成り行き、そして再度森へ
数分くらいで店の中にいた人たちを裁き終えた。途中でまた数人が入ってきたのを合わせると数十人は捌いたことになる。
「疲れたー」
「お疲れ様、アズマ君」
一息吐いているとそう厨房から出てきたカナさんが言う。
「さっきのどうしてあんなに人が来たんだ?」
「大半のお客さんは皆んな目当てはお風呂よ」
「風呂?」
「そう」
カナさんの話によると、原因は俺なのだそうだ。
これは以前にも話したが、まずこの世界で毎日のように風呂、湯船などに入っているのは貴族以上の資産のある者くらいで基本的に民間人は桶に水を入れタオルなどを浸して身体を洗うのが普通らしい。
実際俺もこっちに来て水儒核を手に入れるまで浸かっていなかった。
それで水儒核とウォーミルで風呂屋にしたのを気に入って近くに住む人たちが利用することになった。
ここまでは俺らが引っ越しする前。俺らが引っ越してしばらくしてからお客がどっと増えたそうだ。
冒険者などの利用が増え、次第に商人、近隣の街の人などが訪れ出したそうだ。
ここまでは以前話したが、ここからが進展らしい。
最初はタダだったがこんなに人が増えてはいくらその中に店で食事したりする人がいても落ち着かないし、まずお客の所へ行くのも大変である。
なので可笑しな話だが少し値段を付けて客を減らそうとしたらしい。
しかしなぜか逆効果でさらに客が増えたのだとか。
予想だが、値段を付けたことで詐欺ではないっと思われたからではないだろうか?無料よりも少しでもお金を取られれば安全性が伺えるからだろう。
金が付けば法に訴えることも出来る訳だし。
まあそんなことがあって今の状況になったのだそうだ。
「そんなことがねー」
「アズマ君のお陰でね。ただ、毎日忙しいのが辛いわね。前は私一人でも出来たんだけど最近はもう限界が来てるわ」
「人でも雇ったらどう?」
「それも良いんだけど教える時間がないのよ」
「?今この時間にでも教えればいいだろ?お客の波も引いたし」
「数分くらいでほとんどを教えるのって結構大変なのよ?最近ようやく一人をだいたい出来るほどまで教える事が出来たけど、もう無理」
出来たんだ...
「そろそろ来る頃かな」
「....じゃあ、俺は帰るよ」
「あら、会っていかないの?」
「ああ、少し用事があるからな」
「そうなの、頑張って」
「そっちもな」
そう言って俺は甘味を出た。
多分だがあのまま残っていたら俺は再び従業員化していただろう。人がいたとしてもあれ以上にお客さんが増えれば結局で俺は手伝わされただろう。
悪いけどカナさん。逃げさせてもらう!
用事の場所を目指して早足で歩く。
時間は昼食少し前くらいだな、これなら上手くいけば夕食くらいには帰れそうだな。
そんなことを考えながら時間を潰していると森の麓まで着いた。
そしてしばらく進んだ辺りで陽が当たるあの木のない場所に出た。そこで昼食を摂ることに決めた。
宝物庫から事前に作っておいたおにぎりと唐揚げを取り出す。
「さて、いただきま...」
合唱しようとした所で魔獣の気配を感じた。
こちらに気がついてはいないし、殺気が強いから多分戦闘中なのだろう。さらに人の気配も感じるな。一人....いや弱いがもう一つ感じる。
とりあえず行ってみるか。
そう思い、食事を宝物庫に入れて気配の方へと向かう。




