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何か気になること

「しかし、さっきのは何だったんだろうな」


アオのマンションに戻ると、寝ているあきらを抱いたまま座ったさくらにそう話しかけた。


「何でしょうね? 洸にとって何か気になることがあったんでしょうか」


戸惑ったようにさくらが応えると、そんな二人にミハエルが言った。


「もしかすると、本当に洸にゆかりがある家だったのかもしれないよ」


と。


「どういう意味?」


問い掛けるアオに、彼は応えた。


「実は、あの家の床下、たぶん基礎の下だと思うけど、何か空間があったんだ」


その言葉に、アオとさくらがハッとなる。


「もしかして、キッチンで床を踏み鳴らしてたのは…?」


「うん。音の反響で地面の下の様子を探ってみたんだよ」


「そんなこともできるんだ…?」


「まあ、音、と言うか振動を感じ取るだけだからね。理屈の上では人間だってできる人はいると思うよ」


サラッと応えるミハエルに、しかしさくらは戸惑っていた。


「でも、それが洸と何の関係があるんでしょう?」


そんなさくらに、彼も、


「さすがにそこまでは今の段階じゃ分からない。だけど明らかに不自然な空洞だった。もしかするとあの家が建つ前にあった家の地下室とかかもしれない。


あの家が建てられてから六十年ということは、その前に建ってた家は先の大戦の時期にあったものかもね。となれば、<防空壕>の跡っていう可能性もあるかな」


「防空壕……!?」


「確かに、家の床下を掘り下げて防空壕を作った家も戦時中にはあったと聞きます。それの名残……?」


「うん。可能性はあるね。実は僕も、アオが仕事に集中して暇だったりした時にいろいろこの国について調べてみたんだ。それで、防空壕のことも知ったんだけど、正直、防空壕とは名ばかりの一時避難場所も多かったみたいだね。


ただ、あの家の地下にある空間は、返ってきた振動の感じからすると割と強固な壁を持った物みたいだ。だから、上の建物は空襲とかで焼け落ちたけどそこだけは残って、でもその土地を再利用した人はそれに気付かなくて、もしくは気付いてた上でそのまま今の家を建てたのかもしれない。


あの家そのものはこれといって特別なものは何もなかった。何かがあるとすれば、たぶん、その地下空間だと思う」


ミハエルの説明を聞いて、アオの頭に浮かんだものがあった。そして彼女はそれを言葉にする。


「もしかして、そこに、洸のご先祖様が眠ってたりする……?


ほら、家が焼け落ちて防空壕だけが残ったりしたら、場合によっては防空壕に避難したまま亡くなってたりってこともありえるじゃん」


「……確かに、その可能性は……!」


ミハエルの発見から得た考えに、アオとさくらは気持ちが高揚するのを感じていたのだった。



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