突然「時を止められる」という能力に目覚めてしまった俺はこれでカンニングして余裕でテストで100点を取ってやります!
「やべーよ!今日のテスト終わったかもしれない」
「どうしたよ。そんな声出して」
放課後に俺の友人、タクはは自分の机でまえの席の俺にそう言う。タクの言う通り、明日は期末試験があるのだ。俺のいる学校はそこまで頭が良くないが、まあ平均と言ったところだ。
「俺全く勉強してねーよ!」
「そうか」
こう言うことを言う奴は大抵勉強をしていたりしていい点を取るのだが、タクのその不安げな表情を見る限り本当に勉強をしていないようだった。
「俺もしてないよ」
「本当か!!」
俺の場合は本当にしていない。だがそれはテストを諦めたわけでもなく。とある秘策があるのだ。
俺がパチン、と指を鳴らすとタクも、他の者達も動きが止まってしまった。
「本当にすげえな...これ」
そう、俺は時を止められるようになってしまったのだ。なんでそうなったのかは分からない。
ある日何気なく指を鳴らしてみると、時が突然止まった。特になにかをしたと言うわけではない。本当に唐突にこの力を手に入れてしまったと言うわけだ。
「本当にみんな止まってんなー」
少し奥の方に花瓶を落としそうになっている女子生徒の姿が見える。手から滑り落ちた花瓶は中に入った水を撒き散らしながら空中で静止している。黄土色に茶色い線が入っている花瓶で、おそらくそこそこの値段はするだろう。花瓶を持ち床に置く。こうやって止まっているものに干渉することだってできる
「さて...」
そう言いながら時を進める。流石にこぼれた水まではできないので女子生徒の足元にはこぼれた水が床にばら撒かれる。
だが花瓶は割れずに床に置いてあるので女子生徒は少し不審がっていた。
「で、どうするよ」
「どうするって...」
「社会は捨てて数学に全力するかな」
「ああ..」
俺はそんなことをしなくても余裕だった。なぜなら時を止められるのだから。時を止めてしまえばカンニングし放題だ。しかもそれを咎めることはできない。そりゃあそうだ。証拠など全くないのだから。
「やべえよーほんとやべえよー」
そう言いながら頭を抱えるタクに、俺は「まあなんとかなるさ」とだけ言った。なんだか余裕そうな俺にタクは少し不思議そうな顔をしていた。
「おい、なんでそんな余裕なんだ?」
「ま、まあ色々秘策があってな」
「教えてくれよーなあ!」
「それはちょっとな」
流石に時を止めてカンニングとはいえない。そんな事を言ったら大変なことになるだろう。
「ケチー。まあいいや。とりあえず明日乗り切ろうな!」
「ああ、もちろんだ」
そう言いながらお互いに握手をした。
「聞いたか?隣のクラスの田中の父親、リモートでなんか会議してるらしいぞ?なんか白の...なんとかを倒す会議だとからしい」
「光の結社...じゃなかったか?」
「たしかそうだったな」
「あ、俺もう帰るわ。じゃあな」
そう挨拶だけして走って教室を出た。
家に着き「ただいまー」とだけ言って階段を登り自分の部屋に向かう。扉を開けてベッドにだいぶすると毛布が俺を受け止めてくれる。
「明日試験なんでしょ?勉強しなくていいの?」
ベッドの上でスマホをいじりながらゴロゴロしていると母親が部屋に入ってきてそう言う。だが俺は少し母親の方に目をやって「大丈夫だって」と言ってまたスマホに目を向けた。
母親の方もぶつぶつなにかを言いながら扉を閉めた。
「とりあえず試験勉強のフリだけしとくか」
時を止められてカンニングし放題だだと言うのに、何を勉強しろと言うのか。机に向かって数学の教科書を開く。公式やら数字の羅列が目についてすぐに教科書を閉じた。
昔からこう言うのは嫌いだ。数字を見ているだけで頭が痛くなってきそうだ。
「ふー」
そう言いながらベッドに寝そべる。手を前に突き出しグーパーと指を動かしながら天井についている電気を見た。もう寝ようかと考えているうちに睡魔と言う奴は向こうからやってくる。
うつろうつろになりながらもすぐに眠ってしまった。
試験当日となった。試験官の先生が入ってきて裏側で紙を配る。そしてまだ開かないように!という指示を出しテスト用紙を配りおえると腕を組んで椅子に座った。少しして先生ははじめ!と言う合図を出す。その合図とともに誰もが机の上に裏返してあった紙をめくる。どれも難しいそうな問題だ。だがおれには関係のないことだ。
しばらくぼーっとテスト用紙を眺める。終わる寸前ぐらいで時を止めて他のやつの回答を見ればいいのだ。それまで暇だな...。
終わる5分前ぐらいまで待ち、時を止める。そして立ち上がるが、もちろん時を止めているので俺が席を立つことに疑問を持つ者など誰一人としていない。
「ふむふむ..ここはこうなのか..」
隣の席の回答問題を書き写す。この隣の席の奴はいつも90点ぐらいとるとても頭のいい男だ。なのでおそらくこいつの答案を真似して書けばいい点が取れると踏んだのだ。
「さて、もういいかな」
そう言い席に戻りまた指を鳴らすと止まっていた時がまた戻った。そして少しして先生の「そこまで!」という声が聞こえてくる。後ろから答案を回収し一番前の席の者がその答案を回収する。そして全部回収し終わると教室から出て行った。
「どうだった?俺は案の定ダメだったよ」
「まあ、ぼちぼちって感じかな」
「まああんな余裕だったからな」
テスト返す日が楽しみだ。きっといい点なのだろう...と期待が膨らむ。
他のテストも同じようにカンニングし、授業が終わった。帰ろうとする俺に、担任が近寄ってくる。
「ちょっといいか?」
「はい?」
担任に呼ばれるようなことなどしていないはずだ。まあ実際にしているがそれを咎めるのは不可能だ。何の用なのだろう?
「お前...カンニングしただろ」
「えっ???」
俺はその言葉にドキッとした。まさかバレた?いや、ならなぜバレた?時間を止めているのだからバレないはずだ。たしかにあの場、いや見ていないがおそらく校舎全体が止まっていたことだろう。なのになぜ...?
「えええっと、どういうことですか」
「だってな...」
少し間を開けて担任はカンニングだと判断した理由を述べた。それは、まったくもって簡単なことだった。
「お前、全部の回答が隣の加藤と同じじゃないか」
「....あ!!」
今更、俺は重大なミスに気づいたが、その時にはもうすでに遅かった。
「あいつに渡したのは失敗じゃったのう」
とある場所で爺さんは一人の生徒の映像を見ながらそう呟く。その生徒がカンニングをしたことで怒られていると言う場面の映像だ。隣の凛々しい顔つきの男も「うーむ...」と言いながらその男のうつっているモニター見る。
「まさかああ言う風に使う奴がいるとは...我々はただ能力バトルをさせるために地球という所の子供に色々な能力を与えたんですがね...」
「そうじゃのう...時を止める能力を与える相手を間違えたのか...それともこの星の者で実験するのが間違いだったのか...」




