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転生悪役令嬢は甘えたい  作者: 狐由樹
転生悪役令嬢は甘えるのが下手すぎる
2/15

転生悪役令嬢は裏切られた



「メイリーお嬢様、夕食の時間です」


とんとん、と書斎の扉を叩く音がする。

私は、魔法書を閉じた。立ち上がり、魔法書を元の棚に戻す。魔法については、希望はありそうな感じだった。


再びのノック。

うわ、催促してるよ。ご主人に。礼儀がなってないな。

10秒も待てんのか、お前は。


そんな心の声を隠し、返事を返す。


「いまいくね」


それも、この声を知っているからだ。

専属メイドティフォニー。


『メイリー』が一番仲の良いと思っていたメイド。

この子は、本当は私の事を憎んでいる。


「……お嬢様?」


ティフォニーは、所謂サポートキャラ。

『メイリー』の事を慕うふりをして、最後は、『メイリー』を裏切る。


思い出す前の私は仲良くしていて、ティニーと呼んでいたが、今の私にとっては、むしろ敵。


「行こっか……ティフォニー」


扉を開けて、私は彼女の顔を見ることなく、食堂に向け、進みはじめた。


「え、あの……お嬢様……?」


ティニーと呼んでいた私がティフォニーと呼んだことに疑問を覚えているようだが、自業自得だ。


「……なに?」

「い、いえ……その、あの……」

「……?」

「……なんでもないです」

「そう? ならいいや……あぁ、そうだ」


スタスタと、私は前に進みながら、言葉を続ける。


「あまりうるさくしないで? 何度もノックするのはマナー違反だよ」


背後でティフォニーが息を飲んだ。ショックなのか足音が止む。


「……ぅ、ぁ……」


……面倒くさい子だな、この子。


自分が裏切っているくせに、裏切られたみたいに。


……信用、してたのに。


……ティフォニーも、私の事好いてくれてるって思ってたのに。


なんだか、泣きたくなってきた。


……落ち着け、大丈夫、大丈夫。私なら、大丈夫だもの。この程度で挫折してたら、これから先持たないよ。



「お嬢様、お待ち下さいませ……っ」


後ろで追いかけてくる足音を聞きながら、私は思わず、溜め息をついた。


『ティニーは、メイリーお嬢様の味方ですよ!』


もう、期待なんてしない……期待なんて、してないんだから。


だから、私は……。


……。


「……ティニーの、嘘つき……」






☆★☆






「遅くなり、申し訳ございません」


自分には、やや高い食堂の扉を背伸びして開き、カーテシーをする。

ワイワイと賑わっていた家族達を無視して、席に着いた。


じっと椅子に座り、家族を見つめる。


誰も、こっちを見ない。


良く今までの私、これに気付かなかったな。


私、今6歳だよな。このときからそうだったとしたら、なんで『メイリー』は、主人公のことが好きだったんだろ。


……まぁ、もうどうでもいいや。


「……神に感謝して、いただきます」


モゴモゴと無心で口に食事を突っ込む。

……なにも感じない……ごめん、シェフと食材。アリアの口に合わせてあるから、私には合わないんだ。


味のしない食事を飲み込んでいく。

顔を上げると、主人公と兄が笑っていた。なんの話をしているのか、耳を立てると、どうやらお茶会が云々、だとか今日もアリアは良い子だの、なんだの。


魔法の話については、ゼロ。

うちの家は、両親が魔法をほとんど使えないから、しょうがない。


……私としては、あまり面白くない話題ばかり。


 下を向くと、薄い黄色のスープに、僅かに顔を歪めたアリスブルーの長い髪にラベンダー色の目の美少女……私が映る。


平常心平常心と言い聞かせて、なんとか笑顔になると、私は最後の一口を口に入れた。


……食べ終わるのが速い? 一刻も早くここから出たいなって思ったから、急いだんだよ。


「ご馳走様でした……すみませんが寝不足なので、失礼します」


嘘です、昨日8時間寝ました。


そういうと、周りから、え? みたいな視線を感じる。

特に背後のティフォニー。


それもそうだ、今までの私は、アリアが食べ終わるのに合わせていた。


 しかし、今はつまんない話聞いてるくらいなら、魔法書を読みたい。


 ゲーム開始まで、あと9年間。


違和感があるだろうが、ゆっくり変わろうとは思えないから、周りには、慣れてもらいたいところだ。



 2つに括った金髪にピンクの目のヒロインを最後に一目見て、私は食堂をでた。





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