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神の箱庭 〜氷水の魔女編〜  作者: 杯東響時
第二幕「パラダイス・ロスト」
35/59

Case09「容疑者考察:後」

「——ハウリッドはわかったわ。次、プリカエルは? 狙撃専門なんだからほぼ無傷で生還しても不自然ではないはずよ」

「こればっかりは当初から少しだけ違和感を持っててな」

「違和感?」


 先程まで弱気だった部分が無くなりはっきりと物を言うようになる。つまり苦手分野の推理ではなく、何かの確証を掴んでいるという証左。少なくとも的外れと蹴るようなものではないはずだ。


「何かしら特別な魔力特性を持っていないと厄災獣に傷をつけられないのはおそらく戦っている間に実感してくれてると思うが」

「え、そうなの?」

「——これだから頭から足のつま先まで特別な人間は……。私とキール君がダメージを与えられなかった時点でそれは実証済みだ。ああして真正面から対峙した私が言うのだからこれは間違いない」


 戦闘においてはこの国、いや世界の中でも上位の実力者であるエイカムがそう言うのだからそれは間違いないはずだ。


「最終局面で少年と私、それとプリカエルとで共に戦っていたわけだが、どういう理屈か少年と彼の攻撃だけが通用していた」

「——へぇ」

「私はそこで割り切って少年の補助に徹していたわけだが。後になって考えると何かしらの特別性が無ければ傷を負わすことはできないのではないのか? という結論に至ったわけだ。これ自体は隠蔽された資料が出てくる前にわかっていたことだから特に気にしてはいなかったが、そうも言ってられなくなった」

「じゃあコメッタは? 彼女は特別な魔力どころか魔法さえろくに使えない馬鹿力と爆発力だけが取り柄だったけれど最初に魔力核を破壊した人でもある。これはどう説明をするの?」

「彼女が握っていたのは厄災獣の魔力を限界まで吸った剣だ。これだけでもう充分に特殊じゃないか?」


 その反論は想定していたと言わんばかりにふんっ、と鼻息を立てて胸を張る。まあそう言われることも想定内ではあった。そんなことすらわかっていなかったのならこれ以上話すのは無駄だなと


「試したな?」


 勘が鋭すぎる。歴戦の騎士である彼の勘か、洞察力の高さ故か。ともかく彼の証言は一考に値することはわかった。


「なんのことかしらぁ? しかしなるほどねぇ。彼が裏切者であるかないかにしろ、特別な何かを隠している可能性はあるってこと……」

「そうだ。だから二人を探る必要がある。私はプリカエルの方を、マリン君はハウリッドの方を調べる。君にはそういう仕事をしてほしい」

「——なるほど。ハウリッドを調べるなら(ワタシ)が適任ってわけね」


 確かに彼とは五年前の厄災戦後から何かと関わりがある。おそらくここ五年ではアーサーの次に話している時間は長かったかもしれない。そういうことを知っていて依頼したのだとしたら大したリサーチ力である。


「じゃあ氷水の魔女から一つアドバイスをしてあげましょう」

「————」

「謎を解く時は常に《《ホワイダニット》》を考えるのよ」

「ホワイダニット?」

「この魔法っていう超常技術が溢れる世界においてどうやってやったか、などに意味はない。特に今回のような手段を探る必要がない場合はね。《《動機》》を探すの。人がやっていることならそこには必ず動機が存在するはずよ。どんなにくだらないモノだろうとね」

「動機、動機か。わかった。そのことは肝に銘じておこう」


 ………………これで話がまとまりそう、なんて雰囲気を出してはいるが肝心の《《アレ》》の話をしていない。《《アレ》》がないと当然この話は終わりようがないというのにすっかり忘れていそうな感じだ。仕事を頼まれたのだ。当然《《アレ》》が必要なはず。嫌だ。《《アレ》》なしでの仕事など断じてしたくない!


「——報酬の話は?」

「—————…………は?」

「だ・か・ら! 報酬の話よ! 仕事の依頼というのだから必須でしょうにッッッッ!」


 正直あまり自分から言う気はなかった。だって卑しいやつだとか思われるかもじゃん? いやエイカムはそう思わないでしょうが、自分からは切り出しづらいのよこういう話題って。でもでも彼から報酬の話をしなさそうなのは確かにそう。だって彼は自分の働きにはなんの見返りも求めないのだから。やって当然の責務だと思っている。


「——あー、確かにそうだな。これは私が不誠実だったかもしれない。しかし報酬か……。何をあげればマリン君が喜ぶのかまるでわからない……」

「金だろ……!」

「——なるほどな。ではそちらに関しては事が終わり次第財務官に話を通してみる」


 一瞬依頼解決したら? と思ったがそれもよくよく考えれば当然だ。だって今から裏切り者を探そうとここで内密に話しているのに、そこで漏らしてしまっては何の意味もない。確約されたものではないが、エイカムは反故にすることはないだろうと信じて渋々承諾する。


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