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神の箱庭 〜氷水の魔女編〜  作者: 杯東響時
第二幕「パラダイス・ロスト」
29/59

Case03「ぶらり飲み歩き旅、そして」

「ひゃっはああああああ! やってやったぜぇええええ!」


 気分爽快とはまさにこのこと。今まで溜まりに溜まった鬱憤を一気に晴らせて気分爽快である。魔法協会を出た途端の高笑い。傍から見れば完全に変人だが今日くらいは許してほしい。こんなに気分が晴れやかなことなんてここ数年なかったのだから。


 数年仕込みの五賢者ざまあみさらせ計画! 《《すごい偶然で身近に五賢者が居てくれたからできた》》と言っても過言ではない。当然、五賢者全員の素性を把握しているなんて完全なハッタリ。ただ一人だけでよかったのだ。一人さえ押さえてしまえば他の四人も把握されていると錯覚してしまう。これは秘匿性の高い組織に対しては効果抜群だった。


「いいのいいの、あんな陰キャ老害の話。さーーて、これから王城に向かうわけだけれど——」


 周囲を改めて見渡すと最後に一年前訪れた時よりも随分と復興が進んだように見える。ようやく人手も集まってきたのか出店らしきものが並んでいた。国を破壊しつくしたその一人としては正直罪悪感のようなものはあったが、これで多少は和らいだと言える。言えるのか?


 まあそれはとりあえず置いといて、だ。これだけ美味しそうな匂いをさせていたら流石にお腹も空いてくるというもの。


「なんにしよっかなー……と?」


 目についたのはお酒を提供しているお店。魔法協会の規定では階級が高ければ高いほど飲酒の年齢制限が厳しい。これは酒に酔ってセーブの効かないまま魔法を放たれると困るからだ。熾天使いは二十五歳まで禁止されているものの、現在は座天使い。現在は二十二歳で制限は二十二歳。ちょうど飲酒が許されるようになった年である。


「——そういえば(ワタシ)、飲んだことなかったわね……」


 一度店の前を通り過ぎる。酒の匂いと共に焼き鳥の良い匂いも漂ってきた。


「————…………」




☆☆☆☆☆




「かあああああ! うんま! いい感じに頭がほわほわしてきたぁ。うーん、最高です! 焼き鳥も最高! いいなぁ。果実酒。なんでこんな美味しいもの飲まなかったのかしらぁ……。んふふふ」


 歩きはまだ大丈夫なものの普通に酔ってきた。うん、初見でもわかるこの酔うって感じ。すごく悪くない。同時に飲みすぎるといけないこともなんとなくわかる。


「いやぁ、しかし入城許可証ってホント便利よねぇ」


 入城許可証さえあれば国のツケである程度までなら城下町で飲み食いできるのだから貰っておいて本当によかった。おかげで今良い思いをさせてもらっている。


「——そういえば彼がお酒飲んでるとことかも見たことなかったわね。ふふ、今度おすすめするために色々と勉強しておこうかしら」


 ふと彼の事を考えた時一抹の寂しさを感じた。今までは狂気に身を任せていた分そういうものを感じる暇がなかったのかなと自己分析。人らしい感情を取り戻せた反面、今度は人らしい寂しさを感じるようになってしまった。それもおよそ五年分がまとめて。


「————うぇっ……ひっく」


 涙が溢れる。普段なら泣くほどセンチになることなんてなかったかもしれないが、正直に告白すると現段階でかなり酔いが回ってきていた。


「ぴえっ…………」


 変な鳴き声と共に。


「わ……ァ。ア……ァ」


 泣いちゃった……。


「えらい美人さんがこんなとこで昼間っから泣くもんじゃあないぜ。……ってガブリエラか!?」


 後ろから懐かしい名前で声をかけられたので涙が溢れる目をこすりながら振り返ってみると、そこにいたのは男女二人組。酔っていようが涙で目の前が霞んでいようが見間違えるはずがない。


「——ふぇ キール……?」

「俺様の名前はフェキールじゃねえよ! キール。キール・ダイターロス。多分三年振りか。久しぶりだな!」


 五年前の厄災戦。共に修行した仲間で、共に厄災戦の中心で戦い、生き残った英雄と呼ばれている人物の一人だ。


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