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神の箱庭 〜氷水の魔女編〜  作者: 杯東響時
第二幕「パラダイス・ロスト」
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Case18「全ての食材に感謝を込めて」

 正直料理はあまり得意ではない。とはいえ苦手というほどでもない。まあ人様に振舞えるほどの腕ではないだけで、自分の舌を満足させられる程度の料理はできる。


 と五年前なら言っていただろう。しかしこの五年、死ななければいいというマインドで食事を用意していたのでめちゃくちゃ不安だ。子供達に案内された食糧庫兼調理場の中で一人佇んでいる。


「——ちょー久しぶりだけれど、クリームシチュー作ってみるかぁ」


 クリームシチュー。野菜と肉を炒めて牛乳を使用したホワイトソースで煮てはい終わりの簡単料理。大人数に振舞う分にはかなり有効なものだ。《《まあ何故この料理のことを知っているのか自分にはさっぱりだが》》、これだけなら確かに比較的簡単。


 具材を切る。具材をカットする魔法とかあれば楽なのだが、生憎魔法は天使等の上位存在を扱う神秘を借りる技術。天使は食べる必要がないので料理に関する魔法などあるわけはないのだ。


「——まあそういうのはアレイスターに任せるか」


 具材の炒める。根菜は固いので早めに火を通しておくが吉。料理に使う程度の火力なら自分でも用意ができる。鍋の底を軽い火で熱していく。野菜の一部が少し透き通り始めたらすかさず肉を投入。少し火力を高めて炒まったなら水を加える。これは食糧庫に置いてあった水の備蓄を使わせてもらった。魔法で出した水でも良かったが、この水を見てその考えを改めることとなる。


「——へぇ、めちゃくちゃいい水じゃない。これ飲むだけで体力と魔力を増強してくれるなんて。どこでこんなもん摂ってきたのかしら?」


 貴重なものかとも思ったが、結構備蓄もあるようなので遠慮なく使わせてもらう。当然危ないものは入っていないのは確認済であるから問題なしだ。《《そしてこれで確定した》》。


 ともかく次にホワイトソース。正直牛乳があるかが心配だったので作る前に確認は済ませてある。食糧庫には特殊な異能が使用されており、食物などの長期間保存を可能としていた。


「——魔術様様ね」


 魔術とはアレイスター・クロウリーという研究者が開発した人間の手による人間のための魔法を真似た異能。天使から力を借りるのではなく、人間が持つ魔力を超常に変換する技術だ。五年前は出来立てほやほやだったというのに、一部の上流階級の中では既に流行りだしている。まあ実際このように実生活に役に立つ魔術を生み出しやすいのはありがたいことだ。できることなら次は自動で料理をしてくれる魔術を生み出してくれると非常に助かる。


「五年前までは魔法なんて技術が発達してるのに、食糧の長期保存方法が確立してないなんて歪な世界から変わったわねぇ」


 人類の進歩にしんみりしながらもホワイトソースを炒めていく。充分に炒まったなら鍋にホワイトソースを投入。その他調味料を味を見ながら加えて——


「——出来たわ」


 久しぶりに作ったが正直出来はめちゃくちゃ良いと自信あり。あとは子供達の舌に合うかどうかだけだ。料理を皿に盛り付け、ちょうどこんがりと焼いたパンを一緒に並べる。


 扉を開けばすぐに食堂があり、そこでは元気に子供達が話している。元気には元気だが、それぞれちゃんと席についているところを見るに日頃のハウリッドの様子が容易に想像がついた。


 やがて食事の匂いに誘われて我慢できなくなった子供達は、配膳をされる前にこちらへと向かってくる。


「わー! なにこれー」

「しろいー?」

「牛乳使ってんのか? 初めて見るやつだ」

「クリームシチューっていうんだよ。さ、食事の用意ができたから席で待っててね」

「アタシ手伝うぜ!」

「ん、じゃあモルドレッドに手伝ってもらおうかしら。ささ、他の子は席について」

「「「「はーい!」」」」


 モルドレッドを除く子供達は元気よく返事をしてそれぞれの席につく。やばい。かなり可愛い。


 ——っとアレ? モルドレッドはどこ?


 さっき目の前にいたと思ったのに、少し視界から外せば見失う。よく見ればなんのことはない。きらりと輝くブレスレットを身に着けたモルドレッドは普通に子供達の分を配膳しようとお皿を持っていた。


「——————————っといけないいけない。(ワタシ)もやらなきゃ」


 ともかく今は子供達に配る。モルドレッドが手伝ってくれたおかげで全然温かいまま料理を提供することができそうだ。


 そして全員に行き渡ったところで——


「全ての食材に感謝を込めて——」

「「「「「いただきまーーーす!」」」」」


 色々考えなければならないことはあるが、今は忘れよう。さあ、これからは楽しい食事の時間だ。


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