Case20「捜査開始」
昼食を終えた彼らはいつも昼寝をするという。きっとハウリッドはこの時間に色々な仕事を済ませているはずだ。しかし魔装師団団長の仕事はそんな時間だけで終わるようなものではないはず。知らんけど。
——と、なると睡眠時間を削っているのかしら。それにしては疲れてる様子もあまりなかったけれど。
施設内を歩いていると祈祷室へと辿り着く。色彩鮮やかなステンドグラスからは日の光が差し、一層教会内を照らしていた。彼ら風に言えば《《神の威光》》というやつだろうか。神の従順たる信徒ではないため有難みとか恐ろしさとかイマイチピンとはこない。
「大体ホントに神様なんているのかしら……」
……とそんなことを考えるためにここに来たのではない。一応一礼だけして教会内を歩く。勿論警戒は怠らない。見られたくない部分があれば絶対に侵入者用の罠を敷いているはずだからだ。目指すのは内陣の奥にあるはずのハウリッドの自室。
「しっかしホントに眩しいわね……。カミサマとやらの領域の光がホントに差し込んでるってんなら笑うけれど」
ステンドグラスを通しているせいで余計に眩しいのか、そのおかげでこの程度で済んでいるのかは知らないが。ここまで近づいて初めて気付いたこともあった。
「へぇ、ステンドグラスってただのギザギザ模様なわけじゃなくって何か絵のようになってるのね」
何が描かれているかはさっぱりだが、羽がついてるらしいあの姿は天使なのだろうと推察くらいはできる。ということはそれに囲まれている光がカミサマ。
——ズキン。
左脇腹にある癒えない傷が痛む。
——…………。
「《《待っていなさい。絶対に殴りに行ってやるから》》」
……本題はハウリッドの部屋だ。こうして自由に動ける時間もそう多いわけではないから早めに捜査は済ませておきたい。
部屋の扉に触れる。
「外装構成、解析完了。内部構築————把握終了」
魔力で部屋全体を囲うことで外装罠と内部構築を把握する。魔力にはこういう使い方もできるため非常に便利だが、ここで過剰に魔力を使用してしまうと残滓を嗅ぎつけられやすくなってしまうデメリットがあった。そのため必要最低限の魔力で最大限探りを入れる。五年以上前であれば特に警戒をする必要もなく罠があれば真正面から壊していたが、今はそういうわけにはいかない。あくまでも探偵という立場にいるのだから無暗に目立つようなことはしない。
しかし不思議なくらいに罠の気配がなかった。魔法使いの自室は工房と同義。特に上位に位置する魔法使いであれば知られたくないもの、奪われたくないものには強固な守護を施す。家の扉には必ず鍵をかける。こんなものは魔法使いであれば当たり前の所作だ。実際、実家にある自室にも自分以外誰も入れないように細工してある。流石に家ごと爆散させられれば部屋も共に吹き飛びはするが……。とにかくそういう魔法使いとして当たり前の基本ができていないように感じるのだ。
「こんな間抜けが裏切者なことある……?」
いやそうやって油断させるつもりかもしれない。
「そうでもあるか……」
些か独り言が多くなってしまった。緊張の一瞬。喉が鳴る。魔が出るか蛇が出るか。できればどちらも出てきてほしくはないが、と願いながらドアノブへと手をかけた。




