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朝食

「……夢…?」


翌朝目が覚めた時、さくらがまず思ったのがそれだった。昨日のあれが悪い夢であってほしいという願望だったのだろう。


だが、


「目が覚めたか? よくこんな状況で眠れるな、お前」


「!?」


不意に声を掛けられて、ビクっと体が跳ねる。


『夢じゃ…なかった……』


仕事では安易な<夢オチ>を使われるとNGを出すところだが、現実では、


『夢オチだったらどんなに良かったか』


と思わされることが時にあるというのを改めて思い知らされた。


「あ…おはよう…ございます……」


咄嗟に丁寧な挨拶になってしまって困ったような表情になった。


あまり気分のいいものではなかったからだ。


とは言え、反抗的に振る舞って機嫌を損ねられでもしたら気が変わるかもしれない。


『今はとにかく下手に出よう……』


そうするしかないと思った。


「……今日は昼前に出社します…」


取り敢えず今日の予定を告げつつ、体を起こす。


着替えを手に取り、脱衣所へと入る。着替えもそうだが、髪を整えたりもしないといけないからだ。


そんなさくらを、エンディミオンは何も言わずに見ていた。


取り敢えず着替えて、髪を整え、軽く化粧をしてリビングに戻る。


すると、テーブルの上にトーストとスクランブルエッグとホットミルクが並べられていた。


「え…?」


戸惑うさくらに冷淡な表情のままでエンディミオンが声を掛ける。


「勝手に用意させてもらったが、別に困らんだろう?」


「あ…はい」


戸惑いながらも席に着き、用意されていたそれを口にした。


見た目も味も、ごく普通だったが、なんだかそれが意外に感じてしまう。


すると、彼女が意外に感じているのを察したのか、彼は、


「何を意外そうな顔をしてる。オレはお前よりもずっと年上だと言っただろうが。一人暮らしの経験も長い。このくらいできて当たり前だ」


憮然とした表情で呟くように言った。そんな彼に、さくらは、


「あ、ごめんなさい…!」


と思わず謝ってしまう。


するとエンディミオンは、さらに憮然とした表情で、


「別に謝らなくてもいいが…」


顔を背けてしまった。


『あれ…? なんか拗ねてる…?』


彼のそんな姿が、生意気な少年がつい拗ねてしまっているようにも見えて、何とも言えない感覚がふわっと湧きあがってくるのを感じた、


だが、迂闊にそれを表に出すとまた何を言われるか分からないので、


『カワイイ』


と声に出そうになってしまったのを必死で抑えた。


そんなこともありつつ朝食を済ませたさくらに、エンディミオンは、


「昨日も言ったが、オレは決して吸血鬼を逃がさない。それだけは忘れるな」


と改めて告げたのだった。





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