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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第12章 アルタイルの大会
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怪しい男、そして賞品扱い

 

「それでは第一区画(ブロック)第一試合。アズマ対ハク! 始めっ!」


 簡単な始まりの紹介を終えると審判が上げていた手を勢いよく下ろし、開始を宣言する。それと同時に観客席からの声は一層勢いが増す。

 俺と対面しているハクと呼ばれた人。最初の乱戦の時に気になっていたうちの一人で、その姿は忍者のように覆面を被った人物。服は動きやすそうな見た目で、袖が肩の辺りで千切(ちぎ)られている。

 相手は身体をやや屈め、いつでも攻防が出来るように腹横に手を置いて構えている。

 互いに何をするでもなく、ただ相手の様子を窺っていると、他のブロックでも開始の合図が上げられたのが聞こえた。

 これではさっきと同じように客が騒ぎそうだなと思ったが、そんなことよりも相手がどれくらい強いのかを知りたいという欲求もあった。

 少し挑発してみるか......

 漫画などでありそうな手をクイックイッとやって「かかって来い」と挑発してみる。

 その意味が通じたらしく、相手はこちらを睨んでから突っ込んで来た。


「舐めやがってっ!......この!......くそっ!」


 次々と俺の帯目がけて手を伸ばして来るのを後ろへ下がりながら首を横にずらしてその攻撃を避ける。

 単純に取りに来るだけでなく、しっかりとフェイントなどの絡め手もある。

 攻撃のスピードや身体の動きは乱戦にいた大人たちより良いのだが、攻撃のパターンが決まっているらしくそれが分かってからはさらに避けが簡単になった。


「はぁ......はぁ......んあ......」


 数分の間、相手は休むことなく攻撃を続けた結果スタミナ切れとなり、膝に手を置いて身体を支えながら荒い息を整えている。

 勝ちたいのは分かるけどそんな必死で来たら逆に隙も作ると思うけどな......


「はぁ......は......っ、避ける......事しか、出来ねーのか! はぁ......」


 息が絶え絶えで、所々掠れていたがそう言ったのを確かに耳にした。


「そんなのこっちの勝手だろ? 今みたいに疲れたお前から帯を取ることだって出来るようになるんだからな」

「けっ......はぁ......そんな小ずるい考えみたいにサナを(だま)したのか⁉︎」

「は? 何だよ、それ。てかなんでサナのこと知って──」

「うるせえ! サナは俺の女だ! それをサナが俺から離れた隙に言い寄りやがって! しばらくベガのどこかへ行ったかと思えば大会に出てたから声をかけようとしたら隣にお前みたいな野郎がいるし、挙げ句の果てにそれを俺の前で見せつけやがって! 絶対にぶっ殺す!」


 ......何言ってんだ、こいつ。


「くたばりやがれ!」


 とりあえず状況整理でもしてみるか。

 えーと、まずハク(こいつ)はサナのことを知っている。それでサナは自分の女だと思っている......うん。

 そして「ベガに行っていると」っていうのは、サナとニーナが俺たちと一緒にベガに行ったことで良いのか? 離れているは分からん。

 んで、サナが帰って来たら隣に俺がいて「何、人の女とイチャイチャしてんだ! ぶっ殺す」と思った。

 こんな感じで良いと思うけど、結局よく分からん。

 サナとはまだ数ヶ月の付き合いだが、彼女が色んな男に寄って行くとも考えられない。ましてや彼氏などがいるなら尚更(なおさら)だ。

 彼女は何事にもまっすぐだ。そこが長所であり短所でもあるとは思うが、魅力とも言える。

 だからそんな行動をするとは思えない。

 ということをハクの攻撃を避けながら考えていた。さっきも言ったがパターンが決まっているので、回避が簡単なのだ。


「じゃあ、仰せの通りに!」

「⁉︎ ぐっ!」


 状況整理が未解決で終わったのでハクの攻撃を避けてから初の反撃を繰り出した。

 避けるしか出来ないと思っていたのか反撃の回し蹴りを何とかガードした今も少し驚いている。

 加減はしてあるしガードも出来ているからダメージはそんなにないだろう。

 さて、こいつどうしたら良いだろうか? 多分何か勘違いしているのだろうけど、言ったって聞かないんだろうな......

 というか観客席にさっきの会話がだだ漏れだったようでさっきからその噂がちょくちょく耳に入って来るし、なんなら近くに審判の人もいるけどチラチラこっちを見てくる。

 それが審判としてではなく、この男が投げた爆弾によって様子が気になっている野次馬の感じである。

 神様、俺何か悪いことしたか?


「......ぉぃ......おいっ! 訊いてんのか!」

「あ? ああ、考えごとしてたわ。何だ?」

「どうせまたずるい事でも考えてたんだろ。まあ良いや。お前に勝負を挑む!」

「は? 勝負?」

「ああ、もちろん逃げても構わねえけど、そんな男はサナに相応しくねえからどっかに行け! まあ、逃げなくても相応しくねえけどな」


 今すぐ帰りたいけど、なんとなくこいつから逃げるのはそれはそれで嫌だな。


「勝負内容は?」

「そうこなくっちゃな。勝負はルール通り相手の帯を先に取った方が勝ち! 勝者はサナを手に入れられる! 敗者はとっとと帰れ! 良いな!」

「......おい、その言い方だとサナが賞品みたいなんだが?」

「その通りだが? サナは勝った者の女になる。つまり俺のな! それは強者の特権なんだよ。だから賞品みたいなもんだ。もともとサナは俺が目をつけていたんだ。それを横から来たお前にも機会(チャンス)をやるんだから()りがたく思え!」

「......」

「何だ? 怖気(おじけ)づいたのか? まあいいや。おらっ、始めだ!」


 こちらの返事を待つことなく、ハクはこちらに走って来た。


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