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リスクとメリット

「確かに僕達吸血鬼にとっては、一人一人の人間は脅威にはならない。人間に伝わってる僕達の<弱点>は、たまたまた勝てた時の話に尾ひれがついて広まっただけのものでしかない。僕達は人間より圧倒的に強いんだ。


しかも、人間が使える武器や兵器や軍隊だって、僕達は使うことができる」


「そうなんだ?」


「うん。軍の中枢にいる人を魅了チャームで操っちゃえばいいんだから」


「あ…そっか……!」


「近付くのだって難しくないよ。僕みたいにまだ子供の姿をしてたら、その人の子供と友達になって家に遊びに行くことだってできちゃう」


「うわ~…人間のセキュリティなんて吸血鬼から見たらやっぱガバガバなんだ」


「無理もないよ。だって人間相手のセキュリティなんだから。


人間にとって<実在する化け物>だった頃には<吸血鬼対策>も考えられたりしてたけど、もうお話の中だけの存在になっちゃった今じゃ、具体的に対策してるところも少ないし」


「少ない? ないわけじゃないんだ?」


「そうだね。さすがに大国の上層部は吸血鬼の存在も把握してて、それ用のセキュリティを実施してるところもある。実はそれに協力してる吸血鬼もいるくらいなんだよ」


「え? それいいの…? 吸血鬼が人間に協力って……」


「あはは♡ 僕だって今、アオとこうしてるじゃない。普通に親しくもなれるからね。友人として協力だってするよ。前にも言ったけど、実際に協力もしてきてる」


「な…なるほど…」


「それに、吸血鬼が組織立って人間と敵対する気がないことは、それでもう、一部の人間には伝わってる。それを世間に公表できないから一般には認識されてないだけで」


そう言われた時、アオの表情が少し曇った。


「公表しちゃえばいいのに…そしたらもっと堂々と……それに、ダンピールのことも……」


寂し気に言う彼女に、ミハエルは優しく微笑みかける。


「公表することによる諸々のリスクとメリットとを秤にかけた結果だろうね。


そのことに加えて、もし人間達が僕達を徹底的に排除するとなったら、僕達も黙ってやられるわけにはいかない。今言ったように、人間の軍隊を操ってでも抵抗する。小国の軍隊でも、兵士を眷属にしちゃえば、世界最強の特殊部隊とだって互角に渡り合える。


それだけじゃない。戦争になれば、さらに大きな衝突にだってなるかもしれないし、最悪、大国同士の戦争に発展することだってないとは言えない。そのことを考えたら、現状で吸血鬼は大人しくしてるんだから、『障らぬ神に祟りなし』って考えるのはむしろ普通じゃないかな」


「は~…なるほどね~……」



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