Case27「真・今明かされる衝撃の事実」
「しかし僕にはどうしても解けない謎があります。と言ってもホワイダニットを重視するマリンさんにとっては些事かもしれませんが」
「——あぁ、そうだ。私もまだわかっていない謎があるんだったわ」
「あっ、アタシも……」
きっと自分が考えている謎と彼らの謎は少しズレているかもしれない。しかしその根本は繋がっているだろう。だからまずはあちらの問題から解決するとしようか。
「僕は魔力探知の罠を設置していました。それが壊された形跡もないのに、何故モルドレッドの魔力に反応しなかったのでしょうか?」
「その疑問はもっともよ、ハウリッド。でもその地点はとうに過ぎ去っているの」
「……まあ、僕が周回遅れなのは重々承知です」
「答えを知りたければ後ろを向いて、私達の魔力を探ってみて」
何のことか頭を傾げはするが、とりあえずその通りにしたハウリッドは「あっ」と情けない声を出す。きっと彼はこう思ったはずだ。《《先程まで感じることができた二人の魔力をまるっきり感じない》》、と。それに関してはモルドレッドも思っていたはずだ。魔力を視る眼を持ちながら食糧庫に潜んでいる人を見つけられないわけがない。事実、ずっとそうやってハウリッドの目を盗んで犯行に及んでいたのだから。
しかし現実に視えていない。その事実だけが今彼らに突きつけられている。さあ、これからは種明かしの時間だ。
「私の魔力を視れない理由はこの指輪にあるわ」
「指輪……。確かに見たことのない指輪をつけてらっしゃいますね。僕はてっきり結婚でもしたのかと」
「そんな秒で結婚するかいっ! ——まあ冗談は置いといて。これは《《モルドレッドがいつも持ってるブレスレットを模して作った物よ》》」
「モルドレッドの、ブレスレット……」
「寝てる間にこっそり調べさせてもらったわ。あ、勿論外してはないから安心してね」
モルドレッドはほっと息を吐く。どうやらブレスレッドが身体から離れるのはどうしても嫌だったらしい。解析するためとはいえ借りたいなんて口に出さなくて良かった。まあそれはそれとして無断で解析はするけれど。
「これらのアクセサリーの効能はまあ、見ての通り。《《視界からハズれた瞬間から魔力的な探知をさせなくする。あるいは認識できなくなる》》よ」
まさか、という顔をしている。いい。すごくいい。これこそ謎解きの醍醐味。相手の知らない事実を突きつけ、それに驚く反応を見る。意外と簡単だけれどすごい気持ちが良い。さあこの調子でどんどん行きましょう。
——と言ってもこの先は私の疑問に近くなるけれど。
「そして私の疑問は何故モルドレッドが《《これ》》を持っていたかってことよ。その眼、私のような紛い物ではなく正しく純正の魔眼よね。貴女は一体何者?」
「——アタシは……。《《妖精と人間のハーフだ》》」
「————なっ!?」
「——ほう」
勿論ただの人間ではないことくらいはわかっていた。隠れた真実の一つや二つは真正面から受け止める覚悟はできていたが……。
——まさかまさか、妖精とはね……。
「母様が妖精で、親父が人。このブレスレットは母の形見だ」
「で、その魔眼は母からの遺伝、と」
静かに頷く。しかし本当に驚いた。何故なら妖精なんているのかどうかすら怪しいなんて言われているほどにお目にかかれない魔族だ。自分も一度だけ見かけたことがある程度。そんな存在と会って、しかも子供まで作る人間がいたなんて……。いや世界は広いというか……。
「っていうか妖精って受胎機能あったんだ……」
「——まあこの世界に生きているのですからあっても不思議ではありませんね。子を作らないのは僕の知る限り、天使といった上位存在のみだと思います」
それはそうかあ……と適当に相槌をうちながらも今は別のことを考えていた。それはハウリッドのこと。彼はモルドレッドに全てを曝け出した。その内容は知れたわけではないので詳細はわからないが、彼が信じるに値する人物だということはモルドレッドの反応を見ればわかる。もし彼が厄災戦の裏切りに関与していたとするならモルドレッドは必ず反応するはずだ。
——モルドレッドは厄災戦で家族を失ってる。暗躍していたとなれば絶対に敵意を剥き出しにしていたはず。
それがないということはハウリッドは限りなく白であると結論付けることができるはずだ。つまりは、だ。
——割と真面目にプリカエルかもね……。エイカム、大丈夫かしら。
「モルドレッドはもう遅いから寝なさい。睡眠は美容の大敵だそうですよ」
「けっ! びようとかどーでもいいけど、今日は素直にねてやる。明日以降、今日のこと忘れんじゃねぇぞ」
「えぇ、肝に銘じておきます。それではおやすみなさい」
おーうとだけ返事すると足早に食糧庫から立ち去る。もしかしたら彼女なりに思うところがあり居づらかったのかもしれない。
「——ま、事件は解決したわけだし私も宿に戻るかー」
「っとマリンさん。少しお時間よろしいですか?」
「——何? この指輪作るのかなり疲れたから早く帰って寝たいのだけれど」
「《《報酬の話を》》」
「喜んで話を聞かせていただきましょう」
「話が早くて助かります。それでは中庭の方に行っててください。少し準備しますので」
「ん、わかったわ。なるはやでお願いね」
「ははっ、承知しました。それではまた後程」
早めに休みたかったが報酬の話となれば別だ。今までの疲れも忘れてるんるんとスキップを披露してしまう二十二歳であった。




