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訪れ、そして模擬試合

 

 ギルドの以来を終えてから四日が経った。その間にティアさんから「見つからなかった」と言われた。

 ドゥクルと別れてから日が経ちすぎているので魔眼で追うことは出来ない。なのでここから俺はもう関わることはない。と思う...

 そしてさらに報告を受けてから数日ほど経ち、春の訪れがちらほら見え始めた。

 日本のように桜などはないが今まで閉じていた花のつぼみが開き始め、冷たかった風が暖かくなってきた。

 はっきり言って過ごしやすい季節だから俺は好きだ。

 ああ、その代わり魔獣たちも活発になるけどね。

 そう思いながらセシリアさんが入れてくれた紅茶を飲みながら庭に出した椅子の上でまったり飲む。

 うん、いつもながら美味しい。


「最近たるんでない?」

「ん?」


 後ろ横から声が聞こえたので振り返るとキリがタオルでいた汗を拭いながらこちらを呆れた顔で見てきている。

 キリやサナは毎日トレーニングをしている。

 だからその終わりか休憩に俺を見つけたのだろう。


「そうかな?」

「ええ、この間の依頼以降全く身体を動かしてないでしょ?」

「うっ、それは・・・」

「やっぱり・・・・」


 ジト目で見てくるキリの視線が痛い。

 冒険者は身体を張った仕事で死と隣り合わせの職だ。そのため自分の腕が高くなければ生きていける可能性は変動する。

 だからキリがこんな視線を向けて来るのは、腕が落ちて死なないようにしろということだろう。


「うぅ・・・素振りでもしようかな」

「!それなら私と模擬試合やりましょう?」


 模擬試合か、久々だな。

 キリと出会ってから時々模擬試合をやっている。

 木刀を使って死の一手の攻撃を決めれた方の勝ち、という感じでやっている。

 ただしちゃんと寸止めだ。間違って首は飛んで欲しくない。


「分かった、じゃあやるか」

「やった!今日こそは勝つんだから」

「お手柔らかに」


 やる気に満ちているキリを見ながら笑ってはいるがこっちも気を引き締める。

 宝物庫から二本の木刀を取り出す。

 片方をキリに渡してから十メートルくらい離れる。


「セシリアさん!開始の合図を!」

「それじゃあ、始めなの!」

「「ふっ」」


 セシリアさんの合図とともに俺とキリは地面を蹴り、木刀を振り、剣を交差させる。

 少しの間押合い続けてから剣を押して一旦軽めのジャンプで距離を取る。

 そして着地と同時にさっきよりも強めに地面を蹴り間合いを詰めて近づく。その威力を保ちながら剣を一文字斬りで左から振る。


「くっ⁉︎」


 振られた剣をギリギリの所でキリは止めた。


「ん、んん..えっ!」

「っと」


 空中での威力がなくなり、キリに押し返されてしまった。

 空中で身体を捻りちゃんと着地する。


「⁉︎」

「ふうぅっ!」

「んっ!」


 着地するとすでにキリが間合いを詰め、背後に回られていた。

 そして剣を真上から振り下ろしてきた。気配で気がついたので頭に当たるギリギリでその剣を剣で防げた。

 視線を逸らしたつもりはなかったんだけど....なるほど『迅速』か。相変わらず速すぎだろ。


「くっ....」

「ん...おらぁっ!」

「っ!」


 剣を受け止めるために少し姿勢を低くしたためじゃっかんだがキリの方が高くなった。

 そこを体重をかけた剣で押してくる。

 だが、それでも何とか踏ん張ってその剣を押し返した。

 一旦距離を取る。


「はぁ...はぁ...惜しかったな」

「はぁ...はぁ.....はぁ....東、はぁ...デタラメ過ぎよ、はぁ....何であの体勢で押し返せるのよ...はぁ....」

「はははは、さあ俺にも分かんねえ。ふぅ....さて、じゃあそろそろ本格的に行かせてもらうぞ!」

「ふふ、ええ!私もよ!」


 そう言ってまた二人は地面を蹴って間合いを詰める。

 本格的っていうのは本番のつもりでって言うこと。だから大変なのはここからだ。

 キリの攻撃が迫る。


「....ふっ!」

「くっ」


 キリはフェイントを四回ほど入れてから攻撃してきたが、それにちゃんと反応して受け流した。

 そして受け流してから今度はこちらがフェイントを数回入れて鳩を狙って突くが少し屈みながら横に身体を反らして服を少し擦っただけで避けられてしまった。

 そのまま空いた胴目がけて剣を振ってきた。

 右足に力を入れて背後へ飛ぶ。しかしそれでも完全に避けきれず俺も服を(かす)った。

 二回着地のジャンプでかなり距離を取る。


「ねえ、東!ちゃんとやってよ!」

「?俺はちゃんとやってるぞ?」

「嘘!本気出してないでしょ!」

「いや、だって、そりゃあ本気出して手加減失敗したらキリが危ないし...」

「大丈夫、私だって強くなってるんだから。それに多少の怪我なら東が治してくれるでしょ」

「....本当に良いんだな?」

「うん。むしろ手を抜かれたら、勝っても嬉しくないもの」

「分かった。なら本気で行くぞ!」


 俺はそう言うなり地面を強く蹴り一気に間合いに入る。


「⁉︎」

「ふんっ!」

「くっ!」


 右下から左上へ向けて斬りかかる。

 キリはそれに反応してなんとか止める。一旦力を込め押してからすぐに剣を引き、連続撃へと移行する。

 左二の腕から首やや横へかけて、止められたので今度は少し上へ上げ左肩目がけて振り下ろす。ここではキリの持っている木刀が狙いだ。


「うっ⁉︎」


 それによって多少バランスを崩した所でジャンプしてキリの背後へと回る。飛んでいる時にキリが反撃してきたが強めに叩いてその攻撃を弾く。

 振り向いてこようとしたキリの首元に剣を添えるように置く。


「はい、お終い」


 それを理解したキリは持っていた木刀を落として両手を上げた。

 それを確認してから俺も剣を収める。宝物庫からタオルを取り出してキリに渡す。


「ありがとう」


 そして二人で椅子の方へ行き座る。テーブルの上にはセシリアさんが入れてくれていた紅茶、ではなく冷たい果汁水のジュースを飲む。


「ん、んっ...ふぅー、やっぱり全然勝てないわね」

「....ぷはぁー、そんなことないぞ?俺だって結構ギリギリだったし」

「それは本気を出さなかったからでしょ?いやまあ、出していなくてもあの実力って、少し反則過ぎない?」

「そうか?キリだってちゃんと着いてきてたじゃないか」

「だからそれは本気じゃない....はぁー、もういいわ。何を言って言い訳よね、次は勝てるように頑張る事にするわ。まだ勝てた事がないんだから」


 キリはため息を吐いてから諦めた顔でジュースを飲む。

 俺も負けないように練習メニュー増やそうかな。とりあえず倍くらいはやった方が良いな。

 ちなみに練習メニューはガールさんが剣の稽古の時に基礎体力としてだした課題メニューをそのままやっている。

 その後、キリが肩を痛めていたので治癒核で癒した。やはり本気でいくとこうなってしまうな。

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