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週刊言責は追求せり!  作者: 壱ノ瀬和実
愛しき哉アブノーマル
51/77

1-2

 登校中の風景は毎日代わり映えがなくていけない。

 私はいつ何時なんどきであっても日常を刺激的しげきてきなものでくしたい人間であるから、こうも毎日同じ道を走るのは退屈そのものであるのだが、しかしその刺激が非日常的なものであるべきではないとも思っている。

 昨日まではなかったものがあった。

 通学路沿いにある小さな児童公園のトイレの壁に、真っ赤なスプレー塗料のようなものででかでかと落書きがされていたのだ。

「なんと」

 ペダルを止めて見てみれば、教養きょうよう欠片かけらも感じさせない字で「あほ」と書いてあるではないか。

幼稚ようちが過ぎる!」

 普段ならば早朝のラジオ体操にいそしむご老人方がこしを曲げながら清掃作業を行っていた。

 あの手のスプレーは水とブラシで落ちるものなのか疑問ではあるが、日々(とむろ)し、体操と世間話に喜びを見出す彼らに余計な刺激を与えるとはなんたることか、といきどおったところで私に出来ることなど何もない。

「これで一体何件目だろうか」

 己の無力さと共にひとつ。

 うわさではあるが、この近くの公園、石塀いしべい、その他諸々(もろもろ)、小耳にはさんだだけでもこれまでに五件の落書き事案じあんが発生している。同一人物、もしくは同一グループの犯行であるかは知りようもなく、またこのような「幼稚」という言葉が大人びて見えるほどばかばかしい「あほ」の文字がそれら全てに書かれていたのかも判然はんぜんとしないが、にしてもうすさむい話である。

 これは我々校内週刊誌の出番ではなく警察のお仕事であるため詮索せんさくはしないが、高校の近くともなれば我が校の生徒が関与している可能性もなきにしもあらず。注視ちゅうしはしておきたい。

 とまれこの手の事件というのは実にありふれたものである。近所の公園にどこぞの不良が落書きをしていたと話せば大概の者が「我が地元も同様に」と語り出すことだろう。

「しかしこうも頻発ひんぱつしてはなぁ」

 ありきたりなものでも身近にあると思うと気持ちが悪い。

「我が校の生徒であってくれるなよ」とひとつ通学路。

 この日常に差す色としてスプレーの赤だけは決して用いるまい! と固く誓って、私は重たいペダルを踏んづけた。


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