第2話
視界いっぱいに拡がったもふもふは身の前にいる黒色の毛に金色の瞳の大きな狼のしっぽだった。
……お母さん?
全く見覚えがないのに思わずそう思ってしまう。
暖かい……
前世では、お母さんもお父さんもいつも仕事で家にいなかったから、近くにいてくれるのは、とても嬉しかった。甘えるように頭を擦り付けるとお母さんはぺろぺろと舐めてくる。くすぐったくて思わず笑ってしまう。それからしばらくは、お母さんとジャレついていた。すると、お母さんがいきなりスクッと立った。どうしたの?と目で問いかける私を安心させるようにぺろっと舐めてから、おかあさんはどこかへ行ってしまった。
やることがなくなってしまったな…。
そういえば今のステータスはどうなっているのだろう?
『ステータスを表示します』
種族:ダークウルフ
名前:アイラ
レベル1
体力:50/50
魔力:無限
〖スキル〗
氷創世
闇創世
アイテムボックス
隠密
索敵
人化
幻影創成
〖固有能力〗
体力回復
魔力無限
世界辞書
経験値2倍
っ!?
誰!?
当たりをキョロキョロと見回すが私以外ここには誰もいない。
『私は世界辞書です。』
ああ、なるほど。世界辞書は、私が転生する時に選んだ固有能力だ。世界辞書なんて書いてあったから、この世界のことを全く知らない私にはぴったりだと思って選んだんだ。本物の辞書のように検索するのかと思ったら、こんなふうになっているんだな。と1人で納得していると、お母さんが戻ってきた。口に何かをくわえている。これは何だろう?
『ホーンラビットの死骸だね。』
?いきなりフレンドリーになったな。
『どんな喋り方がいいかなって考えてたら、アイラの記憶の中にこんな喋り方の友人がいたでしょ?だから、真似してみようと思って。』
確かにこんな喋り方をした奴がいたな。私に本を進めていたのもこいつだったな。あいつは今何をしているんだろう?うるさいけど優しいやつだったからな…私の死に今もないていないといいけど。
気を取り直してお母さんがとってきたホーンラビットを見る。お母さんの方を見ると、食べなさいというような仕草をしてきた。
それなりにグロいんだけどな…
ま、まあ味覚も狼になっていたら美味しいと感じるかもしれないし。
私は意を決してそれにかぶりついた。
んっ!意外と美味しい。
肉は結構柔らかいし、生臭さもあんまり感じない。
味覚も狼になっているのだろう。味も美味しく感じた。
大きさが小さかったからか、まだ少しお腹がすいていた。
そうだ!索敵してみよう!
〖索敵〗
おお!
目の前にマップが現れた。その中に緑の点と赤い点がある。
緑の点があるところには、お母さんがいるから、きっと緑の点は敵意がないということなんだろう。そう思って緑の点をタップすると、ダークウルフと、種族名とステータスがでてきた。
ダークウルフ
名前:
レベル28
体力:135/150
魔力:62/120
〖スキル〗
闇纏
影手
闇槍
影沈
闇霧
〖固有能力〗
影を操る者
これが母さんのステータスか。
母さんも名前ないんだな。
『名前のある魔獣は少なくて、名前を持つものはすごい強いんだよ。だから、名有りの魔獣を見つけちゃったら、すぐ逃げた方がいいと思うよ。』
あれっ?ていうことは私結構強いのか?アイラっていう名前あるし。
『うーんでも、経験とか、全然ないし、名有りの魔物は経験豊富だから、逃げた方がいいと思うな〜。』たしかに体力も少なく、レベル1の私では強い魔物と戦ったら、直ぐに死んでしまうだろうな。
そういえばスキルに闇創成がないのはなんでなんだ?
『闇創成っていうのは、闇魔法の全てがイメージだけで使えるっていう転生者だけの、チートなスキルなんだよ。だから、闇創成っていうのはこの世界で君しか持つものがいないよ。氷創成も同じだね。』
なるほど。私はチートなのか。でも、世界辞書の言う通り全然経験が足りない。だから、魔獣を倒してレベルを上げていった方がいいだろう。
緑の点が味方なら、赤い点は敵だろう。片っ端からタップしていって私が勝てそうな魔物を探していく。
狼も哺乳類だから、最初はお母さんのお乳を飲むんじゃ?
とか、
どうしてお父さんはいないの?他の兄弟は?とかは異世界だからという理由で片付けちゃってください!
そこまで書く力が残ってなかった…