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神の箱庭 〜氷水の魔女編〜  作者: 杯東響時
第二幕「パラダイス・ロスト」
27/59

Case01「マリンは嫌いなものから食べる」

 一夜明けて町を立ち、一日歩いて辿り着いたのはこの世界で唯一「国」という地域形成をしている「シューメンヘル王国」。一年に一度、自分が近況報告をするために寄る場所で、魔法協会の本部があって、そして——


「五年前の厄災戦。その中心だった場所……」


 いつも五年前のことを思い出そうとすると胸の奥がキュッと締まり苦しくなる。左腕は既に肉など無いというのに痛んだような気がして思わず肩を押えた。


「ん、肩が痛むのか? まだ先日の傷が癒えてないとか……」

「——まあ、《《まだ傷は癒えてないといえばそうかも》》」

「???」

「気にしなくていいのよ。(ワタシ)が勝手に気にしてるだけなんだから」

「んー、今の君がそう言うなら心配はいらないか! で、これからどうするんだ?」

「どうするって——」


 ——ここで(ワタシ)に与えられた選択肢がいくつかある。


 一つ。無難に当初の予定通り、エイカムに呼ばれているのでそちらに向かう。


 二つ。魔法使い、特に上位のランクの魔法使いは魔法協会への近況報告が義務付けられているのでそれを行う。


 三つ。シンプルに町をぶらつく。主な目的としては腹ごしらえ。腹が減ってはなんとやら。


 ——とは言うものの腹ごしらえは正直優先度低めね。なら取る選択肢は一つしかないってわけ。


「先に魔法協会への報告を済ませるわ。熾天使いじゃなくなったから報告義務は緩いけれど、しばらく行ってないのも事実だし」

「一応言っておくがエイカムさんの用事は——」

「忘れてないっての! (ワタシ)は嫌いなものから食べる派なの」

「——あー……なるほど。それなら、うん。そうだな。僕は先に王城へと戻って仕事をしなきゃいけないが……一人で大丈夫かい?」

「ばっか、誰に言ってるのよ」

「君が暴れて協会をぶっ壊さないかを心配してるんだ」


 ……そちらは保証できない。もし「五賢者」と遭遇でもしてしまえば最悪その可能性は十二分にある。


「——近況報告だけだから。それにいくらここが魔法協会の本部だからって五賢者なんてそうそう出会えるものじゃないから心配いらないって。それより自分の心配したら? 今は隠しているけれど鎧ボロボロなんだから」

「あぁ、修理も兼ねて王城に戻るつもりなんだ」


 魔法協会直属でかつ王配下でもある魔装師団の団長がボロボロの鎧を身に着けていたんじゃ部下達にも民にも恰好がつかない。であれば彼が優先すべきはまず身を整えること。こちらに付き合うなど言語道断である。それをわかっているからこそ付いていこうか、などと自分からは言い出さないのだ。


「じゃあ、しばらくお別れだな」

「今生の別れってあるまいし。さ、いってらっしゃいな」

「——わかった。また今度な」

「えぇ、また今度」


 アーサーはほんの少し心配そうに、あるいは名残惜しそうに背を向け王城へと向かう。とりあえずはその背を見送りながら、見えなくなったところで魔法協会に向けて歩き出した。正門から入り正面へとずっと進めば王城は見えてくる。その途中で左に曲がり、三十分くらい歩いたところに魔法協会の本部はそびえたっていた。


 とは言っても外っつらの大きさだけなら王城と比べるべくもないほどに規模は小さい。むしろ普通のどこにでもある酒場と間違えかねないほどこじんまりとしている。では魔法協会の本部が何故こんなにも小さいのか。


 否。前提が間違っている。確かにここは魔法協会の本部ではあるが単なる《《入口》》に過ぎない。


 まずは扉の前で魔力を照らす。登録された魔法使いのリストと一致する魔力反応があれば扉は自動的に開く。そこをくぐった先にあるはずなのはおよそ外見から想像できないほどに大きな構造をしている城。それこそが真実の本部、《《その一つ》》。あの扉で魔力を照合させるとその人に合った階級の拠点へと転送されるシステムなのだ。


「——んで、なーんで(ワタシ)がここに転送されてるのかしら?」


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