Case14「妖精種という名の魔族」
「考えられるとすれば妖精種などの魔族、でしょうか?」
「魔族かー……」
魔族(特に妖精種)は人間と比べれば魔力の扱いに長けている。何故なら彼らは食糧を必要とせず、自然に満ちている魔力を糧として生活しているからだ。彼らは生物の感情や魔力を観測する瞳を持ち、独自の神秘を編み出していると言われている。そこまで神秘に精通している種族であれば魔力を消す道具を持っていてもおかしくはない。むしろそれを持っていることによって彼らの存在が見つけられない証明にもなる。
ここまで彼らの特徴を列挙しておいて、こう一言だけ呟いた。
「普通は無いわね」
「無いですかー」
ハウリッドもその返答が来ることがわかっていたかのように首を傾ける。先程述べた通り、妖精種は《《食糧を必要としない》》のだ。つまり——
「《《ホワイダニットがない》》」
「ホワイ……ダニット……?」
「この世界は魔法を代表とするなんでもありの神秘が溢れてる。そんな世界で手段にはそれほど意味がない。考えるべきは動機」
「動機、ですか……?」
「えぇ。何者かがやったことである以上、そこには必ず動機が存在するはず。それを考えることこそ犯人追及の最大の手がかりよ」
といっても今回の場合は動機に関しては語るまでもなくわかりきってしまっているが。妖精種は食糧を必要としない。つまり動機がない。物を知っている魔法使いであれば真っ先に否定するべき選択肢である。何らかの事情で食料を必要としている人物こそが犯人だと結論付けることができるはずだ。
「ですが、妖精種の犯行ではないと切り捨てるには些か早急だと思いますよ、僕は」
だが、ハウリッドはそれすら首を振って否定する。普段であれば何を馬鹿な事を言っているんだと蹴り飛ばすところだったが、今は少し事情が違っていた。
「——最近噂になってるっていう魔族が人を襲うって話?」
神妙そうな顔つきで首を縦に振る。ここに来る前、キール達から聞いた俄かには信じがたい噂。事実、五年世界を旅していたのにその間には一度も魔族と遭遇しなかったのだ。はいそうですか、と簡単に頷ける話ではない。
「理由も出所も不明ですが、実際にそういった噂が飛び交っているのもまた事実です」
「うーん、まあそうなのだけれど……」
そうなってくると動機が読めなくなってしまい、普通に困るのだ。魔族から話が聞ければ楽なのだろうが、そもそも会うのが容易ではない。そのうえ、彼らは独自の言語体系を築いていると言われているので会話すら簡単にはできないのである。天使そのものか熾天使等の上位存在と繋がっている熾天使いみたいな人間であれば会話は成立するかもしれないが……。
——正直自信はないわね……。聞けて理解できたとしても、慣れていないと頭が混乱して正しく入ってくるのかも怪しいし。
頭をわしゃわしゃと掻いて、とりあえずいつも通り。
「——わかったわ。その依頼、受けましょう」
「流石、マーリン様! よろしくお願いしますよ」
「……いいけれど、その呼び名はやっぱり恥ずかしいからやめてちょーだい」
「マーリンさまー!」
「モルドレッドもその呼び方はやめなさいってばー!」
二重に依頼を請け負った状態なのを忘れてはいけない。こちらの依頼はこなしつつ、彼を探ることも忘れない。二つともやらなきゃならないのが辛いところではある。が、やるしかないのだ。
——ならば、人類の平和のために!
「この謎、解体してみせましょう」




