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一緒に生きる

割と突っ込んだ話になったことで、霧雨はこの際だからと<訊きにくい話>を訊いてみることにした。いずれ機を見てとも思っていたが、今がその<機>だと思ったのだ。


「ミハエルのお母さんが亡くなったのは、病気とか……?」


『病気とか?』と濁しはしたものの、実際には『殺されたの?』というニュアンスだった。不老不死とも言われている吸血鬼が亡くなるとなれば、どうしてもそっちを思い浮かべてしまう。


けれどミハエルは、少し寂しそうに微笑みながら、


「違うよ。あ、でも、病気と言えば病気なのかな。寿命で体が弱って、普段なら罹らない病気になって亡くなったから。肺炎だったんだ」


と。


「ごめんね…」


辛いことを思い出させてしまったと思い、霧雨は申し訳なさを感じた。でも同時に、


「吸血鬼も肺炎とか罹るんだね」


などとつい言葉にしてしまう。


それに対してミハエルはこともなげに答えた。


「吸血鬼は長命だけど<不老>でも<不死>でもないからね。人間よりはずっと成長や老化が遅いし、死ににくいだけで」


「そうなんだ?」


「そういうこと。吸血鬼としての寿命が近付くと、殆ど普通の人間と変わらなくなるんだよ。だから病気にもなるんだ」


「そっか……」


寂しげに微笑むミハエルを見て、霧雨は胸が痛んだ。けれどそんな彼女にミハエルは言う。


「申し訳ないと思ってるかも知れないけど、気にしないで。僕もママもちゃんと納得してるから。ママも微笑みながら眠ったよ」


そう応える彼に、霧雨はまた胸がつかえるのを感じた。彼の健気さにたまらなくなる。だから言ってしまった。


「これからは私が<家族>になるから…! ミハエルを一人にしないから……! だから私を眷属にして……!」


でも、ミハエルは優しく微笑み返しながら応えた。


「ありがとう。お姉さんの気持ちは嬉しい。だけどそれはまだ早いかな。もう少しじっくり考えてからのほうがいいと思う。吸血鬼になると本当に人間としての生き方とは全く変わっちゃうはずだから。そういうのを良く考えて。お願い」


まるで子供を諭すように丁寧に穏やかにゆっくりと話し掛ける。確かに彼の方が実際にはずっと年上だというのだから、それでおかしくないのだろうが。


そんな彼に、霧雨は縋るような視線を向けて、


「私じゃ駄目なの……?」


と問い掛けた。ミハエルは軽く瞳を伏せて緩やかに首を横に振ったのだった。


「違うよ。僕もお姉さんのことが好き。でも、だからこそ後悔してほしくないんだ。吸血鬼になることばかりが、吸血鬼と一緒に生きることじゃないって分かってほしいんだ。人間は人間として生きながら、一緒に暮らすことだってできるんだよ」



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