転生悪役令嬢は頭を抱える
『オモ姫』に転生したことに気付いて、五時間。
私は自室で頭を抱えていた。
……なんで思い出せないんだろう。
……攻略対象を、誰一人として。
え、どうしろと言うんだ、名前すら思い出せないのに……えぇ?
ハードモードが過ぎる。
「ヒロインの幼馴染と、悪役令嬢の騎士がいた気がする、けど」
覚えてない。
『メイリー』の記憶にも、瑠花の記憶にも、そんな人はいない。
まだ、出会ってないのかな?
でも、ヒロインは、今7歳。
幼馴染なら、そろそろ出てくるんじゃ……。
悪役令嬢の騎士ってのも気になるな……普通、悪役令嬢の婚約者とかじゃ………………ん?
その瞬間、頭の中でパチンと記憶が弾けた。
『フェルタシア様の婚約者は私です。
だから、お姉ちゃんは諦めてください!』
『……私がフェルタシア様の婚約者に選ばれたのは、6つの時です……』
『……ふふふ、ははははっ! ほんとにあんな言葉、信じてたわけぇ? 笑いが止まんないんだけど! 最高っだねっ!」
「…………!」
フェルタシア……フェルタシア・アイラン?
「思い出した……悪役令嬢の婚約者……」
メイリーの婚約者。公爵家の跡継ぎ、フェルタシア。
攻略難易度★★★。神出鬼没の、愉快犯。
彼は、『メイリー』を処刑台へと導いた人物だ。
「……嘘でしょ……」
情報が上手く整理できない。
婚約者に選ばれたのは、6歳?
今が、12月23日。
私の誕生日は、1月7日。
「つまり、あと1ヶ月もない?」
……これは転生早々、詰んだ……?