断固抗議する
こんばんは
分かりにくいとは思いますが、精一杯頑張ります。
「暑い。なんなの日本。暑すぎない?何もしてないのに汗が止まらないんだけど」
思わずひとりごちた。本当なら今日は冷房の効いた部屋で布団を被りながら一日中動画を漁るつもりだったのに。
「はあ。何が悲しくて隣町まで怖い話を聞きにいかないとダメなの」
事の発端は昨日の放課後だ。
「美菜!明日暇?暇だよね?よし!私に付き合ってね!」
「え?いや、何?なんなの?私何にも言ってないんだけど。それに夏は外出を学校以外しないって決めてんの。放課後に立ち寄るくらいならまだしも、休みの日にクーラーのない部屋から出るなんて絶対嫌」
「出たな出不精!そんな事じゃデブ症になっちゃうよ〜?うん心なし二の腕がもちもち・・・。痛っ!暴力反対!」
「うるさい!それに学校の登下校で嫌でも汗はかいてるんだから太ってない!アイスもかき氷系だからほとんど水みたいなもんだし!」
本当に失礼やつだ。梨沙とは小さい頃からずっと一緒の学校で、もう10年以上の付き合いになる。そのせいか私に対しては歯に衣着せない。そのうち泣かす。
「えー。その理論は通じないんじゃない?とにかく明日はS駅に13時に集合ね!」
「ちょ、ちょっと!せめて何をしにいくのか教えてよ!」
「あれ?まだ言ってなかったっけ?文化会館で怪談があるんだって!夏だから肝を冷やして涼みましょう、ってポスターが駅前の掲示板にあったんだ!で、そのポスターに載ってた人がちょーイケメンなの!」
「えっ、もしかしてそれを見に行くの?」
そんな事のために私の休日を潰されたくない。私は出来るだけ感情を込めて梨沙を見つめる。伝われ!この思い!
「正解!いや〜持つべきものは友だね、うん。あっ、ちなみにおばさんにはもう許可をもらってるから!チケ代ももらってるし!私は先に行ってるから現地集合ね!そしたら私部活があるからまた明日ね!バイバーイ!」
言いたいことだけ言って走り去っていく幼馴染みの背中を見つめることしか出来ない無力な私。はあ。
今思い出しても腹立たしい。それにママもママだ。勝手に許可を出して。またお高いアイスを勝手に食べてやる。私にはそれだけの権利がある。駅から文化会館までの道すがら様々な呪詛を吐いていると、気づけばもう着いていた。思ったより近いな。来るのは子供の頃の遠足以来だから余計そう感じただけかもしれないけど。
「美菜!こっちだよー!」
健康的な肌色をした我が幼馴染み様と無事合流できた。それよりも。。
「なんでそんなにオシャレしてるの?」
「だってイケメンと会うんだよ!?ダサい格好で会いたくないじゃん!」
「いや、一対一で会う訳でもないし、なんなら向こうは私らのこと認識しないだろうし」
「も〜。美菜は分かってないな〜。そんなことは百も承知なの!それでもするのが女の子なの!」
「あーハイハイ。わかりました私が悪うござんした。もう受付始まってるんでしょ?暑いからさっさと済ませて中に入ろ」
後ろで何か喚いている梨沙を無視してさっさと中に入る。口が達者だから、こんな時は無視するに限る。オアシスを目の前に不毛な争いをするほど馬鹿じゃない。
受付を済ませて中に入る。思っていたより人が多い。夏に怪談なんてと思っていたけど風情のある人が多いんだな、と少し感心してしまう。・・・お洒落をしてる女の人多くない?てかそもそも女性しかいない気がする。前言を撤回したくなった。指定された席に座ると少し遅れて梨沙がきた。
「酷いよ美菜。。無視してさっさと行っちゃうんだから」
「あんたが暑い中意味のわからないお説教してきたからでしょ」
「え〜。あっ、美菜これ!」
そう言うとブランケットを渡してくれた。相変わらず気遣いはすごい。ありがたく借りるとしよう。
「ありがと」
「いーえ!この時期は中と外の気温差が激しいからね。夏の必需品になってきちゃった」
ビーッ!と言う音がなって緞帳が上がっていった。
「いよいよだ!」
拍手の声に混じって嬉しそうな囁き声がした。
次からイケメンの語り。その次がホラー開始です