「お礼の時計」
『第3回「下野紘・巽悠衣子の 小説家になろうラジオ」大賞』への応募作品です。
引っ込み思案な性格を変えたいと僕は、放浪の旅へ。
とある町で、痩せ細ったおじいさんに出会った。
「食べものを…」
「これしかないんだ…良かったら」
バッグからパンを取り出し、渡した。
「ありがとう…ありがとう…」
と繰り返し、泣きながら食べている…
「持っている物は、1つだけじゃ…
壊れているが、せめてもの礼に…」
僕は、首を何度も横に振る。
「どうか…」
頭を下げたまま、動かないおじいさん。
お辞儀をして受け取り、その場を離れる。
歩きながら、気になる右手を開いた。
「時計だ!」
涙が止まらない…
きっと大切な…そう思った瞬間…僕は、意識を失った。
どのくらい時間が経ったのだろう?
目覚めた僕が、持っているのは…
端切れ、鉛筆、ナイフ、スケッチブック。
そして、時計…
【お腹が空いた…だけど、喜んでもらえて良かった♪
そうだ!靴磨きなら…】
ところが、町を歩く人々の目に僕は,映らない…
それでも、優しい人はいた。
貰ったコインで食べ物を買い、日々を過ごす。
周りにあるもので色々、作った。だけど、売れない…
受け取ってくれる人に、プレゼントした。
小さな子ども達と、仲良くなり一緒に、歌いながら
絵を描いた。
数年後…
【いらっしゃいませ!】
「このしおりを」
【この前も来てくれたから…もう1つ、プレゼント】
「ありがとう!また来るよ!」
「ぼくは、イヤリングをお母さんに」
【ラッピングしてあげる!】
「ありがとう!」
町の人達は、喜んでくれるように。
本当に嬉しい!
僕は、両親を知らない。
生まれて、間もなく病気で亡くなった。
預けられた施設で、育った。
だけど、この町には大勢の優しい人がいる!
願いを叶える為に、これからも…と決意したその時、
「青年よ」と誰かに呼ばれた。
振り返ると老紳士が…
「覚えているかな…」
【いえ…】
「食べものを…」
【あの時の!?】
「思い出したな。
私は、この町がある国の王だが…
後継者が、いない。大切なパンを私に、
くれたその後も…町の人達や人々の事を最優先に…
君の事は、色々聞いている」
【国王陛下、大切な物を…お返しいたします】
「あの時の、懐中時計!」
辛い経験をしても、なお人々の心に寄り添う君に、
この国を任せたい!」
【お褒めに預かり光栄です!】
みんなの笑顔…願いが叶った!




