汎用性、そして帰還
「いや、そこまで話しておいてなしはなくないか?」
「これ以上を部外者の貴様に話す必要はない」
──なら最初から話さないで欲しかったな。と喉元まで出たが、ギリギリで飲み込む。
「それより何か解ったのか?」
「……何が?」
「コカトリスだ。あとで伝えると言ったのだから何か分かったな?」
「あー、あれはコカトリスの……いや、なんでもない。とりあえず見つかったのは……」
先ほど首長たちに伝えたのは『魔眼』で能力について知れるのかへの返答のつもりだったが、どうせ分かった内容は教えるつもりだからそれを言うのを止めた。
そして呪物のことを伝えると、
「そんな手法もあるのか……」
「なんて面倒な……」
二人は心底面倒だと言わんばかりに顔を顰める。
「そこまでか?」
「当たり前だ。これからの戦いに大いに関わる可能性のある判明なんだぞ」
「付与は固有能力でない物を簡易的な魔道具にすることも出来ますので、戦力の増強にはとても重宝されていると聞き及んでいます」
「せやな。実際付与された兵や武具があるだけで戦況に変化を生んだ、なんて事例もあったくらいやからな。そんな相手が有効距離を伸ばせる言うのはさすがになぁ……」
三位一体で付与とその射程が伸びることの危険性を説いてくる。
「(付与ってそんなにすごい能力だったのか)」
言われてよくよく思い返してみれば、リリーの能力で強化された時の皆は強かった。
エルダースノウマンの時や時々全員で受けていたギルドのクエストでも、パワー、スピードなど味方へのバフ。鈍化、盲目のような敵へのデバフ。
汎用性の高い能力のお陰で冒険の効率も上がっていた。
そしてそれが戦争のようなものにまで使われるのも当然だ。
「なるほど。確かにそんなのがどこからでも使えるようになったら厄介だな」
「そういうことだ」
ようやく理解出来、彼らが危惧していたことに納得を示すと首長がため息混じりに首肯してくれる。
するとブライアンが眉間にしわを寄せ、浮かない表情で問いかけてくる。
「……にしても、能力は一度発動したら維持に魔力はほとんどいらんのやろ?」
「らしい。ただ、それも能力によって変わるかもしれないから一概に全部が必要ない訳じゃないらしい」
「なるほどなぁ」
納得したような物言いだが、顔は完全に納得行っていない。
言いたいことがあるなら言って欲しいと思っていると首長が軽くため息を吐く。
「はぁー……ひとまず動員数と能力の拡大による戦術は分かった。あとは他の戦術と進軍先、それから──」
「待ってくれっ。さすがにそこまで聞いている時間はないだろ? あいつらの言ってたことが本当かもしれないんだから」
視線で刑法官たちを指す。
「(俺が訊きたいことだけ聞いておいてあれだが、時間がないのも事実だ)」
国として謎の勢力を放置は出来ないだろう。
しかし戦争の情報ならあとで聞ける。
こっちは家族皆の人生がかかっているんだ。もちろん国がどうなっても良い訳じゃないが、目先の問題が先か、隠れている問題が先かだったら仲間のいる目先が先だ!
「なら私とブライアンはこちらに残る。コランド、すまんが貴様でなんとかしてくれ」
「…………承知、しました」
首長の申し出にコランドが躊躇いながらも軽く礼をして拝命する。
「(帰還の提案を断れるとは思わなかったな。それに多分コランドさんの方も予想外って感じだな)」
変に仕事を増やしてしまったが、恨むなら首長の方にして欲しい。
それに予想外の仕事なんて社会人ならよくあることだろうから頑張ってくれ。
客が皿を割ったり喧嘩するなんかのトラブルはよくあったし。店長が警察に逮捕されて店が潰れるなんてことも珍しいけどあったあった。




