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「またつい熱くなってしまったが、こんな私の<チラシの裏>に耳を傾けてくれるお前には感謝してる。ありがとう」


そう言って深々と頭を下げるアオに、さくらは静かに首を横に振った。


「お礼を言いたいのは私の方です。ラノベの担当になったばかりで右も左も分からない私に、先生はちゃんと向き合ってくれました。最初は怖い人かなとも思いましたけど、本当はウブな方だって分かった時は嬉しかった……


不器用でもしっかりと向き合ってくれる先生だったからこそ、私はここまでやってこれたんです……」


さくらのその言葉に、アオは照れくさそうに頬を染めながら頭を掻いた。


「いや、私はそんな大層なものじゃないよ。ただ人付き合いが苦手で、ホントに不器用なだけだ。頭ごなしに他人を否定してくる人間が嫌いで、自分はそんな人間になりたくないと思ったにすぎん。


まあ、その割にはお前相手だと好き勝手言ってるが…」


「そうですね。でも、私相手になら本音も出せる。先生も私の本音を受け止めてくれる。それが大事で難しいんじゃないですか? 私にとってはすごくありがたかったですよ」


「なら、お互い様だな。お前が担当で本当に良かったと思う。


ああ、ところで、<響〇>のことなんだが、私が少年好きになったのも、たぶん、そこからだと思う。明日夢少年のことが私は好きでな。初恋ってわけでもなかったと思うが、今でも思い出すたびに胸があたたかくなるのだ」


「そうなんですね…♡」




そんなこんなで打ち合わせも終わり、さくらが帰ったリビングに、ミハエルが入ってきた。


「本当にいい友達だね」


さくらの分のカップを片付けながら、ミハエルが言う。


その言葉に、アオは目を細めた。


「まったくだよ。出逢いというものは本当に大切だ……


…さっきの話の続きなんだが、私を<仮面ラ○ダー>好きにした張本人の大学生に、<響○>のことを全否定されたことが当時の私にとっては熱を出すほどショックでな。翌日、学校を休んでしまったのだ。


しかも、元々あまり他人と関わるのが得意でなかった私は、同好の士であってもすぐに打ち解けられなくなってしまった。同じように私が好きなものを全否定されたらと思うと怖くなってしまってな……


まあさすがに今ではそのショックも和らいだが、正直、今でも棘のように心に刺さっているのは感じる。


それもあって、ネットとかでの<炎上>なんかを見る度に悲しくなってしまうんだ。


どうしてそこまで、他人の好きなものを貶すことができるんだ? いや、百歩譲って作品に対する批判は分かるが、それを好きだ、面白いという人間まで貶して攻撃して、


『そんなものを好きだとか言う人は認めない』


とまで言いのけるんだ?


他人が何を好み、面白いと思うかにまで口出しするとか、本当に何様だ?と思うよ……」


「アオ……」


悲しげに語るアオを、ミハエルがそっと抱き締めたのだった。



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