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邂逅の章 キレ

「<読者の意見>など、いちいち気にしてられるか!


当然だろう? 読者Aの意見を聞き入れて描けば、読者Bの不評を買い、AとBの折衷案を取り入れれば読者Cの反感を買う。


過去、そうして迷走した挙句に空中分解のようにして消え去った作品がどれほどあったのか、出版社側のお前が知らない訳がなかろう!」


「それは屁理屈というものです! 多くの読者が望むものを提供しなければまず振り向いてももらえません! とにかく手に取って読んでもらわないと何も始まらないんですよ! 先生だって分かってるハズです!」


「はっ! 笑わせる。手に取ってもらえるかどうかはお前達出版社の売り方次第だろうが! どれほど良い作品であっても、マネジメントに失敗したことで日の目を見なかった例がどれほどあるのか、お前達出版社は見て見ぬふりか!! 反吐が出るわ!


お前達はいつもそうだ! 編集の指示通りに書いたというのに芽が出ずに潰された創作者がいることを知らんとは言わせんぞ! お前達が<売れる本を作るプロ>だと言うのなら、どうしてデビューしたものの鳴かず飛ばずで消えていった者達がいるんだ!? お前達の言う通りにすれば売れるのではないのか!?


なのにお前達は、売れなければそれを創作者の所為にして切り捨てる! 


創作者はあくまで作品を生み出すだけの存在だ! それを売るのがお前達の仕事だろうが! 売れないのはお前達の能力の問題だ! 


売れるものを生み出せない創作者が悪いと言うのならば、元よりそんな奴をプロデビューさせたお前達出版社側に見る目がなかっただけではないのか!? ああ!?」


「ぐ……! 確かにそういう事例があることは否定はしません! しかし、編集は売れる作品というもののノウハウは持っていても、それを形にする能力がないから編集者をやってるんです! 自分で書けるなら書いてますよ! 


編集者と作家はチームなんです! そのどちらの能力が欠けても人気作は生まれない!」


「だったら、創作者を使い潰すのはやめろ! 青田買いして取り敢えずデビューさせてみて、それから売れそうな奴、駄目な奴を選別するのはやめろ! 育てる気がないのなら初めから手を出すな! 


そんなことをしていて、なにが<売れる作品のノウハウ>だ!! ふざけるでないわ!!」




などと、蒼井霧雨と月城さくらは、いつものように激しい言葉の応酬を繰り返していた。


だがこの日、蒼井霧雨は、アオは、微妙な違和感を覚えていた。さくらにいつものキレを感じなかったのだ。


だから、


「……お前、なんか悩み事でもあるのか……?」


と、脈絡もなく、それまでの話の流れをぶった切って、アオはそんなことを口にした。


「……え…!?」


突然の問い掛けに、さくらは一瞬、素に戻ってしまった。それが図星であることを自ら告げたようのものであった。



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