表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/291

<強さ>とは

<強さ>とは、必ずしも腕力や体力、武力といったものだけを指すのではない。


むしろ、そういう<分かりやすい力>が最大限の効果を発揮する為には元より<心の強さ>ととでもいうべきものがあってこそなのだろう。これがいわゆる<根性>と呼ばれるものの本質なのかもしれない。


だから、<根性>ばかりをもてはやすのは違うかもしれないが、それを全否定してしまうのも違うのだと思われる。


どちらも必要なものなのだ。


特に、腕力や体力、武力といったものを用いない場合には、実はそれがさらに大きく影響する可能性はある。


もっとも今回の場合には<根性>という言葉よりもやはり<心の強さ>と言った方がしっくりくるだろうが。


「あなた相手にいくら強がってみてもたぶん蚊の羽音よりも弱っちいものだと思うけど、相手が人間だったら、ましてやストーカー程度が相手ならそれなりに役に立つよ」


嘲るように『強さとやらを見せてみろ』と言い放つエンディミオンに、アオは静かに、しかしきっぱりと応えてみせた。


マンションを引っ越すのは、確かに他人から見れば<逃げ>なのかもしれない。


だが、無駄に争わず実質的な被害を少なく済ませる為のそれは、いわば<戦略的撤退>に類するものなのではないだろうか。


ここで、


『逃げるのかよwwwww』


と煽ってくるような輩の挑発に乗らないのはむしろ<心の強さ>を要するものだと思われる。


目先の見栄に囚われて無謀なことをするのは<勇気>ではなく<蛮勇>だろう。


しかし同時に、引っ越ししたからといって今回の件が解決するとも思っていない。引っ越しをするのはあくまで間合いを取る為だ。間合いを取ることで問題がより拗れるまでの時間を稼ぎ、その間に対処法を探るのが一番の目的だった。


逃げるだけでは解決しないことも分かっているのだ。




翌日は、ミハエルもアオと一緒に内覧に出ることになった。


アオのフード付きブルゾンを借りて日光を遮り、かつ気配を消してアオに付き従う。


すると、不動産業者の自動車に乗り込む際に、マンションを張っていた女性の姿を改めて確認することができた。


そして案の定、女性はタクシーで尾行してくる。不動産業者の看板が入った自動車に乗って出掛けるのを見て、引っ越しを考えていると察したのだろう。


だが、それこそが狙いだった。


内覧に行った物件の一つを契約し、アオは準備を進める。


いよいよ引っ越しの当日、引っ越し業者の作業をマンションの前で見守るアオの姿があった。その隣には、大きなブルゾンを着て、フードをすっぽりとかぶった<子供>の姿も見える。


ミハエルだった。


そんな二人の姿を、例の女性がしっかりと見ていたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ