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神の箱庭 〜氷水の魔女編〜  作者: 杯東響時
第二幕「パラダイス・ロスト」
33/59

Case07「誰が?」

 エイカムの真意を察して今度こそは小さく呟くように口にする。彼もその結論に至っていたようで静かに頷いた。だが疑問は更に深まる。しかし彼ならばこの疑問に答えるだけの解を持っているはずだ。


「どこにあったの、ソレ」

「国立図書館の職員管理室。《《この城内部にある関係者専用の図書館で見つけた》》ものだ」

「——つまり内部犯の可能性がある? しかも管理室ともなると入れる人間は限られてくるはずよ」


 あぁ、とエイカム。しかも彼が伝えたいことはこれだけじゃないらしい。「これも終わったことで、どうしようもないことだが……」と前置き、(ワタシ)の唇へと指を押し当てる。どんなことを聞いても派手にリアクションするな、という合図だろうか。


「厄災獣が封印されていた場所をよくよく調べてみると、《《何かが干渉したような魔力跡が残っていた》》」

「っ——」

「ステイ。ところで厄災戦の最中、おかしなことが起こったりしなかったか?」

「——おかしなこと?」


 あの怪物と対峙している時は常識では測れないようなおかしなことだらけだったような気がするが、多分そういうことを言いたいのではないことくらい察することはできた。であれば決定的におかしかったこと、となるが——


「——いや、まさか《《最初の攻撃タイミング》》?」


 おかしかった、というかそこから全てが狂い始めたのだから印象深い出来事ではあった。事の発端は研究者アレイスターがどこからか入手した情報である。彼曰く、厄災獣は封印解除の開幕に大規模の魔力熱線攻撃をしてくるという話だった。それを防御魔法のスペシャリストであるハウリッドが防いでから攻撃を開始するという手筈だったのだが。予想外なことに厄災獣は初撃にフェイントをかけてきたのだ。結果ハウリッドの防御魔法のタイミングはずらされ、後方で戦っていた第二師団は師団長であったコメッタを残して壊滅している。


 当時はアレイスターの持ち込んだ情報がおかしかったのか、とか厄災獣などと呼ばれてはいるが高度な思考パターンを持ち合わせていたか、など考えていたのだが……。


「あのタイミングを教えていたのではないか、と私は思っている」


 あまりにも聞きたくなかった残酷な答えだ。これが事実だとするのならば明確な人類に対する裏切り行為である。と同時に必死で戦った仲間達の裏でほくそ笑んでいたと思うと——


 ——まだ怒りは抑えるのよ、マリン。それをぶつけるのはここではなくその裏切り者に対してでいいわ。


「勿論確定事項ではない。が、誰かが暗躍していると考えると自然なのも割とそうだ」

「ん。で、結局誰なの? 慎重な貴方(アナタ)(ワタシ)に話したってことはもう既にいくらか目星くらいつけてるんじゃないの?」

「ご明察。流石は名探偵マーリン、噂に違わぬ洞察力。私も話が進めやすくて助かる」

「——そのマーリンってのマジでやめてくれない? 死ぬほど恥ずかしいのよ……」

「ははは、冗談冗談。少しからかってみただけだ」


 こうやって雑談を話す時は声のボリュームを少しだけ上げる。二人で一緒にいるのに長い間静かだなんて内緒話してますよと言っているようなものだ。それも見越していたのか明るく話した直後に今度は自分の唇の前に人差し指を立て、片目を瞑る。


「《《では君に依頼をしたい》》」

「——なんですと?」

「マリン・ブリテンウィッカ。君にはある人物の調査をお願いしたい」

「ある人物?」

「《《リダウテン・ハウリッド》》。第五魔装師団の団長であり、《《厄災戦における裏切り者の候補である》》彼を、だ」


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