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神の箱庭 〜氷水の魔女編〜  作者: 杯東響時
第二幕「パラダイス・ロスト」
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断章「エイカムの場合01」

 一方その頃、エイカムはもう一人の容疑者であるプリカエルの調査に乗り出していた。


 ——確か彼は遠征任務から帰って来た直後のはず。つまりいるとすれば——


 彼は既に城から出ており、城下町外れにあるプリカエルの家へと向かっている。愛妻家で有名な彼のことだ。遠征の報告よりも真っ先に妻に会いに行っているはずである。勿論いなければ無駄足どころの話ではないが、そんなことはあまり考えられない。よってその時は運が悪かったと諦めようと思っていた。しかし——


 ——どこからかわからないが視線を感じるような……。敵意は——感じられない。


 町の外れとはいえ世界で一番栄えていると言っても過言ではない国だ。当然人も多く、ただの視線がこちらに向けられることくらいはあるとは思っている。些か敏感になりすぎているだけだろうか。だとすれば良くない。変に緊張をしていると悟られて全てがご破算になる可能性だってある。


 ——常に余裕も持って胸を張れよ、エイカム……。


 思考を巡らせているといつの間にかプリカエルの家へと到着していたらしい。やはり相も変わらず視線を感じる。いっそ敵意であればわかりやすいのだろうが、なんの意図も汲み取れないから不気味だ。


 コンコン、と扉を叩く。中からは声の代わりに足音が聞こえてきていた。


 ——あれ、視線が……。


「どーちらさん——っと、エイカムか? わざわざこんなとこまでどうしたんだ?」


 飄々とした雰囲気で扉から顔を覗かせたのはプリカエル・プラクタ。第四魔装師団団長であり、裏切者候補の一人。


 視線が同じ高さで合う。


 呼吸が一つあって。


「どうした? はこちらのセリフだ、プリカエル。遠征の報告はどうした? 妻を大事にすることはよいことだとは思うが、自分の役職と仕事も忘れないでくれたまえ」

「あー、すまんすまん! 別に悪気があったわけじゃないんだ」


 そんなことは重々承知している。


「しかしなぁ、お前……。私にとっては、君の報告を聞くことも仕事の一つなのだ」

「ははっ、玄関先でよく喋る。とりあえず入っていきなって。メシ、まだだろ?」

「いやメシとかそういう話では——っとうわあ!? 急に引っ張るな!」


 ——あぁ、マリン君。こちらは前途多難だ。そちらの健闘を祈る……。


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