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神の箱庭 〜氷水の魔女編〜  作者: 杯東響時
第二幕「パラダイス・ロスト」
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Case17「違和感と疲れた」

 まず最初に木製の何かが当たったような音が後方でした。これは単に模造剣同士がぶつかりあった音だとわかる。自身の勘か、薄く残っているかもしれないガブリエルの契約か、《《それとも別の意識が働いたのか》》は定かではないが、結果として後ろから迫る何かを迎え撃つことができたのは正直自分でも驚くしかない。


 しかしそれ以上に驚いたのは《《モルドレッドが後ろにいたこと》》。背後というのは戦いにおいて最も死角であり、そこを位置取るのはなんらおかしいことではない。《《だから魔法使いは常に後ろに魔力反応がないか警戒しているのだ》》。瞬く時間の中であろうと居ないことを確認していたからこそ、背後より先に上空を目視しようとしたのだが……。


「なん……っで!?」

「後ろにいたことがバレ——うわッ!?」


 受け止めた剣を蹴り上げ、胸倉を引き背後から抱きしめた状態で喉元に剣を突きつける。剣を突きつけた喉がごくりと音を立てた。一秒の静寂があって——


「はぁ……。はぁ……はぁ、はぁ……。(ワタシ)の勝ちよ……」

「わ、わかったからソレ下ろしてくれ! あ、アタシの負けだって!」

「————あっ、ごめんなさい! 痛くなかった? 大丈夫?」

「……まあ手加減するなって言ったのアタシだし、べつに気にしてないけど……」


 あまりの衝撃に反射で迎撃してしまった。自分でも意図していない圧をかけてしまっていたかもしれない。普通の子供ならトラウマものだろうが、モルドレッドが肝が据わった少女で助かったとそっと胸をなでおろす。


「しかしマリンさんは本当にすごいや。アタシが後ろを取ったら誰も気づかないうちにやられるのに。うけとめられたのは初めてだったぜ」

「——まあ、そこは(ワタシ)が一流たる証左かしらね」


 ——内心なんで対処できたのかもわからずにあせあせでしたけれどもねっ。


「それよりモルドレッド。貴女(アナタ)って魔法使えるの?」

「え、つかえないけど……。それがどうかした?」


 ——じゃあさっきの違和感はなんだったのかしら……。


「だああああああ! んなことよりおなかすいたや!」

「マリンせんせいっ!」

「せんせっ!」


 なんとも拭えない違和感にモヤモヤしていたところに子供達が寄ってくる。子供達が言っていた通り、そろそろ昼の時間だ。自分もお腹が空いてないと言えば嘘になるくらいには空腹である。ふと、そこであることを思い出した。


「——そういえば子供達のご飯っていつも誰が用意しているの?」

「いつもはハウリッドせんせーがつくってくれるよ!」

「へー、なるほどなるほど。————ん? 待って」


 いつもハウリッド先生が用意している、ということはだ。ハウリッドがいない今日はどうするんだ? 聞かなくてもわかってるくせにー。そう、彼は確かにこう言ったのだ。「僕の代わりに子供達を見てほしい」と。賢い皆様なら言わなくてももうわかっているはず。しかしここははっきり言っておかなければならないらしい。


「——(ワタシ)が用意するしかない……ってコトね……!」


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