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饒舌

『あなたは自分が逆に吸血鬼に殺されるかもしれないのを分かっててやってるんでしょう?』


それは、さくらの言う通りだった。いくら自分が強く、決して吸血鬼などに負けはしないと自分に言い聞かせていても、これまでにも危ういことは何度もあった。だから、いつだってその<覚悟>はしている。


覚悟をしているからこそ負けないように備えるのだ。


恐らく、彼の言う<バカ>にはできないことではないだろうか。


彼女はそれを言っているものだと思われる。


ただ<バカ>だから何人も人を殺せる訳ではないと。


もちろん、考えなしだからこそそんなことができてしまう人間もいるだろう。しかし全員が全員、そういう訳でもないと、さくらは言っているのである。


彼女は続ける。


「あなたは、手当たり次第に気に入らない相手を殺しまくってる訳じゃないと自分でいってましたよね。あなたはそうなのに、他の人はそうじゃないって言うんですか?


あなたも警察に捕まってそれまでしてきたことが明るみに出れば死刑にだってなる可能性がありますよね。それどころか、テロリストとして対応されたりしたらその場で射殺とかされるかもしれない。


あなたがこれまでに何人もの吸血鬼や眷属を殺してきたってことは、吸血鬼も眷属も、もちろんダンピールも完全に不死不滅の存在って訳じゃないってことですよね。


だとしたら、きっと今の人間の強力な武器でなら、あなたを殺すことだってできてしまう。違いますか?」


「……」


さくらの質問に、エンディミオンは答えなかった。答えなかったことが答えなのだろう。


「あなたと同じように、自分が殺されるかもしれないのを分かっててやる人もいるというのが、『腕を折られたって痴漢をやめられない人もいる』っていう証拠になりませんか?」


「……」


「痛い目に遭わせてやればもう二度とやらないなんてのは、ただの幻想ですよ。痛い目に遭わされたってどうしたってやる人はやるんです。それなのに『痛い目に遭わせてやればいい』っていうのは、単なる憂さ晴らしじゃないんですか? 憂さ晴らしを容認してるだけじゃ、世の中は良くなりませんよ」


昨日までの彼女とはまるで人が変わったかのように、さくらは饒舌に自分の考えを述べた。それはたぶん、ここまでの彼の様子を見て、ある程度は相手の話も聞いてくれる器を持った人だという実感が得られたからだろう。


そう。さくらは改めて感じていたのだ。


『この人、先生に似てる…』


と。頑固で思い込みが激しくて我儘だが、同時にただの<独善>ではない一面も、確かに持っているというのが、さくらの得た印象なのだった。



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