表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
192/291

調査

時間は少々遡り、建て替えの工事が始まる以前、地下の調査が行われていた。


重機で基礎のコンクリートをはつり、地面を露出させる。それから慎重に重機で土を掘り返す。


自衛隊の調査で他にはもう不発弾は埋まっていないと確認はされたものの、やはり緊張感はあった。


あらかじめ、エンディミオンに倣って何度も丁寧に地下を探査したミハエルはもう大丈夫だと確信していたけれど。


すると、小型のパワーショベルの一掻きでそれは現れた。


「!?」


鉄製の何かが現れた時には現場の作業員達に緊張が奔ったものの、それがただの鉄板だと分かってホッとした空気が広がった。


しかしそれでも完全に緊張感は解けない。その下に何が埋まっているかはまだ分からないから。


さらに慎重に土をどけて完全に鉄板を露出させる。すると、端にワイヤーを掛けるのにちょうどいい穴が開いていたことで、<玉掛け>を行い、防空壕ないし地下室と思しき空間を塞いでいたらしき鉄板をどける。


「……」


現場にいた誰もが、遺体などが出てくる可能性を考え、その時に備えて覚悟を決めていた。


「穴だ…!」


作業員の一人が声を上げる。それは、人一人が余裕で通れそうな、コンクリートで固められた穴だった。


「……」


作業を見守っていたアオも、緊張のあまりミハエルの腕をぎゅっと掴んでしまった。ミハエルはそんなアオの手にそっと自身の手を触れさせる。彼女を安心させる為に。


念の為に面体を付けた作業員が慎重に穴に近付き、有毒なガスなどが発生していないかを専用の装置で確かめる。しかし、幸いにもそれらしい反応はなかった。そこで今度は、照明を差し込んで穴の中を照らした。


「……あ!」


と作業員の体が竦むのが見えた。


『まさか、死体が……!?』


そう思ったアオだったが、しかし作業員は、


「なんだ、人形か……!」


ホッとしたように言ったのだった。


そう。灯に照らし出されて、一瞬、人影のように見えたものがあったものの、よく見ればそれは椅子に座った大きな人形だったのだ。


さらに作業員は照明で穴の中を隅々まで照らし、危険がないことを確認し、


「大丈夫みたいです。確かめてもらえますか?」


現在の所有者であるアオに向かって声を掛けた。


死体や何か異様なものはないとのことで少しホッとしたアオだったものの、やはり不安はあって、恐る恐る穴を覗き込んでいく。


一方のミハエルは、そんなアオの手をしっかりと掴んで励ましてくれていた。


と同時に、平然と穴を覗き込んだのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ