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異世界:Travel  作者: 痩せ散らかす
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1.選択

芽栗 恵流(めぐり めぐる)、生前24歳。死因、交通事故。意識の覚醒を確認。魔力回路問題なし。魔力線波形安定を確認。選ばれたしっ、選ばれたしっ】


ここはどこだっけ?


【選ばれたしっ、選ばれたしっ。芽栗 恵流(めぐり めぐる)、記憶の混濁あり。先行処理を実施。《言語とラベル(ゴゲン大陸共通言語)》を使用】


えーっと……トラックに轢かれそうな子供を突き飛ばして、衝撃を受けた……から、死んだのか。俺。


【選ばれたしっ、選ばれたしっ】


けど、手足はあるな。裸だけど。

この何もない空間がずっと続くのだろうか。怖いな。母さん。父さん。ごめん。


【選ばれたしっ、選ばれたしっ】


何だろう?音じゃないんだけと、聞こえる。選ばれたし?何を?生まれ変わりか、守護霊とか?天国か地獄?


【当デザインは芽栗 恵流(めぐり めぐる)に見えていない模様。芽栗 恵流(めぐり めぐる)の魔力波長を調整し、強制的に視覚(ピント)を合わせます】


うわっ、視界がグラグラする。

思わず目を瞑る、するとまた声が聞こえた。さっきまでより、はっきりと。


【いかがですか?ここ(・・)は魔力によってデザインされた部屋です。さぁ、目の前にある選択肢から選ばれたしっ(・・・・・・)


さっきまで何も無い空間だったのに、まるでファンタジー世界のダンジョンにありそうな祭壇の上に俺はいた。

松明には炎まで揺らめいている。


目の前には、ホログラムで浮かび上がったような光の板が二つ。

一つは説明。もう一つが選択肢だ。


説明を読む限り、俺は異世界転移するようだ。

現地世界の新鮮な人間の死体を再構築し、俺が顕現するらしい。

この部屋というか空間は変換路の一部なのだとか。ちょっと難しいことは分からない。


転移先の世界はRPGのような世界だとか。

魔物が蔓延る剣と魔法の世界。物騒だな。こちとらトラックに轢かれて死んでるってのに。

目的はただ冒険するだけという曖昧な感じだ。

元の世界に帰れる可能性もあるらしい。それならちょっと頑張ってみようかな。

けど、食料とかどうすれば良いんだろ。水は専ら浄水器使ってたし。


そして、何故俺が選ばれたのか。それも記載があった。


俺ぐらいの年齢で、良い奴を探してたらしい。

フィルタリングしてたんだって。学生時代に成績もよくない、生活知識も乏しい。うだつの上がらない社会人。そういう落ちこぼれた人間の方が異世界の文明レベルへの干渉懸念が少ないんだってさ。

何だか、死んだんだけど死んでない感じで、悲しさとか後悔とかどっかいったみたいだ。

馬鹿の方が異世界転生?転移?に都合が良いという理由に少し落胆さえしている。


良い奴、弁えてる奴ね。はぁ……

けど、それでこの元の世界に戻れるチャンスに恵まれたのなら、良いか。


って、馬鹿が生き残れるかな。

異世界人でIQ高い人でも死ぬんでしょ。


まぁ、なるようになるってことで。

俺に与えられるスキルというか。RPGでいう職業的なものは既に決まっていた。


その職業こそが、俺を異世界に送る理由。


職業、ラベル(・・・)使い。


異世界の騒乱に巻き込まれるというか。どっちかっていうと異世界を騒乱に巻き込む能力だ。

そもそも、この職業の能力には物語があり、ただ冒険するだけという目的の中で俺に何をしてほしいのか明確だった。


この職業の能力には陰と陽があり、ラベル使いという職業に溜め込まれた陰の力を異世界の悪意ある者へ転写し、陽の力で打ち倒す。そうすることで、溜め込まれた陰の力を徐々に減らしていこうというもの。


陽の力で打ち倒した悪意ある者からは、ユニーク能力を得られる。


それがラベル使い。


別世界の悪意を、異世界の悪意に付着させ浄化する。

なんとも自分勝手な職業、能力だと思った。


結局俺じゃなくても良い。俺が死ねば次の奴。

時間を掛けて陰の力を削いでいく。

けど、元の世界に戻れるチャンスはある。陰と陽。アメと鞭。


そうそう、肝心の選択肢。


1.異世界へ行く。

2.このまま消滅する。


【選ばれたしっ、選ばれたしっ】


行くに決まってんじゃん。

おっ、覚悟決めた瞬間にシステムウィンドウみたいなのが沢山出てきた。足元には光が溢れだし、その輝きは徐々に増していく。


【《転送とラベル》を使用。《次元とラベル》を使用。《魂とラベル》を使用……異世界転送シークエンス……ラベル制御マトリックス…………《門とラベル》を使用】


輝きが視界を埋め尽くすと、空を飛んでいるような感覚が始まった。


異世界に対して、確かに不安もあるけど楽しみでもある。

色々考えるうちに、何か膜に当たったような気がしたところで俺の意識は途切れた。


【良い(トラベル)を、芽栗 恵流(めぐり めぐる)



物語を書けることに感謝。読んで頂けることに感謝。

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