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神の箱庭 〜氷水の魔女編〜  作者: 杯東響時
第二幕「パラダイス・ロスト」
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Case22「たまには悪くない」

 勉強、夕食と済ませた後には男女交代制でお風呂時間だ。いつもは軽くシャワーで済ませるところだが、子供達が今日は湯舟に浸かりたいと言うのでそれに付き合うことに。個人的には子供なんだし男の子も一緒でいいとは思っていたが、各所から批判が来たのでやめることにした。


「……マリン先生、おむねおおきい……」

「えっ、あ、あぁ。そうねー……。確かに昔から発育は良かった方かしら?」


 唐突に話しかけてきたのはオリヴィア。子供達の中では比較的身長の高い彼女は当時の自分と比べるとやや控えめ、といった具合か。確かに昔から周りと比べて大きいという自覚はあったが、特に気にしたこともない。少し気にし始めたのはきっと《《彼》》と出会った頃からだったろうか。


「どうやったら大きくなるの?」

「——————」

「なんだオリヴィア知らねぇのか?」


 実のところ知らない。特別なことなんてしてなかったし、魔法の修行に明け暮れる毎日だったから気にしてもいなかった。そんなことを考えていると横からモルドレッドがニヤリ顔で割ってくる。


「《《もむんだぜ》》」

「——なんと」

「えっ、ええっ!? もむと大きくなるの……? つまりマリン先生はたくさん——」

「や。やや。ややや! 違う、違うからっ! 別にそんなことしてないってば!」

「すきなひとにもんでもらうともっと大きくなるんだってさ」

「すすすすきなひと!?」


 年頃の女の子はこんなにもませているものかと頭を抱えた。一見ガサツで男勝りであるモルドレッドでさえこれなのだから、多分これが今の常識。


 ——(ワタシ)の頃は……。


 と思い出そうとしたところで子供の頃に同年代の子と遊んだとか接したとか、そういう記憶があまりなかったことに気付く。自分には魔法の才能があったため周りにいたのは常に年上の人間だった。そんな自分が今の子供はませているなどと説く道理はないのである。


 ——だからかしら。同年代である彼に惹かれたのは。


 自分はもう既に大人で、同年代の子と遊ぶような《《らしさ》》は得られないけれど。この子達には。今生きる子供達にはせめて元気に笑顔で友達と共に過ごせる日々を大切にしてほしいと思う。


 とは言っても現状少なくともこの子達についてはあまり心配いらなそうである。自身の力をつけるだけでなく、こうやってわいわいと楽しく話せているのだから。なに、そうあってほしいと願ったのは何もここにいる女魔法使いだけではないという話。


「——ふふっ、揉んで大きくなるかは知らないけれど、沢山食べて、沢山動けば自然と身体は出来ていくわ」

「ホント!? じゃあわたしがんばる!」

「——————」

「さ、そろそろ交代の時間だからあがりましょう」

「今日はマリン先生はいつまでいるの?」

「んー……。まあ明日の朝まではいるでしょうね。多分(カレ)が帰ってくるのもそれくらいだろうから」


 わーい! じゃあ一緒に寝よー! とはしゃぐ子供達。お風呂はダメでも寝るときくらい男子同伴は許してくれるかもしれない。この施設は子供をどれだけ受け入れてもよいようにベッドではなく、敷布団を採用している。普段から一緒なら自分一人混ざろうが関係ないだろう。というか混ざる。確定。だって一人は寂しいもの!


 マリン・ブリテンウィッカ、二十二歳。氷水の魔女と呼ばれたこの女は、ようやっと人並み以上に人肌恋しくなったようであった。


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