事の邪魔になるから黙れ、という行動表示だ。その意味を理解した日葵ちゃんは、頬をぷく〜っと膨らませて、わかりやすく不満を体現している。

 ……無視だ無視。構ったら相手の思うつぼだ。


 さて。なんでボクたち二人が……いや、無言で窓越しに夕焼けを眺めている弥勒先輩を含めた三人が、帰る訳でもなく、こんなバスの中で揺られているのか。

 その理由は単純明快───異能部の活動である。


 十分前までは、部室棟に備え付けられている異能部専用のトレーニングルームで運動するか、って話が上がっていた。

 だが、廻先輩の占星術っぽい異能が、空想生物の出現箇所を予知。それが三十二分後の話だと判明。

 そんなこんなで、我々は急遽出動したのである。

 はー、もっとゆとりを持つべきだろう。なにもかもが急すぎる。

 というか魔物来んなよ。大人しくしてろ。


 廻先輩の異能でわかっているのは、今回の《門》の出現箇所は二つで、規模までは不明だということ。

 ボクたち三人が向かう6区にも、部長と遅れて参加合流した雫ちゃんが行った14区にも空想が現れる。しかも、群れを成して出現する可能性もあるとか。

 たった一回の使用でここまで未来を予知するとか、廻先輩ってすごくね?

 流石は魔都の生命線と称された男である。


 補足だが、6区は自然公園を中心とした地区で、かなりの頻度で空想が現れる。14区は海に面した住宅街で、傍にある砂浜は夏場賑わう海浜浴場だ。

 学院があるのは17区。というか区全域が学院領。


「とーいよー走った方がはーやーい〜」

「イヤホンとんな……軽率に人間やめてる発言はしない方が身のためだよ」


 愚痴る日葵の言う通り、ぶっちゃけバス使うよりも自分の足で走った方が速く済む。純粋な身体能力で。

 でも、それ使うと人間卒業認定されるからダメ。

 下手に勘ぐられるだろ。日葵は勇者っていうネームバリューで、ボクは魔王っていう人類の敵対種っていう意味の目線で、厄介なことになるのは確実だ。


 異能を使ってなら説明着くから別に良いんだけど。


 あー、本当に面倒臭い。転生特典による概念干渉である程度の誤魔化しは効いているけど、それも完璧ではないからね。

 知っちゃった有象無象を関係者ごとぶち殺して情報封鎖するのも楽じゃないんだよ。最近は自陣に引き込む事を覚えたから、事なきを得てるけど。

 ボク偉くね? 無駄に血を出さぬこの努力……!


「どっちにしろアウトだと思う(ボソッ)」

「ボクが正義だ」

「悪役のセリフぅ〜」


 さりげなくボクの思考を読み取るな。そんなスキル持ってないだろ。いや、異能か。

 【読心】の異能力持ち、居たら言って欲しい。

 プライバシーの問題云々で、真っ先にキミを殺しに行くから。


「全力で止めるね」

「だから心読むな」


 やっぱり面倒だなぁ、この勇者! なんで転生してるんだよ! するならボクが死んだ後に転生しろや!

 勇者と一緒に連んでいるってバレたくねぇぞボク!


「ん……二人とも、何の話?」

「「え、なんも話してないですよ」」

「ん? 気の所為…?」

「「気の所為ですよ先輩♡」」


 ボクたちの会話に興味を持って、夕焼けからこっちに視線を寄越した弥勒先輩を、全力の媚びで完封。

 勇者とか魔王としての威厳とか尊厳とか関係ねぇ。

 ……弥勒先輩には、勘が鋭い時と緩い時がある。

 だから、頭よわよわ女の子になってでも、ボクらは身バレを回避するぞ。


 ……これ、男にやった方が効果あるよな、絶対。


「あっ、そろそろ着くみたいだよ」

「ん。わかった……二人とも、準備できてる?」

「大丈夫です」

「へーきです! ……あ、でも先に御手洗に行っても良いですか?」

「ダメです」

「ん。ダメ」

「えぇ!?」


 元とはいえ勇者なんだから、それぐらい耐えろや。




◆◇◆◇◆




 6区の自然公園。魔都アルカナ最大規模、花と緑で美しく彩られた都民の憩いの場。

 任務でここを訪れたボクたち三人……トイレに駆け込んで消えた日葵を置いて進むボクと弥勒先輩の二人は、廻先輩が予知した《門》の発現場所に向かう。

 場所は遊具が多く点在する広場。

 そしてボクは、めっちゃ長いローラーがついている滑り台の上に登って黄昏る。

 バカは高いところが好きとかではない。


 ついでだが、ここの職員や遊びに来ていた親子たちには、既に避難警報を出しているので一人もいない。

 もしかしたら、避難命令を無視してる馬鹿か阿呆がいるかもしれないけど……

 その時はボク、助けません。

 これでも魔王なので! 元がつくけど。きっと日葵か弥勒先輩が助ける動きをする筈だ。


『───お前たち、そろそろだ』

「ん。準備完了」

「はーい。了解です廻先輩」


 そんな時、廻先輩の声が通信機越しに聞こえた。

 彼は非戦闘員だから、部室でオペレーターをこなしたり、各署と連携を取る主軸になったりと、異能部のサポートに精を出している。

 廻先輩が前線に出るのはただの自殺行為である。本人は歯痒い思いをしているようだが、気にするだけ無駄だとボクは思う。


『……琴晴はどうした』

「下半身が死にそうらしいです」

「ん。トイレ」

『お前たちはオブラートという言葉を知らんのか』


 事実を言ったまでなのに。というか、任務前に片付けなかった日葵が全面的に悪いでしょこれ。

 なら、オブラートに包む必要なんてないでしょ!


「わ〜、お待たせしましたー。ごめんなさーい」


 あ、問題児来た。

 滑り台の上で黄昏れるのをやめたボクは、高台から飛び降りて、地面に綺麗に着地する。

 そして、振り向きざまに日葵の方を見る。笑顔だ。


「大?」

「やめなよ女の子でしょ」

「るっせぇ」


 満面の笑みでトイレから出たと思うと、ね?

 ちょっーとそういう風に思っただけだから……別に他意はない。他意はないよ?


〜〜〜♪ 〜〜〜♪ 〜〜〜♪


 そんな時に鳴り響く、夕焼け放送の音色。前々世のとほぼ変わりない音を聴きながら、時を待つ。

 ……でもさ、もう夕焼け放送鳴ったよ? 異能者といえども学生に活動させる時間帯じゃないでしょ。

 異能対策局の先輩方はなにしてるんです?

 そんなに忙しいんですか〜? いやまぁ殉職率の高さは知ってますけどもね。


「にしても……ホントに便利ですね、廻先輩の異能」

『褒め言葉は素直に受け取っておこう。無論、完璧な代物ではないがな』

「ひねくれてんなぁ……」


 廻先輩の異能で「空想の出現」が予測された場所に出向き、魔物を倒す為にボクたちは出待ちする。

 それがボクらのスタイル。基本は出待ちだ。空想は危険なヤツらでいっぱいだからね。遅れて出撃するよりも、予測して出待ちした方が治安的にも良いのだ。


 副部長万歳。貢いででも生かすわ。マジ重要人物。

 今は、が着くけど。


 ……そして、程なくして戦の時は来る。


『───反応確認。来るぞ!』


 部室にこもって司令塔している廻先輩の声と共に、オレンジ色の空に亀裂が走る。

 パリパリと空間が割れ、真っ白な空洞が開く。

 悲鳴のような音が鳴り、辺りに叫哭が響き渡る。


 門の出現と共に、公園一帯に空想の力が溢れ出す。そうして現れたのは───


「「「「───ギャッ!ギャギャッギャッ!」」」」


「ん。《洞哭門(アビスゲート)》確認。いっぱい出た」

「うわぁ、大量だ」

「ご、ゴブリンの集団!? 貞操の危機!」


 馬鹿言ってる純潔勇者は置いといて。

 現れたのは、最近よく出現しては巷を騒がし、先刻の授業で題材にもされていた空想。


 緑色の肌と尖った耳、汚い布切れを下半身に巻いた空想の小鬼たち。空想の代表格、ゴブリン。

 ……いや、数多くない? 30はいるっぽいよ?


『っ、数は52! 予想以上だな……なにっ!? 玲華の所にはオーガの群れだと!? 予想以上の数だな!?』

「いやホント群れすぎでしょ」


 数え間違えた。52でした。いやー、すごい数。

 廻先輩の予測で群れによる出現はわかってたけど、まさかの大群。あまり見ない規模だ。廻先輩の予測が外れたわけじゃはいけど、流石にこれは酷い。

 てか部長の所はオーガの群れか。普通ならヤバくねとか思うんだけど、あの姉がいるなら大丈夫だろう。

 ……こっち楽すぎない?

 人数をあっちに割くべきだったね、これは。


「んー、閉じるの早いな」

「……あの時を思い出すね」

「やめろバカ」


 《洞哭門(アビスゲート)》───空想たちが使う門は、勝手に閉じたみたいだから、援軍増軍はない様子。あの門って空想たちでも意図的に開けられる代物じゃないしね。

 突然開いて、魔物を誘い込み、連れてくる穴だし。


 ……それはそれとして多すぎだよ自重しろよ!

 こんな時間帯にボクたちを働かせやがって! 完全にブラック企業だよ! 給料も出るし完全に企業だ! 日によっては早朝とか深夜帯も出動するんだからな!

 マジでおかしいよ異能部。ブラック部活動じゃん。

 これから裏の仕事もあるっていうのに……!


 マジで過労死しちゃう……それだけはイヤだ……!


 ……さて、愚痴を零すのもここまで。

 まぁ、この三人がいる時点で、ね。どっちにしろ、蹂躙激にしかならないんだろうな。


『……仕方ない。三人とも、任せた』

「ん。問題皆無。───発動、【死之狩鎌(デスサイズ)】」

「はーい。52名様いらっしゃーい」

「バッチコーイ!」


 廻先輩の命令を受け、ボクらは駆け出す。

 先手を打ったのは弥勒先輩。異能を発動した瞬間、彼女の右手に闇色の粒子が集まり、その手に死神を彷彿とさせる大鎌を顕現させる。

 大鎌を出現させる異能───【死之狩鎌(デスサイズ)】。それが八十谷弥勒の異能。超限定的な物質形成の一種だ。

 いつも不思議ちゃんな弥勒先輩は、細身の体に見合わぬ大鎌を易々と振り回して、ゴブリンたちの群れに突撃していく。


「ギャッ!!」

「ん。近所迷惑。黙って」

「ギャッー!?」


 弥勒先輩の死神の鎌の異能は、空気中に漂う新世界の謎粒子、魔素という物質を材料としている。強度も鋭さも先輩の意思一つで決まるし、魔素がある場所ではほぼ確実に強襲が成功する異能だ。

 いつでもどこでも武器錬成が可能とか、チートだ。

 要人暗殺し放題。ぶっちゃけ、他の異能でもそれが可能となるのが、異能共生社会の闇である。

 異能犯罪者が多い理由がよくわかるよ。

 ボクも人のこと言えないけど。私的利用は怖いね。


「ん。遅い。雑兵ばかり」

「ゴッ……!?」


 うーん、これぞ正しく蹂躙だ。ゴブリンたちも短刀とか槍とかで応戦するけど、全部錆びてんだよなぁ。

 なんで表に出てきたんだよ。大人しく“界域”で集落してればいいものを……


 弥勒先輩の存在一つで、こういう数の暴力は機能しなくなるからな。鎌の一振りで首パーンだし。

 単純な物理攻撃異能って爽快感がありそうだよね。

 ボクの異能はいざ分類するとなると、特殊型とかになるだろうからなぁ……


「ッ───ギャギャッ!」

「はいはい、とりま───死ね、<暗寧(あんねい)の一刺し>」

「グギっ、!?」


 ん、どうやら余所見しすぎたらしい。槍持ちのゴブリンが1匹、背後から不意打ちしてきた。

 けどまぁ無意味。近付いた瞬間、ゴブリンの影から極太の黒い棘が飛び出て、逆に脳天を貫いた。いや、脳天どころか頭を吹き飛ばした。貫通しすぎぃ。

 ついでとばかりに群がってきた小鬼共も影で一掃。

 ボクの足元から伸びて、形を持った影の鞭を、横に振るって薙ぎ払う。


「くふっ、くふふ……ばぁーか。ボクの闇に、キミら如きが立ち向かえるわけがないだろぉ?

 ほらほらほら〜!! 逃げ切れるかなぁー!!」


 蹂躙楽しい。テンション上がる〜↑↑↑

 これがボクの異能【黒哭蝕絵(ドールアート)】───魔王だった時から、今世でもボクと共にある闇属性のスキル。

 影を操り、物質化させ、拡げ、支配する。

 自分の影はもちろんのこと、視認した影ならば、どんな影でも支配対象だ。建物も他人の影も、この世の影は全て、等しくボクのものである。

 異能部や特務局、国とかに公表報告している能力の全体像はこれだけだ。スキルの真髄や真価は、言わない方がボクの安全に繋がる。

 国が異能名判別の魔導具なんて持っていなければ、名前ごと違うものに変えてたのにね。おかげで、魔王軍関係者が異能の名称を知った瞬間、洞月真宵が私だと勘づく者が増える確率がひっじょーに高くなった。

 本当に、ままならないものだ。めんどくせぇ。


 でもさ、異能複数持ちを想定していない設計なのはいただけないよね。

 ボクらにとっては有利に働いたから良いけども。


「───さて、ボクの方に来てたのはこれで終わり。日葵ちゃんはどうなってるかなぁ〜、と……」


 簡単に、呆気な〜く、ゴブリンとかいう低級魔族を滅殺一掃したボクは、日葵の方に目を向ける。

 そこに広がっていたのは、光が舞う戦撃だった。


 普段の様子とは全く違う日葵の姿。静かで冷たい、かつてを彷彿とさせる雰囲気の日葵がいた。

 あぁ、やっぱり。その勇姿がキミには一番似合う。

 使っている異能の一点を除けば、ね。


「《───♪》《────♪》……はい、おしまい」

「ィギッ」

「ギッ……!?」


 日葵はゴブリン達の前で、地球には無い固有言語を用いた唄を口ずさむ。

 美しい音色と共に、光が言霊に乗って空を舞う。

 やがて、光は日葵の手に収束して、一本の輝く剣へと変貌する。


 刀身も柄も、全てが白く眩い光の剣。美しき天使の唄によって世に現れる、不思議な光の武器。

 今世、転生した日葵が持つ異能の力の一端。

 軽く振るわれた一閃が、日葵の歌を聞き入っていたゴブリン七体を呆気なく切り裂いた。

 小鬼を討伐し、天使の光剣は閃光を伴って消える。

 そして、戦いを終えた余韻を楽しむ事無く、日葵はボクの方を振り向き、にぱっと可愛らしく微笑んだ。

 うん、返して。さっきまでのイケメンを返して。


「見てみて、勝ったよ私!」

「負ける方が不自然だよ」

「えぇ〜……そこは褒めようよ。私、褒められたら褒められた分だけ伸びるんだよ?」

「知らね」


 前世の日葵は、最強の勇者と称された根源となる、彼女を勇者たらしめたスキルを保有していた。

 その名も【勇往旭心(ブレイブハート)】───世界を救う導き手へと少女を変貌させた、聖女神の祝福。

 天を掴み、心を強くする、一種の兵器化スキル。

 それが日葵が持つ本来の異能……なのだが。


 この唄は違う。また別の、違う異能による力。


 【天使言語(アンプ・エルゼ)】───かつてボクら二人が生きていた異世界にて、たった一人を除いて全滅した天使たちが使っていた固有言語を用いて、光を操る唄の能力。

 光を掌握して様々な形状種類の武器を作り出す力。

 それだけではなく、どんな怪我でも大抵は治せる治癒能力と、真っ白な羽を生やして空を飛べる飛行能力も有するという、要所要所で重宝される異能。


 この能力が日葵が表向き持っている事となっている後付けの異能である。

 そう、今世から持つようになった異能だ。

 個人的には気に食わない異能です。諸事情の問題でボクが嫌いになりかけている。唾棄する程ではない。

 なんかこう、羽を毟りたくなる衝動に駆られる。


 前述した異能名判別の奴は、この【天使言語(アンプ・エルゼ)】しか読み取れずに記録しやがったポンコツだ。使えん。

 お陰で隠さなきゃいけなくなった。

 異能の複数持ちなんて、前例ないみたいだからね。人間というモノは、新しいモノを忌避する傾向があるから、こういった配慮が必要なのである。


 日葵が勇者バレしない要因になったから良いけど。

 万事オーライ。あちらのミスで、こちらは合法的に隠れるからもう気にしてない。


 ボク達を見つける事は不可能なのだよ。ふふん。


「でもまぁ……よく使えこなせるよね、それ」

「んーそうだね〜。よく、間近で聞いてたのもあるんじゃないかな? あとは歌のセンスだね」

「後半の方が重要そうに聞こえる。不思議」


 今は手元にない聖剣の代わりとして、光に形を与えて作った輝く剣を、光そのものを振るって戦う。

 それが今の、今世の日葵の戦い方。

 一応、【勇往旭心(ブレイブハート)】をこっそり使って、純粋な身体強化も使ってるらしい。というか、使ってないとありえない挙動を度々してるから、使ってるのだろう。

 前世の戦歴からして、日葵の脳筋っぷりが伺える。

 例えば、僅かな武装で魔王城に乗り込んであらゆる障害を無傷で単身突破したり、世界を滅ぼさんとする神を僅か数分で破滅に追いやって消し飛ばしたり……

 うん、勇者という名の生物兵器ですね、これは。

 【天使言語(アンプ・エルゼ)】のせいもあって、日葵の規格外化は止まる様子がありません。


「なんか不名誉なこと考えてない?」

「生物兵器乙」

「やめなよポンコツ女神様罵んの!」

「ん。何の話?」

「「お気になさらず♡」」

「ん……」


 全てのゴブリンを肉片に変えた弥勒先輩もこっちにやって来て、会話に混ざる。

 ……ちょっと疎外感与えちゃったかな?

 うん、無理な会話逸らしはやめよう。反省反省。


 二人で弥勒先輩とイチャついていると、廻先輩との通信が再び繋がる。

 一応、神室姉妹の方と先に会話して来たらしい。

 そこはこっちとも通信繋げようよ。


『三人ともご苦労だったな。全く、戦闘系の異能はやはり格が違うな……洞月のは置いておくとして』

「なんでボクだけハブなんです???」

『いやだって……なぁ?』

「うん」

「ん。ん……」

「なに!? なんなの!?」


 ボクが何をしたって言うんだ!?


 日葵までその反応はなんなのかなぁ? キミはある程度の詳細は知ってるから、その反応はおかしいだろ!

 はぁ……色々と聞きたいことはあるが、とにかく、廻先輩の異能による出待ち作戦は無事終了した。

 ものの数分で片付いたね。いやはや、異能部の主戦力が三人も集まってたら、こうなるのも仕方ないか。

 自惚れだけど、ボクたちってば強───あ゛ぁ?


『───なにっ!?』

「廻先輩無能説を流布すべきですね、これは」

「ん。ごみ」

「裏社会は任せろ」

『さり気なく繋がりを見せるな。…はぁ……すまん』


 一斉に廻先輩を罵る。何故ならば……


「また《洞哭門(アビスゲート)》開くとか、どうなってんだ世界」


 第二ラウンド、はっじまるよー。

 ▶かっこ使い分け

異能の名称→【】

技名→<>

現象・固有名詞→《》・“ ”

二つ名・異名→〈〉


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