消えたタイミング、そしてコカトリス
「あの、恐れながら発言をよろしいでしょうか?」
「何か思いついた?」
「頃合いから判断しまして、コカトリスもその候補に挙がるのではないかと推察いたします」
「あー、呪い持ちの魔獣か。あり得るな」
ドライアドの推察にブライアンも賛同する。
「(確かにちょうどブライアンが討伐を終えたあとに呪いが消えた訳だし、魔獣も固有能力は持っている。可能性としては高い)」
眼で見えた中から考えても候補の中ではかなり有力な案だ。
「その考えはなかった。ありがとう、かなり有力な案だ」
「恐悦至極です」
恭しく礼をするドライアド。
その姿を見て、数日前に会ったもう少し大人びたドライアドを思い出す。
「っ──」
そういえば、と尋ねようとした寸前の所で踏み止まる。
目の前のドライアドが来た時に“白が謀反を起こした” と言っていた。そしてそれを伝えに来たのは数日前のドライアドではなかった。
あんな下手に出る態度を取っていた、恐らく姉のドライアドが来なかった理由は……
「(精霊の時といい、また地雷を踏む所だった。話されるまでは触れないでおこう)」
危うい場面を回避出来ただろうと感じつつ、『呪い』が消えたことで変化した現状について考える。
「(何はともあれこれで呪いについて考えなくて──)」
内心安堵していた矢先、ブライアンが不意に口を開く。
「なら見に行ってみたらどうだ?」
「……何を?」
「さっきのコカトリスや。坊主なら何かしら解ったりするやろ」
「さすがにそれは……」
彼のなんとはなしの提案を否定しようとするが、その途中で魔獣が相手ならと思い直す。
「(魔眼を使えば解ったりするかもしてないな)」
魔獣であればそれらしい能力の情報を見ることが出来ていた。恐らく死体でも見れるとは思う。
確認くらいならこの場でも行えるので少し見てみるか。
「あとで伝えるから、改めてさっきの白ってやつがエルフの里で何をしたかも教えてくれ」
ドライアドに尋ねつつ『天眼』をコカトリスの方に置く。
ただし『魔眼』の出力は高め過ぎると頭痛が激しくなるから、いつもより多めにするだけで留める。
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コカトリス:死亡
Lv.57
特殊:牙と爪に猛毒。卵
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「(あれ、思った固有能力の情報が見えないな)」
『魔眼』によって表示された内容。しかし『呪い』に関する情報はない。
魔道具ならそれらしい情報も出るだろうし……
「(眼が届かない場所にあるとかか? 例えば体内とか)」
最近相手が魔道具を持っていても見えないことが何度かあった。
動かない相手だし、念のためしっかりと確認をしておきたい。
「二夜前のことでした。白様が指示されたと思われる軍勢によってエルフの里を侵略されました」
「話だけ聞いてもにわかには信じられない話だが……恐らくこの場がそうなのだろ?」
「……はい」
重く冷たい声音で語るドライアド。そこからはあまり怒りを感じないが、その瞳には憎しみが仄かに宿っているのが分かる。
首長もそれを理解してなのか、ドライアドの話を現状と照らし合わせて確認する。
しかし彼女からはそういった感情を感じられない。
それに比べればブライアンや少しだけ話が聞こえたのかコランドは少しだけ眉を顰めているので分かりやすい。




