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02-07:酒飲んで跳ねる話


 なんやかんやあって都祁原邸。

 荒れた公園の修復を上に頼み、望橋一絆が異能力に目覚めた事も報告して、ボクたちは帰路に着いた。

 疲れ果てた一絆くんは日葵に今も背負われている。

 なんて馬鹿力。普通逆だろ普通。口には出さないがそう思っている間に、日葵は一絆くんをソファに寝転がして、手洗いうがいをしに洗面所に移動した。

 それを横目にボクは一絆くんの寝顔を眺めている。

 うーん、気絶している間に美少女におぶってもらうとか、益々命を狙われるんじゃないかな。


 あっ、今回の事件騒動は取り敢えず落ち着いた。

 でも《洞哭門》が開いた形跡や予兆がないのに突然現れた謎の巨狼の群れに対して、異能特務局が中心になって捜査を開始してしまった。異能部は待機命令だけ出されたけど、街全体への警戒レベルを上げて日中の警邏も順次部活内容に組み込まれるようになった。

 要らん仕事増やしたわ。ごめん八割方ボクのせい。

 ま、まぁお給料増えるみたいだから、みんな泣いて喜ぶだろう。ボクは今辛くて泣いている。


 これが因果応報……?


「で、何時になったら釈明会見するの?」

「生まれてこの方、不祥事なんてしたことないけど」

「……うっそだぁ」

「ボクへの印象がどーなってるか、小一時間ほど問い詰めたい気分だよ」

「時間足りる?」

「やめよう。聞きたくもない」


 戻ってきた日葵がなんか言って来たが否定する。


 小一時間で足りない程ボクに魅力があると言われるのは悪くないが、日葵に言われるのはちょっとイヤ。

 なんか、イヤだ。そうゆう風に見られたくない。

 というか面と向かって説明紹介されるのは誰だってイヤになるだろう。ナルシストとか承認欲求が高めの人を除けば、の話になるんだろうけど。


「………んんっ……」


 話は変わるが、一絆くんの寝息は小さいらしい。

 仰向けに寝ている彼の顔はテレビ側、つまりボクの方向に向いており、その端正な顔立ちをまじまじと見ることができる。うーん、イケメンだな。

 つーか、呻きながらお口をもにゅもにゅさせるな。

 キミに対して可愛いなんて感想抱きたくなかったぞこんちくしょう。

 ……おじさん、都祁原時成にも同じこと言った記憶がなくもない。あんな側頭部にしか髪の毛がないデブに対して可愛いとか、美的センスどうなってんだ。

 ……魔王時代に人外ばっかり見たからか? それはそれでおじさんに失礼だな。


「そういや、今日もおじさん帰って来れない感じ?」

「さっき、電話で『望橋くんヨロシク』って一方的に言われて切られたよ」

「……いつか死ぬんじゃないの?」

「……うん、そうだね」


 我らが保護者は過重労働で今日も帰れないようだ。これぞ社畜。普通の、そこら辺の学院長とか校長とかはあんなふうに仕事漬けでは無いはずだ。

 過労死するよマジで。ボクより先に死ぬな。

 だから時成、教師やめなよ。


 さて、そんな彼なりの教師人生の歩みに文句を言うのは取り敢えずやめて、一絆くんの事を考えよう。

 ボクらの生活空間に土足で踏み入ることを許された彼を加えた、新しい共同生活。今までは養父を除けば女所帯だったここに、彼はどんな気持ちで過ごすことになるのだろうか。

 いやまぁほぼ強制的だったから気持ちも何も困惑が勝るか。


 ……そういや、『百合の園』には死にたくないから近付きたくないって叫んでたな。よりによってボクと日葵を目で往復しながら言ってたな?

 遺憾である。積極的に挟んで虐めてやろう。

 ぶっちゃけ、そこまで恐れるもんじゃないとボクは思うんだけどね。人が嫌がる事は積極的にやりたくなる性だから、徹底的に遊んでやろう。


「真宵ちゃーん、私たちも寝る?」

「寝ない」

「意固地だなぁ」


 掛け布団を持って誘惑するな。そもそも大きい方のソファは一絆くんに占領されてるから使えないし。

 小さい方だと抱きつく形になるからイヤだ。

 床も身体が痛くなるからイヤだ。よってキミと共に寝ることは無い。理解できた?


「できなーい♪」

「……はぁ」


 自分で言うのも何だけど、本当に聞き分けがない。

 我の強さというか、押しの強さというか。そういう面倒な所は勇者だった頃から変わりなく、今もこうしてボクを振り回している。あぁ、ほんとイヤになる。

 呆れて溜息を吐いたボクを見て、それを諦めたと見当違いの解釈をした日葵が抱き着いてくる。いや全くもって勘違いも甚だしい。やめろ。そのまま一絆くんが寝ているソファの隣で普段通りに騒いでしまえば、彼の眠りを妨げてしまのは当然のこと。

 それも忘れて、二人で乳繰り合っていれば……


「んんっ……………………………おやすみなさい」

「おはよう一絆くん! 助けて!」

「おはよ〜、助けは無いよー♪ キャッキャッ」

「あー!!!」


 パチクリと瞬いた目が一瞬だけ合ったが、寝惚けた頭で状況を瞬時に把握した彼は再び寝に入った。

 そうは問屋が卸さない。ダメです起きなさい。

 起きてボクに伸し掛るコイツをどけてくれ。頼む。さっきデモンズウルフ放ったの謝るから。


 ちょっ、こら触るなぁ!!! 色々とやだぁ!!!


「……やっぱり百合じゃねぇか」

「違う!」

「違くないでーす」

「んやー!!」

「もー、素直じゃないなぁ」

「うぜぇぇぇ」


 あらぬ誤解を受けているが、それは違う。百合って言うのは互いに恋愛感情を抱いているから成立するのであって、ボクたちにはそーゆーのは無い!

 恋や愛なんて不相応、持ち合わせは無いはずだ。

 日葵が……リエラが内心ボクをどう思っているかは知らないが、そんなものは無いはずなんだ。つまり、これはただのじゃれ合いとか、そういうものなんだ。

 ……ほんとはボクのことどう思ってるんだろ。


「? どったの?」

「いや別に」

「ふーん? ……隠し事してるおっぱいはここか!」

「やっ、おいこら!」


 ナーバスな気分は一瞬で払拭されたが、遠慮のないタッチがボクを襲う。ちょ、一絆くん見てるって!

 気不味そうにそっぽ向いてるじゃん!

 時たまチラ見してくる彼。男子の前でもお構いなく攻撃してくる日葵とボクを見ていた一絆くんは、そんな時に突然頭を抑えて唸り始めた。


「えっ、一絆くん大丈夫?」

「いや、頭痛とかではないんだ……ただ幸先が不安になっただけで」

「「なんで???」」

「なんでだろーなー」


 そんな怖がることはないだろうに。独特の危機感で未知の恐怖に怯える一絆くんには悪いけど、この家に住むことになった時点で遅かれ早かれ嫉妬の嵐が巻き起こるのは確定だと思うけど。

 もう諦めて受け入れなよ。その方が心の安寧は保たれるとボクは思うよ。


「……おはようございます」

「おはよー」

「おは。とりま綺麗にするよ来い」

「あ、はい」


 自分の状況を把握したのか、彼は素早くソファから立ち上がって挨拶してきたので軽く返す。

 んで、流石にこのまま遊んでいても意味ないからと日葵をキッチンに叩き込み、一絆くんを洗面所に案内して、手洗いうがいをさせてから風呂場に叩き込む。

 時間は五時過ぎ。夕飯にするには早すぎるから、軽めのやつで良いだろう。頼んだ日葵。


「ちょっ押すなって!?」

「ある程度は拭き取ったけど、ちゃんと自分で土汚れ洗い流しといてね」

「あ、そうか……すまん、助かる」


 脱衣される前に必要な物を手渡す。あと置いてあるボトルのどれがシャンプーでリンスでボディソープなのかもわからないだろうからそれも教える。

 来客用のバスタオルと蓮儀の部屋から盗んだ恐らく新品の着替え一式も置いておく。いやはや、我ながら準備いいなボク。ほんとは全部日葵にやらせるつもりだったけど、偶には自分で動くのも悪くない。


 色々と満足気に頷いたボクは、やることやったので颯爽とリビングに帰途した。

 いやぁ仕事した仕事した。それも善行だ。

 偶にはこーゆーのも悪くないね。と、心の中で胸を張っていたので……


「……ん? …………拭かれ、た……?」


 呆然とこっちを見る一絆くんの呟きに反応することはなかったのだった。






◆◇◆◇◆






「なぁ、ちょっといいか」

「? いいよ」

「なになにー?」


 午後6時すぎ。風呂から上がり、ボクに用意されたジャージに着替えた一絆くんは、全身から湯気を立ち昇らせている。そんな彼をリビングに招き、夕食前の軽食として日葵が作った焼きおにぎりを三人に食べていると、言いたいことを頭の中で整理し終えた一絆くんが口を開いた。

 これといって断る理由もなかったので、ボクは焼ききれず固まらなかった醤油がこびり付いた指を舐めながら、一絆くんの話を聞く態勢に入る。

 日葵も手についた米粒を啄みながら耳を傾けた。


「仕草がいちいちエrごほっごほっ、んんんっ! いやあのさ、さっき聞いたんだけど……俺の身体を拭いてくれたってマジ?」

「拭いたね?」

「拭いたよ?」

「……えっ、待ってまさか二人で……?」

「「うん」」

「…………」


 拭いたね。土とか血で汚れたままソファに寝転がすのはイヤだったから、使わないタオルで適当に拭いたよ。主に顔とか手足とか。勝手にやったのは謝る。

 ……そういや異性なんだよね。なんも考えてなかったわ。躊躇いもなく服脱がして身体拭いてたわ。


「あっあー、い、いかがわしい事はしてないよ!」

「おう、されてたら困るわ」


 頬を赤らめて否定する日葵だが、キミは嬉々としてタオルゴシゴシしてたよね?

 なに仕方なかった感出してんの?

 ふっつーに「懐かしいなぁ」とか「おぉ〜」とか感嘆としながら拭いてましたよね? 勇者時代に同じことやってただろ絶対。


 やっぱり日葵は純情なんかじゃなかったんや。


 でもボクは正直に言うよ。


「腹筋、もうちょい鍛えた方が良いと思う」

「おめーはなんで堂々としてんだよ」

「見慣れてるから……」

「見慣れてるから???」


 ボクの見慣れてる発言に宇宙を背負っているところ悪いが、これから日常茶飯事になると予測されるので諦めて欲しい。怪我なんて当たり前だと思うよ?

 あと、こんな美少女に拭かれてるんだ。役得だって思いなよ。


「確かに腹筋、それなりに良かったね。鍛えたの?」

「お、おう……って捲るな! やめろ!」

「ぶー。真宵ちゃんばっかりずるいじゃん! 私にも見せてよ!」

「それ俺が不公平だよな!?」

「……なるほど?」

「いや、やめろやめろ捲るな脱ぐなやめろ!!」


 今は干してある学生服をペラっと捲って見た彼のお腹は、可もなく不可もなくって感じの割れ方をしているお腹だった。きっと日頃理由もなく筋トレしてたんだろうなって感じの腹筋だった。

 ここで補足だがボクと日葵には目に見える腹筋はない。個人的にない割れてない方が好きなので。見栄え的にも割れてない方が可愛いくない?

 ってボクは思うわけですよ。筋肉女子にはならぬ。


 そして、私も見たいとせっついていた日葵は、何をとち狂ったのか自分もお腹を晒そうとして一絆くんを困らせていた。アホなのかな、まったく。

 でも、これで一絆くんの日葵=天使だという洗脳は解けただろう。状況証拠という勘違いで、変態で脳筋でバーサーカーな日葵を正しい目で見るがいい。


 そんな風に、端から見たら痴話喧嘩にしか見えない二人の騒ぎを無視して、ボクはこっ〜そりと冷蔵庫の上段を漁っていた。具体的に言うと飲み物コーナー。

 日葵の意識が一絆くんに向いている内に、ね。


 最近、色々あって飲むタイミングが無かったんだ。賞味期限が切れるなんて悲劇はそうそう無いだろうが万が一を考えて呑まねばなるまい。

 それに、これ以上冷蔵庫の肥やしにするのは絶対に阻止せねばはるまい。ボクの体内で永久循環するのは許すがそれ以外は許してはならない。

 故にこれは私欲ではない。エコっぽい活動なのだ。


 ってなわけでお酒お酒……っと、あれ? ここか?


「ん? ……まーよいちゃーん? 禁酒の約束は?」


 ちっ、勘づかれたか。早いな。

 音を立ててたのが悪かったのか、そも日葵の嗅覚が異常なのか。憶測を立てるのも億劫だが、取り敢えずコイツがボクの健康を豊かなにする国事行為を邪魔しようとしていることだけは確かである。


 魔王の行動を咎めるとか、頭勇者か?


「はい没収」

「あああ゛〜〜!!」

「未成年飲酒……」


 二日ぶりの缶ビールは無慈悲にも日葵の手に渡り、ボクの手は虚空を掴む。なんてヤツだ。しかもボクかは奪っておいて笑顔だと……盗人猛々しいヤツめ……

 非難する目で日葵を見れば、一絆くんまでもがボクだけを責めるように見てきた。


「そっ……そんなに睨まなくても……いいじゃん」

「可愛こぶったってダメだぞ」

「もう一絆くんが真宵ちゃんの扱いに慣れてる……」


 ちょっと目をうるうるさせたのにこれだよ。

 心がないのかコイツらは。冷たい一言を告げながらボクを冷蔵庫から遠ざけるんじゃないよ。

 両手で腕を掴むな。連行すな。ソファに座らすな。


「はーなーせっ!」

「そのまま捕まえといてー」

「おーう」

「おまっ、キミは遠慮ってのを知らないのか!? まだ出会って初日だぞ!?」

「知らねぇな」

「断言しやがったコイツぅぅぅ!!」

「ほんとに手慣れてる……」


 そのまま一絆くんの横に強制的に座らされ、両腕を封じられたまま身動きが取れなくなってしまった。

 んぅ……足をじたばたさせることしかできない。

 困った。しかも正面向くように座らせるんじゃなくて、横を向くように座らされてるから、一絆くんの横顔と身体しか見えないんだよね。


 ……そのアホ毛、引き抜いたろかな。


「うおっ、なんな寒気が……」

「かーずきくーん。ボクは大丈夫だから呑ませて〜」

「ダメだろ。俺にも良識ってのはあるぞ」

「あったのか……」

「逆になんで無いと思った?」


 うーん、しかし困った。本当に困った。

 ボクの飲酒活動にケチつけるヤツがまた一人増えてしまった。悦っちゃんぐらいだよ笑顔で呑め呑めって呑ませてくれるのは。

 日葵も雫ちゃんも姫叶も部長も副部長もライライ先生も鳥姉もおじさんも止めてくる。弥勒先輩の無関心さを見習え。多世先輩はオドオドしてるだけだけど。

 そこに一絆くんも加わってしまっては困る。

 これじゃあ堂々と呑めるタイミングが黒彼岸に居る時だけになっちゃうじゃないか。


 ボクもキミ達も、そうなったらなったで困るんじゃないかな?


「なぁ、琴晴さん」

「んー?」

「この世界でも二十歳未満は酒ダメ、だよな?」

「ダメだねー」

「ダメじゃねぇか」


 それは世界の真理。ボクには意味をなさない法だ。


 冷蔵庫の中身をガチャガチャしている音が聞こえたので振り向こうとしたけど、一絆くんに身体を引かれて彼の胸板に叩きつけられたお陰で見れなかった。

 というか男の胸。おい。咄嗟だとしてもおかしいだろ。


 自分の行動に気付いた一絆くんは、飛び跳ねたボクの拘束を解き、ソファから降りてリビングの床に着地して正座。そのまま流れるように土下座した。

 なんで?


「……すまん」

「咄嗟の行動って怖いよね」

「今それを思い知った」


 まぁ許してやろう。大して損害は無い。


 うちで使ってる洗剤ではない香り。わりと嫌いでは無い匂いだ。顔が良いヤツは体臭も悪くないのか……

 この世の理不尽を感じる。

 おじさんはそれなりに臭うのに。そんなの関係ねぇって感じでボクたちが抱きつくから消臭剤いつも常備してるから“それなり”に収まってるけど。


 加齢臭なんて些細なもんだよ。エーテルには汚臭を纏ったまま料理する邪精霊ってのもいるし。流石にブチ切れて風呂に叩き込んだけど。そして洗い方が分からないと真顔でほざくから洗ってやった記憶がある。

 懐かしい。今何やってんだろアイツ。

 この世のあらゆる負の要素を全て詰め込まれた様な陰鬱な男だったけど……


 ……心中殉死してそうなんだよなぁ、アイツ。


「ん? あっすまん。やっぱ気に障ったよな……」

「いや別に」

「えぇ???」


 感傷に浸ってただけだ。安心して一絆くん。キミは関係ないよ。

 ただ……今度、かつての配下たちの道末を探ってみようかなって思っただけさ。


 ……四天王の行方不明者二人、今どこにいんだろ。


「よーしっ! これで易々と取れない……筈!」

「ふん。ボクは負けない」

「張り合うな張り合うな。ほらマシュマロ」

「んむっ……うまー。ジャム入り好き。というかそれどっから出した?」

「俺の鞄」

「それって並行世界の、ってこと!?」

「マジか……」


 それは大事にした方が良いんじゃ無いかなって思いながら、三人で一つずつ食べて残りは鞄にしまう。

 美味しかった。ブルーベリージャムが一番好き。

 果実単体だとそこまで好みじゃないけど。これも技術の力か。


 お酒に関しては少々癪に障るが、また隙を見て強奪するとしよう。影から取り出しても良いけど、なんか負けた気分になるからそれはしない。

 絶対に日葵から取り返してみせる。


「ボクは、負けない!!!」

「そのセリフ違うとこで聞きたかったな」

「わかるよ」

「わかるな」


 ボクの扱いに意気投合してんじゃねぇよ。





◆◇◆◇◆





 それから二時間後。


「うまー」

「琴晴さーーーん!!! 洞月のヤツ、堂々と酒呑んでますー!!!」

「ふぁ!?」


 勝った。


 日葵がお風呂に入っている時、一絆くんがテレビに集中してこの世界を勉強している間の犯行。

 見事、ボクは成し遂げたのである。


 勝利の美酒は美味であった。


「うまー」

「……酔ってね?」

「酔ってるね」

「ひてー」

「はいそれ使わないの」


 朧気な思考の元、視界に入れた一絆くんに向かって右手を横にズラそうとしたが、それに気付いた日葵によって、間一髪発動前に動きを阻止される。

 危うく人が一人消えるとこだったが、まぁ無問題。

 そんなことよりお酒おいしい。

 二杯目三杯目と缶ビール一気飲みを繰り返した為、呂律はもう回らない。

 今日は記念すべき厄日だ。この家に新しい家族が、邪神の新しい被害者がやってきたのだ。祝わずしてどうするというのか。


「ごめんね一絆くん、まだ部屋用意できてないから、今日はここで寝て? 布団は敷いとくから」

「あ、助かる。ありがとう」

「うん。ちょーっと私たち二階に行くから」

「ぇあ?」

「ねんねの時間だよ」

「ぇ〜ゃだ〜。ボクまだ……ねむくない、よ?」

「お風呂も歯磨きも後でしよーねー」

「ぃあ〜」

「介護……」


 ここで問題。

 寝起きの視界に気になってる子の寝顔が至近距離にあった時の感想を述べよ。


 答え。きゅうりを見た猫みたいに跳ねる。


 跳ねた。

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