滞在、そして帰還
「……魔力も多少回復したし一緒に来てもらえば?」
コランドが不憫に思えたので助け舟を出す。
ただ、少しだけ保険も賭けさせてもらった。機能するかは分からないけど、人数での魔力量変化を仄めかしておく。
「ご配慮いただきありがとうございます。大変ありがたいお話なのですが、私たちはこの森を離れることが出来ないため控えさせていただきます」
「あ、そう、なのか。分かった……」
しかしそれもドライアド本人に沈没させられてしまった。
心底申し訳なさそうにしているドライアドからの思わぬ返答に変な喋り方になってしまう。
「コランド。明け方前に来てくれ。それまでに調書を考えておく」
「……私でもその魔道具を使えるのですか?」
「恐らく。自分でしか使ったことがないから分からないけど」
神様からもらった時に俺専用と言われた憶えはないので大丈夫だとは思う。
ただ分かってはいたが、やっぱりこの後に没収される流れらしい。
「ではあとで詳細をお教えください」
「……分かった」
「それではララン首長、後程」
「ああ。頼んだ」
軽く礼をして別れを告げるコランドに対して顔を向けることなく、考え込みながら簡潔に返事をする首長。
そんな彼女にコランドもブライアンも不服の様子はない。
話が終わってしまい、コランドにゲートを促されたためこっちも諦める他ない。
結局足掻いてはみたものの結果は変わらず、コランドと刑法官たちを連れて帰ることになった。
刑法官の二人が到着と同時に叫ばれても困るので出立前に『麻痺』で動けないようにした。
そしてそれはブライアンも同じ考えだったらしく、蔦での手足の拘束と猿ぐつわを咥えさせた。
「(一応もう何個か保険を用意しておくか)」
ゲートを潜りながら辺りを『天眼』と『魔眼』で物色し、使えそうな物を適当に持って行く。
その内の一つはドライアドが調合した自白剤。これを『水流操作』で隠し持つ。
「それでは私は業務に戻りますので所持品の返還をお願いいたします」
しかし着いて早々に言われたのはコランドによるゲートリングと宝物庫の返還命令だった。
「……聞きたいんだけど、結局刑法官たちのはどう対処するつもりなんだ? 合わせる必要があるなら先に言っておいてくれると助かるんだけど」
本命は隠しつつ、聞いておきたいことを訊く。
ゲートリングを返したくないなんて素直に言った所で認められるはずもないので、時間を稼ぎながら適当に渡さないで済みそうな言い訳をダメ元で考える。
「そうですね。失礼、失念してました。ただ、私も急に仰せつかった仕事で、そうポンポンと対策が出てくる物でもないですね」
「そうだよなぁ。急に対応してくれって言われてもそんなの厳しいに決まってるのに、無理なんて言えない状況だったら承諾するしかない訳だし」
「ええ、はい。ですがいつものことなのであなたは気になさらず。それで? 転移の起動のさせ方はどうするんです?」
話を伸ばそうと愚痴を誘ってみたが暖簾に腕押しの様に透かされてしまう。
まるで考えが読まれているかの様に相手にされなかった。
投稿が遅くなり申し訳ございませんでした。
また、しばらくの間同様に投稿期間が大きく変動する可能性がありますことご容赦ください。




