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教育方針の違い

あきらとどう接するかという点について改めて認識をすり合わせたことで、より一層安心してデレデレすることができた。


この辺りを曖昧にしておくと後になって、<教育方針の違い>などで衝突することになる事例が多いのを知っていたからだ。


こういうことを最初のうちにきちんと話し合わずに、なあなあで済ませようとする人間ほど、いざ衝突する段階になると意固地になってしまって引かなくなることが多いという印象がある。


それは何故かと考えれば、結局、引く気がないからこそ最初から話し合いたくないのだろう。そのくせ、いざとなったら相手が折れて自分の言い分に従ってくれると期待しているから、後回しにしようとするのかもしれない。


そんなムシのいい話などそうそうないというのに。


アオとさくらは、周囲の人間や、見聞きした話から学び、きちんとあらかじめ詰めておこうと考えたのだ。


そしてそう思えたのは、結局、普段から自分の言葉に耳を傾けてくれる相手だということを確かめ合っていたということだと思われる。


お互いに上辺だけを取り繕っていい顔をしているだけの関係であれば、できないことだった。


「ホントにカワイイなあ…♡」


さくらの胸に抱かれて、んくんくと懸命にミルクを飲む姿がたまらない。初めて人間の姿になった時に比べるとかなり大きくなったが、それでも可愛い。


大きさだけで言えば一歳になるかどうかくらいだろうか。なので離乳食も進んでいる。離乳食を食べた後でまたこうしてミルクを飲んでいるのだ。


「成長の早さは狼に準じてるんだな」


「ですね」


ウェアウルフという不可思議な存在の生態についてもこうやって触れられるのだから、その点でも興味は尽きない。


ミルクを飲み終えた後、さくらは縦抱っこにしてトントンと背中を軽くたたいた。もう一歳くらいの体つきになって離乳食も始まっているので必要ないと言われればそうなのだろうが、人間の赤ん坊に比べればあまりに成長が速いこともあって止め時が分からず、つい習慣でそうしてしまう。すると、


「けぷ」


とげっぷをした弾みで洸がミルクを少し吐き戻してしまった。実際、人間の赤ん坊でも一歳くらいになってもこういうことはある。


「おっと…!」


アオがすかさず清潔なタオルを手に取り、洸の顔を拭き、吐き戻されたミルクが掛かったさくらの肩も拭く。


こういうことはこれまでにも何度もあったので、二人ともすっかり慣れてしまっていた。実際、赤ん坊の世話をしていれば当然のことだ。


最初の頃などは、洸が狼の姿をしていると自力ではオシッコやウンチができないこともあるので、ベビーオイルをつけた指先でオチンチンやお尻の穴に軽く触れて促したりもした。狼や犬では母親が舐めてそうするのを、代わりにしたのだ。


それが当たり前にできてしまうくらい、二人はすっかり<洸の母親>になっていたのだった。



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