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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第12章 アルタイルの大会
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準決勝、そして不正

 

 キリの試合が第十一試合。その試合が終わる数分前に他のブロックでの試合は終わっていたらしく、キリと別れたすぐあとに準決勝の相手が発表された。

 サナの対戦相手はアシュだった。

 それを聞いた時のサナの表情は恐怖でも動揺でもなく、覚悟を決めた表情だった。

 そして互いに「頑張って」と言って別れた。キリは観客席で俺らのことを応援してくれるらしい。

 しかし準決勝はすぐに始まる訳ではなく、十分ほどの休憩がもらえた。

 その休憩の間に舞台がまた変形されるらしく、舞台へは上がらないでと司会者から注意が飛ぶ。そしてさっきの鎧を着た人が出て来て、再びあの魔道具の刀を使って舞台を叩いた。

 すると舞台だけが()れだし舞台を四つに分けていた壁の左右が沈下(ちんか)し、さらに舞台が二百メートルほども沈下し始めた。

 地震が止むとしばらくして司会者が「選手は舞台に登って下さい!」と叫んだので言われた通りにする。

 俺の対戦相手はまたも最初の方で気になっていた舞台端で腕を組んで立っていた男だった。名前は“ゲノム”と呼ばれていた。

 彼は今も腕を組んで俯いている。しかしこちらを警戒しているのは何となくで分かる。


「それでは、始め!」


 始まりの宣言を叫んだが互いに動こうとしない。様子見をしたかったのだが、相手は全く動こうとしない。なんならポーズさえ解いていない。

 このままじっとしているとまた観客から不満を言われると思う。仕方ない、気になっていたこともあるし、攻められたらどうするのかを確かめるか。

 そう思い地面を強く蹴る。


「ふっ」

「......」


 相手の懐くらいまで入ったところで強めのアッパーを放つ。

 しかし相手はそれを顔を後ろに引いて避けた、のではなく背後へバク宙をする際にタイミングが被ってしまっただけ......な訳ないか。

 しっかりこっちの動きは見えていただろうし、合わせられたか。

 飛び退く際に俺の(あご)へ向かって蹴りをかましてくる。

 それを顔を横に傾けて避ける。

 うん、やっぱり強いな。

 少し背後に飛び退いて相手との距離を取る。

 こちらの攻撃を見切って容易に避け、それに合わせて反撃して来た。

 それにしても腕を組んだまま避けと反撃をされるとは思わなかった。もう一度試してみるか? まだあのことも気になるし。

 そう思いもう一度地面を強く蹴る。

 ゲノムの右真横で止まり、左足を軸に右裏回し蹴りをやつの顔面目掛けて蹴り込む。


「ふ、うっ!」

「......」


 しかしそれも横に一歩退いて避けられた。だが避けられることは予定通りだ。


「余裕だな」

「ぅぐっ⁉︎」

「?」


 だから蹴りの威力をそのまま回転に利用し、遠心力と腰を使って上げる脚を切り替える。

 そして相手の横っ腹に左足での蹴りを入れる。その攻撃は予想していなかったのか、見事に入った。

 しかし変な感触が足から伝わって来た。

 蹴りによってなのか、ゲノムはようやく腕組みを辞めた。


「くっ!」

「逃すか」


 一旦距離を取ろうと後方へ逃げるゲノムを追いかける。


「......近寄るな!」


 それを鬱陶しく思ったらしく途中で止まり、執拗に追いかけて来る俺に右貫手(ぬきて)で突いて来た。狙いは目か。


「っ、ガラ空き!」

「んっ⁉︎」


 顔を横にズラしてそれを避け、渾身の左ボディーブローを撃つがギリギリのところで左手でガードされてしまった。

 それでも少し鈍い音とともにゲノムの七メートルくらい地を滑って行った。


「うっ......死ね!」


 手の痛みを耐えながら、こちらへと接近して右手による鉄槌打ちを首に向けて振り下ろす。


「物騒な物言いだな」

「......」


 鉄槌打ちを右の手で受け止める。するとゲノムの口角が若干だが上がった。


「っつ⁉︎」


 受け止めたとほぼ同時に俺の手のひらにチクっと痛みが走った。


「......何をした」

「ぐ、うっ⁉︎」


 受け止めたゲノムの拳を掴み逃げられないようにして、その腕の手首を強めに殴る。殴ったと同時に手を離す。

 両手の痛みで怯んでいるゲノムの腹に蹴りを入れて吹っ飛ばす。受け身も取れずに地面に身体を打ったようだがすぐに起き上がった。

 痛みが走った手のひらを見ると真ん中やや下辺りに小さな穴が開いている。さらにそこから血が流れ出ている。

 『魔眼』を起動させる。


 ______________

 クロシオモ草の粉

 特殊:即効性の毒

 効果:神経麻痺

 ______________


 毒⁉︎ え? 毒⁉︎ ていうかどうやって......

 しばらく混乱していたが、一向に効果が現れない。

 上手く身体に回らなかったのかとも考えたが血が止まらず流れ出ていることから血管まで刺されている可能性が高いと考えられる。

 ならなんで......あ! 神様(あいつ)の加護か!

 確か『状態異常無効』だったよな? 本当に効くんだな。

 そう考えると毒の効果が現れないのにも納得がいった。

 理由が分かると急に冷静になって来た。そして刺された手から微弱だが紫色の霧が出ているのに気がついた。

 その霧を辿(たど)るとゲノムの右手に伸びている。

 不正行為か。これで今まで彼に攻撃しに行って返り討ちに()っていた人たちの身体に残っていた傷跡の謎が解けた。

 これって審判に報告すれば負けに出来るよな?

 でもどうせなら勝ってから報告するか。()てられても俺なら目で捜せるしな。


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