#1 ヒラ社員・豊中結
前、失礼します。こんなとこ読んでも面白くないよ(適切な助言)。
小説ではなく、前までは演劇の台本書きとかやってました、どうも黒歴史製造機です。
自己表出したいけど、内面を否定される怖さから出来ないチキンです。ぶひぃ(動物違い)。
そんなこんなで、ミジンコ頭の夢物語。お付き合い頂けると光栄です。
黒縁の眼鏡に簡素な顔立ち、一般人を絵にかいたようであるが頭は切れそうな風貌の、しかし実際は20歳の大学を中退した、ただのヒラの会社員、豊中結は他数十名の人々と会議室で頭を悩ませていた。といっても、ここは豊中の通う会社ではないし、会議室の面子は老若男女様々であり、なんといっても今日は日曜日であった。そんな、朝九時から夜五時、プラス強制サービス残業を八時頃までを、毎週月曜から金曜とこなす多忙な会社の犬・豊中が貴重な休みを削ってまで考えている議題は「第21代魔法少女、関西地区選出選考」といったものだった。
・・・なにも、働きすぎで豊中他数十名の頭がおかしくなってしまったのでは断じてない。しっかりとした理由と考えがあって会議は成り立っている。
今から21年前、日本は統計を取り始めてから一番酷い犯罪率をマークした。世の中は誰の目にも目に見えて荒み、事あるごとに隣人が犯人ではないかという疑心暗鬼の情が人々を包んでいた。警察署の電話は止むことなく鳴り続け、日本の警察は終いにその能力を失った。陳腐な新興宗教が隆盛し、精神安定剤の価格は高騰、それに伴い闇取引では向精神系麻薬が横行した、次いでその麻薬の合法化を求める人々が虚ろな目で列を成し、国会議事堂に行進を開始、議会は話し合う間もなく壊滅、最後には無政府状態となり国連からの支援を受けるまでとなった。
そんな世に、一人の正義感溢れる女子高生が居た。名は「宇都階 真帆」。大阪在住のどこにでもいるような少女だったと見たものは語る。当時、彼女は高校三年生。学校行事の修学旅行で東京を訪れた彼女が自由時間に見たのは、例の麻薬合法化デモ隊と反デモ勢力の衝突だった。友達とアイス食べ歩きしながらそれを目撃した彼女はふと友達に、
「勘弁してくれや、ほんま。また、大人が喧嘩しとる。」
と漏らし、あろうことか衝突の真ん中に分け入り、
「あのぉ、しょーもないんですけど。大人でしょ?何?猿?ミジンコ?大腸菌?」
と訴えたのだった。
普通なら暴徒化した両陣営から袋叩きにされてもおかしくない事だが、その訴えは不思議と余すことなくデモ隊と反デモ隊の人々の心を打ち、暴徒達は鎮静化した。
その一件を発端とし、まるで完成しかけのドミノが何らかの弾みで倒れていくように日本の全国的な退廃的状況は改善していった。
そして彼女は救世のヒロインとして、初代魔法少女に据えられ、JMGA(全日本魔法少女協会)はできた。
もちろんこんな事、政府は認識していなし、理解しようともしないんだよなぁ、と豊中は聞いた話を回想する。どちらかといえば、豊中自身もこの話には否定的だった。ぼけっとしている豊中の耳に「今季の選考は押しに押しているので、」などという言葉が耳に入ってきた。
魔法少女協会の成すべき仕事は、毎年、関東関西両地区から二人の魔法少女を選考する事と、選考者の内一名が魔法少女の任期である一年間、対象の少女を監視することだった。なんだか犯罪的な響きを持つこの仕事だが、実はこの過程で起こる一切の行動は罪に問われないのだった。この協会団体に警察庁の重役が一枚噛んでいるようだ、などという噂を耳にしたがそのせいかもしれない、と豊中は考察する。
魔法少女の指名通知は本人に毎年12月24日の深夜、ポストに封筒をこっそり入れるという形で行われる。何も、いきなり犬だか猫だかウサギだか分からん動物に「僕と契約して魔法少女に云々」等と話かけられる訳では無い。クリスマス・イブに通知される理由は、何かイベントのある日ならばポストに一通ほどは奇妙な手紙が来ていても、本人およびその家族はさほど警戒しないからだ。それに、魔法少女の選出に本人の同意は要らない。たとえ本人がその封筒と手紙を破こうが捨てようが燃やそうが、強制的に決定される。
しかし、今年はなかなかに押しているようだった。なにを隠そう、今日がその12月24日だった。が、本心、豊中はそんなことどうでも良かった。
それは、二か月前の悪魔の十月中旬。豊中は営業先の大阪市にある某総合ビルに来ていた。一階の受付に座っていた清潔な印象ではあるが、少しばかり無愛想な受付嬢に
「私、長稲商社の豊中というものなんですが、本日、このビルにあります摩穂産業さんに要がありまして。何階ですかね?。」
と丁寧に尋ねたところ、
「5階です。」
と即答された。
何も確認することなく即答したのが今となっては気がかりだが、当時の豊中はあっさり信じてエレベーターに乗り、エレベーター内の鏡でしっかりネクタイを整え、5階で降り、会議室と書かれたドアを勢いよく開けた。
待っていたのは、数十名の驚きの目線とホワイトボードに書かれた「第21代魔法少女、関西地区選出選考」の文字。本能がまずいと直感した。
「失礼いたしました。」
頭を下げ、若干逃げるように扉を閉めようとした豊中はその右手を中年の男性に摑まれ、
「逃がさないよ。」
と言われた時には死んだと思った。
実際は、その活動を表沙汰にしたくないJMGA幹部として、黙ってて欲しい由を端的に述べたくて言ったと本人である議事進行役の佐藤氏から真相を聞いたのだが、当時ビビりまくっていた豊中は、
「にゅ、入会するんで、許してください。」
と命乞いし、参加するに至った。
あの時の受付嬢、死んでも許さねぇ、と心の中で罵りつつも、今考えれば摩穂産業がJMGAの会合の事に聞こえたのかもしれないと、豊中は考える。
「あ。」
思わず声をだしてしまった。そうだ忘れていた、と豊中は思い出した。今日、夜六時から地元で大学の同期と飲み会だった。このクリスマス・イブに彼女の居ない同志達と傷の舐め合いをする約束を忘れていた。途中で抜けたい由を伝えなければ、と思うと同時、豊中は手を挙げていた。
その行動を豊中は後から「人生最大の失敗」と語った。
「おお!やってくれるのか、豊中くん!」
えっ、と思った時にはもう遅かった。ホワイトボードには「今年の監視役決め」の文字が躍り、佐藤が満面の笑みを浮かべていた。
しまった。瞬間悟った豊中は、
「いや、そん」
なつもりでは、と言い終わる前に、
「ありがとう、豊中君。これで今日の議題はおしまいです。お開きとしましょう。」
と宣言があった。
そんな、と血の気が引いていくのを豊中は感じた。棒立ちになる豊中を背に、人々が各々安心したように話し合いながら出ていく。
「豊中君、ちょっと来てくれ。」
放心状態で立ち尽くす豊中に佐藤が声をかけた。
「あ、はい。」
思考が停止している豊中は素直に応じる。ここで今から断ってしまおうか、と思うも、恐らくは時間が無いと突き返されるだろう、とあきらめる。
「この紙なんだが、」
と佐藤が取り出した紙には住所と名前に加え、職場の住所と連絡先、自分の口座番号、年収を書く欄があった。
「え?。職場の連絡先ですか?。」
「覚えてないのかい?。」
「いえ、ただ何に使うのかなって」
「そりゃ、当たり前だろう、」
その後には、豊中にとって信じられない言葉が続いた。
「君、仕事行きながら面倒見る気かい?無理無理。仕事は一年の間休んでもらうよ。」
目の前が暗くなる気がした。
「大丈夫。その分の給料はJMGAが保障するし、仕事の復帰も保障してくれる。」
それなら、とはならねぇよクソ爺。と盛大に心の中で罵る。年収を書く欄に「2割位水増ししてもいいよ」と言われたので、2倍に水増ししておいた。
紙を書き終わると、会社の連絡先や年収が書いてある所を切り離し「手続きと、指名用の封筒持ってくるからちょっと待ってて」と言われ、その時間、気持ちを落ち着かせようとトイレに行ったりしていると待つことはなかった。
「はい、この手紙を投函してきてね。」
と、表に「全日本魔法少女協会」と書かれた封筒を渡された。
そこで気が付く。
「で、誰の家ですか?住所教えてください。」
「君、会議上の空だったな、」
うるせぇ、という言葉は飲み込んだ。
「君の好きな女子高生ストーカーして投函していいよ。」
佐藤の顔面の代わりに自分の腿を殴り飛ばした。
さっきまで脱いでいた黒のロングコートに袖を通し、ビルを後にすると冷たい風が頬を撫で、暗がりを照らすクリスマスの電飾が冬空に映えた。畜生、とまだ豊中の頭の中は煮えくり返っており、都会の冬の寒さを意識の外に飛ばした。ふと腕時計を見ると、時刻は四時半。六時に地元での飲み会があるが、地元といってもお隣の県の港町なので一時間とかからない。少し早いが出るか、と整理し切れない頭のまま豊中は大阪を後にした。
後ろ、失礼します。さっさと他人の物語読んだ方がいいよ(適当な助言)。
うぇ?女の子がいないやん、て?
そんな、馬鹿な!解ってないなぁ!そこは、豊中の不幸にほのぼのするんだよ。(横蹴り)ぶひぃ(二回目)。
まぁ、あれだ。やる気と時間ってやつかな。(踵落とし)ぶひぃ(三回目)。
冗談はさておき、ぽつぽつと続けるつもりです。
見てもらうというよりか、自己満足みたいなものですし。まぁ、自慰ですね。(金的)ぶひぃ(本望)。
最後に、読んでくださったのなら、感謝しかありません。