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神の箱庭 〜氷水の魔女編〜  作者: 杯東響時
第一幕「マリン・ブリテンウィッカの事件簿」
21/59

Case15「君の話をしよう」

 夜の星がよく見えるという町のはずれにある高台へと来た。町を見下ろせるほどの高さで、うっかり落ちてしまえば普通の人間なら一発であの世行き確定である。もう既に町の明かりはそのほとんどが消え、人は眠りに入っていた。


「——ふっ、人がゴミのようね」

「そういうのは人がいるときに言うものだ」

「────高いとこからの景色は最高だって言いたかったのよ……」

「……そうは聞こえなかったが」

「まあ、それはいいの。で、話って何を聞きたいの?」


 話と言われてもとんと内容に心当たりがない。強いて言えば事件の話、さっきの戦い、日頃の恨み、宿の賠償金の話。


 ——あれ、心当たりしかない……。


 冷や汗が止まらない。その表情は平静を保ているだろうか。話す前に挙動不審だなんて笑い話にしかならない。


 昔であれば迷いなく読心魔法を使っていたところだが、人と接する機会も減り使うことも無くなった。まだアーサーには言っていないが、もうとっくに人の心を読む術など忘れてしまっている。それは魔法という意味でも、コミュニケーションという意味でも。


 謎解きの時はあんなに人の感情を解体していたのに、《《その実必死にカマかけていた》》だなんて滑稽にも程がある。昔から謎解きの才能がないのは知っていた。五年前に参加した事件だって自分の力だけでは解決できていなかったのである。


 ——また思考が脱線してる……。今は(カレ)の話に集中しないと。


「君の話をしよう」

「──────あー、(ワタシ)の話ね。おけおけ。どういう意図であんな虐待まがいのことをしてたのかとか気になる感じ?」

「いいや、そんなことはどうでもいいんだ。君の、これまでの歩みについてだ」

「──ここ数年失踪してた時の話とか……?」

「違う違う。ええい、最後まで聞いてくれ! 《《君の五年前以前の記録のことだ》》」


 正直そう来たか、と頭を悩ませた。話すには色々と抵抗があるのは確かだが、そこは問題はない。しかし——


「どこから、どう話したものか……」

「僕が知っている知らないにこだわらなくてもいい。我が師のことをもっと深く知っておきたいんだ」

「——逆鱗に触れないため?」

「損得なんかじゃない。単純な人間的な興味だ。——あぁ、いや。興味だと断じられると不愉快かもしれないが、本当にそうなんだ」

「——ふーん、変な人」


 そう、変な人である。仮に、例えば彼が自分に好意を持っているとすれば(好意には応えられないが)理解はできるが見るにそういうことではないらしい。


「まあ、いいけれど……。んじゃあ——(ワタシ)の生まれから」

「えっ、そこから話すのか!?」


 いくらなんでもそれは予想外すぎたのか驚きの表情を見せるアーサーに対し、くすりと笑って見せる。


「あら、それはちょっと遡りすぎたかしら」

「ま、まあルーツを知れるというのならそれはそれで……。長丁場になるだろうと携帯食料と水は持ってきてあるからどんとこい、だ!」

「準備万端ね。じゃあ生まれから」


 ——さあ、彼女の物語。その一幕を少しだけ覗いてみようか。


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