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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第12章 アルタイルの大会
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勝利、そして軽蔑

 

 こちらに全速力で走って来たハクが腹部目がけて右ストレートを放ってきた。


「ふっ!」


 俺はその攻撃を難なく受け止める。それだけでは終わらせず、拳を握っている手の力を強める。

 それが痛かったのか、ハクの顔が歪んだのが目元からでも分かった。


「っ......離せ、よ! うおっ⁉︎」


 手を離させるために左フックをしてこようとしたが、その前に身体を横にやりながら手を引き寄せてハクを流すよう、放るように手を離す。

 しかし彼は倒れる前に宙返りして体勢を整えた。

 その動きに少々関心しつつも、地面を蹴って一気にハクとの間合いを詰める。


「っ! このっ」


 (ふところ)近くに入った俺に殴りかかろうとしたが、その腕が届く前に払い退けてハクの股の間に足を入れて、前に出ていた彼の左足を裏から払い上げる。

 この攻撃は予想外だったようで今度こそ体勢を崩した。

 そこへさらに追い討ちで拳を振り下ろそうとしたが、ハクは完全に倒れる前に左手腕を着いて無理矢理体勢を横にズラす。

 それによって横に転がって逃げられた。

 しかし俺が初めから狙っていたことを読めなかったため、そっちを回避することは出来なかった。

 逃げ切られる前にそれをギリギリで掴む。

 ハク(こいつ)がずっと着けている忍者のような覆面を取り上げる。

 すると覆面が取れ、ハクの素顔が露わになる。灰色の毛並み、犬のような耳だが先は少し(とが)っている。まごうことなき狼の獣人だ。

 この国の王様を見た時は「かな?」と思っただけだったが、彼を見ると「こっちが本物だ」と思えた。


「はぁ......はぁ......なかなか、やるじゃねえか」


 そう言いながらも彼の鋭い目つきがこちらを睨みつけて来る。


「だけど、その程度じゃ俺には勝てねえぞっ!」


 再び突っ込んで来る。興奮しているせいなのか状況をちゃんと飲み込んでいないようだ。

 しかしそんな彼に状況を伝える者がいた。


「そこまで! 帯をアズマ選手が獲得。よって勝者、アズマ!」

「............え?」


 審判がそう叫んだ。しかしハクはその言葉を理解するのに多少時間がかかった。それは自分が負けるはずがないという自信を抱いていたが(ゆえ)だったのだろう。


「は? え、負け? 俺が?......ああぁぁぁぁ! てめえ! いつ俺の帯を取りやがった! てめえの攻撃は確かに避けたぞ!」

「......避けた、か。これを見ても避けたと言い張れるか?」


 避けたと言い張るハクの前に先ほどまであいつが着けていた覆面を投げる。


「......な⁉︎ いつの間に⁉︎ てことは今......マズい、サナにバレたら──」

「もうバレてるわよ」

「サナ⁉︎」

「お、そっちは終わってたのか」

「ええ、なんとかね。当然アズマも勝ったんでしょ?」

「ああ。キリは次の試合からだっけ?」

「そうよ。さ、行きましょう」

「おいっ! 俺を無視するな! というかお前、俺のサナに気安く話しかけてんじゃねえ! てか離れろ!」


 試合が終わったので舞台から降りてサナと一緒にキリの応援に行こうと思っていたら、背後から猛ダッシュで追いかけて来たハクが俺たちの前に出る。


「何よハク。あんたは負けたんだから早く帰りなさいよ」

「なんだよサナ、久々に会ったんだから付き合えよ」

「あのねえ、私は今から友達の応援に行くの。だから退いて」

「嫌だね。それにこいつにはまだ話があるしな」

「話?」

「そうだよ! お前いつ俺の帯と覆面取ったんだよ! お前が取ったせいでサナにもバレたじゃねえか! どうしてくれる!」

「知るか」

「何ぃー」

「お前が仕かけてきた勝負に、お前が提案した勝負内容で、俺が勝ったんだ。それのどこに問題がある?」

「くっ......うるせえ! 俺が負けるなんてあり得ないんだよ! どんなズルをしや──」

「いい加減にしなさいよ! あんたが自分で言った規則(ルール)でアズマは勝ったんでしょ? あんたも漢なら自分の負けぐらい認めなさいよ! 第一あんたが参加してたことなんて知ってたわよ」

「えっ⁉︎ い、いつから⁉︎」

「最初からよ。匂いで分かるわ」

「うっ! で、でもこいつ......こいつの事はどうなんだよ⁈」


 話を変えやがった。

 慌てた様子で俺を指差すハク。


「どう......って?」

「こんな子ずるい手で俺に勝ったり、サナをたぶらかして俺から奪うやつだぞ! こんな男と一緒にいてどう思っているって事だよ」

「奪ったって、いつからあんたと恋人になったのよ」

「は? だって昔からよく遊んでたし」

「近所だったからよく遊んでたのよ。港街で同い年だったのハク入れて四人だけだったし」

「え......じゃ、じゃあ! よく俺と腕試ししたのは⁉︎ 触っても良いと思ってたからだろ?」

「はあー⁉︎ そんな訳ないでしょ! 同い年で強かったのがあんただったからやってたのよ。ていうかハク、あなたそんな事考えながら付き合ってくれてたの? 最低」

「いや、今のは違っ!」

「......別に良いわよ、もう昔の事だし。ただ、今度からあんまり近寄らないでね」

「がっ!!!」


 ハクが膝から崩れ落ちた。なんだろ。がーんっていう効果音が聴こえた気がした。


「くっ! こんな事になったのも全部その男のせいだぁっ!」

「その理屈はおかしいって」


 逆恨みに転じて殴りかかって来たのでその腕を取り、ハクに背中を向けて一本背負いで投げ飛ばす。


「似たような攻撃ばっかりだな! このっ!」

「どの口が......」

「ぐえっ⁉︎」


 しかし地面に叩きつける前に地面を蹴って、こっちの攻撃をキャンセルされてしまう。そして空中で身体を回して、無理矢理腕を抜かれてしまう。

 そして着地と同時にまた殴りかかって来た。

 その拳が俺に届く前にこちらの反撃であるボディブローが決まる。その一撃が余程効いたらしく、ハクは腹を抑えながら後退する。


「大人しくしろよー」

「ぐあっ⁉︎」


 終いとして後退したハクの背後へと飛び、脚を払ってから腕を掴み、脇固めをする。

 高校で授業で柔道習ってて良かった。


「何だよこいつ、普通に強え」

「当然でしょ? アズマは銀ランクの冒険者よ」

「なっ⁉︎ 銀ランク⁉︎」


 ハクが驚愕の表情を浮かべる。


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